第10話 討伐依頼
リュウは見習い討伐依頼のコヨーテの皮5枚集めを請けた。この依頼を達成で見習いから初級への昇格にもなる。
コヨーテとは狼に似た動物で狼程の凶暴性はないが、集団で行動を行い、獲物が少ない時には人間にも襲い掛かるため討伐を行い、数を減らしておく必要がある。
見習い依頼とはいえ、危険が伴うため中級以上のハンターと同行して経験を積ませるというものだ。
『それで、リュウはどんな武器を使うの?持ってるの見たことないけど』
手ぶらで行動しているリュウを見て不思議そうにユリンが聞いた。
『ああ、俺の武器はこれですよ』
リュウは腰に刺していたコンバットナイフを取り出してユリンに見せた。このコンバットナイフはリュウが軍で使用していたものを模したものだ。
少量だがチタニウムが採取できたのでチタン合金製になっている。背の部分がギザギザになっているお決まりのスタイルである。
『なにこれ?見たことない形のナイフね。それにすごく軽い』
チタンはアルミと鉄の中間の比重なので鉄製で刃の厚い武器しかないこの世界では驚く軽さだったのだろう。
『でも、ナイフだと接近戦が必須だから気を付けないとね。まあ、私とソフィアが遠距離攻撃系だから連携すれば問題ないか』
『そうですね。私の魔法で足止めをしたところを狙ってもらえば比較的安全に狩れると思います』
『ソフィアさんはどんな魔法が得意なんですか?』
『私達のパーティ名にある碧き大海ですが、私が得意な水魔法から由来しています。水系魔法は攻撃も出来ますし、回復魔法とも相性がいいのでうちの様な少人数パーティには丁度いいんです』
『なるほど、そうなんですね。洪水魔法とか豪快そうですね』
『強力魔法は敵の数が圧倒的に多い場合に使用しますが、魔力が枯渇すると回復魔法が使えなくなるので使うタイミングが結構難しいのですよ』
ソフィアは初心者かつ魔法に詳しくないと思われるリュウにパーティでの魔法士の戦闘役割や注意点を教えてあげた。
話を聞いたリュウは魔力の枯渇とは無縁のため普通の魔法士は自分とは違うことを認識して行動しないといけないなと別の意味で理解した。
話をしながら索敵を行っていたリュウはコヨーテの集団の気配を遠くに感じた。全部で12匹程いるみたいだ。
『えっと、この先5キロのところにコヨーテがいるみたいです』
『え?そんなに遠くにいるのがわかるんですか?』
ソフィアが有り得ないというような感じでリュウに質問した。
『ええ。実は俺は昔軍人だったんですよ。そこでの特訓で臭いや気配を察知する能力を身につけたんです』
実際は、いくら経験がある達人でも風下にいれば早く気付くという程度なので5キロも先にいる相手などわかるはずもなく、神の力を得たリュウだからこそのスキルだった。
『そうだったのですね。わかりました。それでは行動準備に入りましょう。私とユリンが遠距離攻撃で狙いますので弱ったところをリュウさんが仕留めてください』
リュウは一人でも全く問題なく瞬殺できるのだが、ソフィアの好意に従うことにした。 気配ではコヨーテは全部で12匹いるみたいだ。 討伐依頼2回分達成である。
この季節はエサとなる小動物の数が少ないのか腹を空かせて凶暴性が増しているようで向うもこちらを襲う気の様だ。
ユリンが弓矢で、ソフィアがウォーターボールで遠距離攻撃を行う。
倒れたところをリュウがすかさずナイフで留めを刺すという連携を行った。最初の三匹までは上手くいったのだが、コヨーテが散開して的が絞られない様に行動するようになった。 獣とはいえ、向うも戦い慣れているようだ。
『ソフィアさん、ユリンさん、どうやらコヨーテは手前のを囮にして散開した残りで背後から襲ってくるみたいです。 背後を警戒してください』
ソフィア達も通常は5匹程度の単位で行動するコヨーテが10匹以上集団となって戦うのは経験のないことだった。 リュウの助言通りに背後に警戒していたつもりだったのだが、気配を殺したコヨーテが一匹ずつソフィアとユリンに襲い掛かった。
攻撃を放った後のタイミングを襲われ、回避するも間に合わないと思ったソフィア達だったが、何故かコヨーテは襲い掛かることもなくその場に沈んだ。
状況を逸早く察知していたリュウが空間転移で移動し、2匹のコヨーテを攻撃したのだった。
『危なかったですね』
いつの間にか前方にいたリュウがこちらに向かって戻ってきていた。両手にはコヨーテを5匹ずつ尻尾を掴んでぶら下げている。痩せてるコヨーテとはいえ、10kg以上はあるので両手で100kgを持って
いることになる。 何ていう馬鹿力という感じでソフィア達は驚いていた。リュウの初心者らしからぬ行動の数々にどちらが同行者かわからない状況だ。
コンバットナイフに魔力を通し、まるでバターをナイフで切る様に見事な手さばきでコヨーテをその場で解体するリュウだった。
毛皮が12枚の他、肉や牙も素材として買取してもらえるとの事だったので切り取って空間ポーチに収納した。あまりにさりげなくリュウが空間ポーチを使いこなしているので、ソフィアもユリンも空間ポーチに気付くことはなかった。
『なんだか信じられません。まるでリュウさんが私達より上のクラスのハンターの様な感じがします』
『ほんとそれ!ビックリだよね』
ソフィアとユリンがいまだ信じられないという感じだった。
確かに、この世界のハンターとしては始めたばかりの見習いだが、実戦経験という意味ではリュウは女性二人とは比較にならないくらいのベテランなのだ。
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