第25話 成果披露
今日はいよいよお披露目の日だ。下準備も万全に整えてある。
あとはやることをやるだけだ。
せっかくなのでクリスも一緒に連れていくことにしたらすごく喜んでいた。
こういう素直な反応がすごく可愛くて好きだ。
クリスの今日の衣装は白いブラウスに薄黄色のカーディガンと白のフレア調のロングスカートだ。普段人目には極力露出を避けているところも奥ゆかしい。
そんな彼女だが、夜リュウと二人きりの時、ベッドに入ってくる彼女は魔性の女へと変貌している。 日常の彼女からは想像できないくらいに積極的で情熱的なのだ。
しかも、着痩せするのか服を着ている時にはあまり気付かないのだが、生まれたままの姿の彼女は暴力的とも言える程の肉体美を持っている。手のひらに収まりきらない胸と細くくびれたウエスト、無駄な肉はないのに弾力のある柔らかいお尻、その全てがリュウに淫靡に絡みついてくる。
元々リュウは絶倫と呼ばれるものとは程遠く、ごく普通の性欲だったのだが、クリスと一緒に居るとついつい求めてしまう。もちろん、彼女もリュウに満たされたくて誘っているのだ。
とはいえ、彼女を大切に思うリュウは決して乱暴なことはしない。ゆっくり優しく愛撫をしてあげるのだ。クリスは大切にしてもらっている事を感じて嬉しかったのだが、時には乱暴なくらいに激しくしてもいいのにと思ったりもした。
昨晩の出来事を思い出しながらリュウは着替えをすませたクリスの腰に手を回し部屋を出た。
やって来たのは公邸の中庭。ここには今日のお披露目のために数日前から準備に取り掛かっていたのだ。 数多くの展示品やデモ様の部材で辺りを埋め尽くしている。
今日参加したのは大臣をはじめとする国の重鎮が30名、職人が50名それぞれの展示品に張り付いている。
今回のお披露目のために職人連中を取り仕切ったジャンも張り切っている。苦労はあったが、苦労以上の成果が出せており、ここ最近は職人としての遣り甲斐と充実感を持っている。
それは他の職人達も一緒だった。
前回、職人にガラスの説明を行った時に来ていた服の仕立て職人だった女性のルクルはガラスに魅せられていまではガラス工房長となっている。 好きこそ物の上手なれとは言ったもので、彼女のガラスへの情熱は半端でなく出来上がる製品もかなりの出来だった。
そんな彼女がリュウを見つけるや否や駆け寄ってきてリュウの手を両手で握り感謝の言葉を述べた。
『若様!本当にありがとうございます。私にこんな天職を与えて下さって。これから若様のために死に物狂いで働きます!』
彼女は本当に感謝で悪気はなかったのだが、いつまでもリュウの手を握っていたのでリュウの後ろに居たからクリスの嫉妬オーラが全開だった。
そんなクリスもリュウを皆が慕ってくれているのは悪い気がするわけない。ただ相手が女性の場合はそう思っていても割り切れないものだ。
リュウはルクルに労いの声を掛けてその場を離れ、領主や重鎮のいる所へと向かった。
『婿殿、今日はすごい事になっておる様だな。』
『お待たせしました。はい、きっと喜んでいただけることと思います。 順番に説明させていただきます』
リュウは領主一行を先導して一つ一つを案内した。
案内の順序は鉄鋼→ガラス→石油→農地の順だった。
今回は職人に対する案内ではないので具体的な製法や仕組みではなく完成品などイメージしやすいものを中心に見せることにした。
『まずはこちらが製鉄や鉄鋼に関するものです。鉄を溶かして型に流し込んで作ったH型の柱を鉄骨といいます。この鉄骨を組み合わせて様々な建築物を作ることが可能です。 具体的には家屋や橋などです。頑丈さと火に強いのが特徴です』
『ほほう、これはすごい。ちなみにこれの費用はどれくらいなのかね?』
興味を示した財務大臣がリュウに質問した。
『単純な比較ですと、家を一軒立てる場合、従来の石造りの家と比較して半分の費用と1/3の期間で済みます。また、強度は5倍以上となります』
『おお!それはすばらしい!』
あくまでも一例であったが、少なからず同様の効果があるので問題ない。
『続いて、こちらが軽量金属のアルミニウムで出来る品々です。手に取ってお確かめ下さい』
リュウはアルミ製品の展示を手にとる様にすすめた。
展示されていたのは武器や防具の他、鍋やヤカンなどの調理器具、薄く伸ばしたアルミ箔などもあった。 実際に手にした者は記憶にあった金属の重さと比較して異常な軽さに驚いた。
また、アルミは柔らかいので変形させる事が容易なので造形の幅も広かった。
『これ程にまで軽いとは驚きだ!だが、こんな材質今まで見たことも聞いたこともない』
貴族の一人が疑問を投げかけた。
『これは正真正銘、この国で採掘された金属です。今までその精製方法が知られていなかったため、こうした形となって見ることが出来なかったのです』
アルミニウムを作るにはボーキサイトからアルミナを抽出して化学分解でアルミニウムにするという複雑な工程と知識が必要なので、ボーキサイトが採れてもアルミには出来なかったのだ。今回もリュウの作った抽出分解精製装置があったからこそ出来得たことである。リュウはこの装置をブラックボックスのまま、職人達に提供したのだ。
『して、この金属は鉄と比べて価格はどうなのじゃ?』
『生産体制を整えての比較であれば、ほぼ同等の価格となります』
一同から感嘆の声があがった。
更に、鋳造を行えば様々な形の物が作れる。展示のサンプルをいくつか置いておいた。
アルミニウムを強くしたジュラルミンで出来た防具類もマネキンに着せた状態で並べてある。
戦闘で装備重量での体力消耗は命取りとなる。 少しでも軽減出来れば兵士の生存率も上がってくる。
軍務大臣は目を皿の様にして一点一点を確認していた。
この国の鉱山は掘り尽くされて枯渇しているとされ、鉄は他国から買い入れるしかなかったのだが、リュウによって新たな鉄の鉱脈の発見とアルミニウムやその他の金属の採掘・精製を自らの国で行えるとなると、この国の経済力の向上や産業の発展が約束された様なものである。
職人達の熱の入った説明を聞いて貴族達も興奮ぎみに細かな質問をしていた。
続いてガラス製品のエリアに移った。
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