第9話 ローグ

その後イベントらしい出来事はなく、リュウは無事ローグへと辿り着いた。 

遠くに見える城門を中心に高さ5メートル程の城壁が左右に1キロほど続いている。 結構大きな街のようだ。検知スキルで街をサーチしてみると人口は5万人程度だった。


この世界の人口比率がどうかわからないが、マキワの中心都市なのには違いない。


城門に近づいたリュウは入門の手続きをすべく列の最後尾に並んだ。 どうやら入門するには門番の審査を通らなくてはならないらしい。 


30分程並んで、いよいよリュウの番となった。


『まずは識票をだしてくれ。この街は初めてか?』


『はい、初めてになります』


『この街に来た目的と滞在日数は?』


『生活できるような職に就くことと、職に就ければしばらくは滞在したいと思っています』


『うむ・・・識票もおかしなところはないな。 初めてこの街に入る際には入門税として1銀貨払ってもらうことになる。あと、滞在期間が1カ月を過ぎると1カ月毎に50銅貨を納めることになっている』


『はい、それでは1銀貨をお支払いします』


リュウはポーチから鈴鳴から貰った金貨を1枚取り出し門番に渡す。


『おいおい、これは何かの嫌がらせか?こんな大金で貰っても釣りが渡せんだろう』


『はあ?かといってこれしかお金持ってないし・・・』


駄菓子屋で10円のチョコを買うのに1万円を出すようなものだろうとリュウは思ったが、無い物は仕方なかった。まさかお金を偽造するわけにもいかない。


『あのう、よろしければ私達が立替しましょうか? 私はこの街のハンターでソフィアといいます』


後ろで並んでいた凛としたと呼ぶに相応しい女性が声を掛けてきた。


『よろしいのですか?ありがとうございます』


リュウにとって渡りに船だった。


後ろに並んでいたハンターの入門が済んだ後にリュウは助けてくれた女性にお礼を言った。


『先程は助けていただいてありがとうございました。俺はリュウと言います。何分この世界の事は疎いもので・・・』


『困った時はお互いさまですよ。私はハンターパーティー中級”碧き大海”のリーダーをしている魔法士のソフィアです。一緒にいるのが剣士のジョセフ、盾のゴードン、アーチャーのユリンです』


ソフィアと一緒に居た者たちも皆気さくでリュウと挨拶を交わした。


ソフィアは身長160センチくらいで髪の毛は金髪、スレンダーなスタイルに白の魔法士らしいローブを身に着けている。


ジョセフは身長175センチくらい、髪の毛は赤色、中肉中背で程よく引き締まった体で軽鎧を身に着けている。武器は長剣だ。


ゴードンは身長185センチくらい、髪の毛は青色、盾をするため産まれて

きたかの如くの巨体に大盾とメイスを装備している。


ユリンは身長150センチくらい、髪の毛は緑色、少し細目の華奢な身体に革鎧を身に着けている。アーチャと一目でわかる少し小さめの弓と矢が半分くらい入った矢筒を持っている。


とそれぞれの特徴と身に着けているものをリュウは眺めながら、4人がそれぞれ別の髪の色をしており、カラフルだなあと思っていた。


『それでリュウさんはこの後何か予定がありますか?』


ソフィアに尋ねられた。


『そうですね、先ずはお借りしている1銀貨をお返ししたいので両替ができるところに行きたいですね』


『それならギルドがいいですよ。あそこだと両替もできますし、依頼を受けてお金を稼ぐこともできます』


『ギルドというと、冒険者ギルドですか?』


『冒険者ギルドというのは存在しませんが、ギルドは街の治安維持と街の住民などからの依頼斡旋、物品の売買流通、薬品の販売管理などを行っていますよ。私たちも丁度、遠征討伐の依頼の達成報告をしに行くところです』


どうやらこの世界のギルドは警察と職安と商工会と薬屋を合体させた様な組織の様だ。


『それではギルドまでお願いします』


ギルドは街の中心にある噴水公園のすぐ前にあった。この街はこの公園を中心に放射状に商業区、住宅区と広がっている。


ギルドに着いたら、先ずはギルドの会員登録をして両替を行った。


ギルド内の様子は当初予想していたギルドカウンターと酒場というのとはほど遠く、元の世界でいう役所や銀行カウンターに近い感じだった。


紺色のどこか銀行員にも似た制服を着たギルドの職員の事務的な説明と指示に従って手続きを淡々とこなしていった。


『おかしいなあ?ここでお約束のギルドの看板娘とのお決まりの出会いがあるはずなんだがなあ?』


現実は甘くないのだ。 残念ながら看板娘ではないが、案内をしてくれている女性も薄化粧ではあるが平均より上の容姿はしていた。


『ギルドでの依頼を受けれるのはハンターという職業で4段階のランクに分かれています。最初は見習いで続いて初級・中級・上級の順になります。

それぞれをC・B・Aクラスと呼ぶこともあります。リュウさんはまずは見習いからのスタートですが、討伐系の最初の依頼は中級以上のハンターに必ず同行してもらうようにしてください。討伐系の依頼は素材の買取も行っていますし、部位によっては収集依頼が出ていることもあります』


そういえば、ソフィアさんのパーティが中級だったな。同行をお願いしてみようかな? 


『それでは討伐系の依頼を受けたいのですが、どんなのがありますか?』


『そうですね、一番最初だと攻撃性の低い獣の皮を集めるのが良いかと思います。野兎の皮5枚か、コヨーテの皮5枚ですね。コヨーテは比較的難易度が高いので初級昇格試験の対象にもなります』


『わかりました。中級パーティのあてはありますので了解を貰ってからお願いすることにします』


リュウはギルド職員に告げて討伐達成報告を終えたソフィアのもとに向かった。


『ソフィアさん、お借りしていた1銀貨です。どうもありがとうございました。それでお願いついでで申し訳ありませんが、最初の討伐依頼の同行をお願いできませんでしょうか?』


『そうですね・・・』


ソフィアはパーティメンバーのジョセフとゴードンを見た。


『俺とゴードンは装備の修理に行ってくるけど、見習い依頼の同行ならソフィアとユリンの二人で十分じゃないか?』


ジョセフがソフィアに言った。


『私は全然構わないよ。この後特に予定もないし』


ユリンは問題ないようだ。


『わかりました。リュウさん、これも何かの縁です。私とユリンでリュウさんの依頼の同行をさせてもらいます』


『ありがとうございます。お言葉に甘えてコヨーテの皮5枚収集を請けてきますね』


リュウはそう言うと足早に依頼窓口へと向かった。

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