第19話 襲来
「来る!」
向きをとらえた方向に向きを変えて、傘で薙ぎ払う。
手応えは微かにあったが、声も音もないため、何をとらえたのか判別できない。
「琴音、懐中電灯を貸してくれ」
懐中電灯を琴音から受け取り、光で照らす。
すると床には小さな闇蜘蛛がひっくり返っており、徐々に砂のようなものを残し消えていった。
キッチンから出てきたのと同じ闇蜘蛛の子供か。
「この感じだとまだまだいそうな感じだな。琴音、気をつけろよ!」
「うん」
琴音に懐中電灯を手渡して、部屋中を照らしてもらうが、他に闇蜘蛛の姿は見当たらない。
「今のところは大丈夫そうだから、次の部屋に行こう」
懐中電灯で照らしてもらいながら扉へと歩いていく。
「……上!」
初めて聞いた琴音の大声で、すぐ様後ろに飛んで扉から離れる。
懐中電灯で照らしてもらうと、小さな闇蜘蛛3匹が地を這いずり、こちらに近づいてくるのが分かった。
「3匹か、とりあえず3匹の中で動きが鈍い右側から祓う!」
コンクリートの床を蹴って右側の闇蜘蛛に近づき、思いきり傘を降り下ろす。
「ギィィィ!」
今までの闇蜘蛛とは違い、大きな悲鳴をあげながら、砂のようなものを残して消え去る。
不快極まりない悲鳴で、一瞬混乱状態に陥ったため、頭を大きく振ってると「危ない!」と言う声が、部屋に響きわたる。
声が聞こえると同時に、左手首に痺れるような痛みが走る。
「ぐっ……」
すぐに声の主は琴音と分かったが、痛みの原因を確かめるために、痛みが走った左手首を確認する。
「……これは闇蜘蛛の出した糸か?」
闇に覆われた黒色の糸が、俺の左手首に巻き付いていた。
すぐに右手で糸を振りほどくが、振りほどくために使って手にもピリピリとした痛みを感じる。
「琴音! 闇蜘蛛の糸は危険だ、下がっていろ!」
すると琴音は無言で頷き、後ろに下がる。
闇蜘蛛と戦うのは初めてだが、あの糸には気を付けなければ。
闇蜘蛛と距離をとりながら、闇蜘蛛の動きに集中する。
今度は左側の闇蜘蛛が動きを見せたため、闇蜘蛛を牽制しながら距離を詰める。
「来るか!」
闇蜘蛛の始動の変化を感じ、横に飛ぶと元いた場所に糸が付着する。
「避けてばかりではダメだ、先読みして攻撃する!」
地下室の柱に隠れてつつ、闇蜘蛛の動きに目を凝らす。
「行くぞ!」
2匹の闇蜘蛛が同時に始動するのを確認して、すぐに右方へと走り込み、回転をつけて傘を降り下ろす。
「ギィィィィ!」
今倒した闇蜘蛛も不気味な悲鳴をあげるが、それを耳を塞ぐ事で回避する。
砂と化した闇蜘蛛から視線を戻すと、動きを止めていた3匹目に走り込み、傘を薙いで壁に叩きつける。
「ギィィィィ!」
耳を塞ぎながら闇蜘蛛の断末魔を見届けると、大きく1つ息をついた。
「誠の動き、凄い!」
目を輝かせながら近づいてくる琴音に、俺はかっこよく「これくらいの雑魚は倒せないとな!」と言い放った。
内心は子供でも厄介だと思ったのは内緒だが。
「琴音、この部屋にまだ闇蜘蛛がいるか確認したいから、
懐中電灯で照らしてくれ」
琴音がこくんと頷くと、二人で部屋の中央に移動する。
懐中電灯で照らしてもらう間、俺は傘を構えて最大限に警戒する。
「大丈夫……そうだな」
入り込める隙間や箱の中に隠れてないか、念のため確認してみるが、闇蜘蛛が出てくる気配はなかった。
「OK。それじゃ次からが本番だ。
扉の向こうに闇蜘蛛の本体がいるはずだから、注意しよう」
琴音を背後でかばいながら、奥の部屋の扉に近づく。
「物音は特に聞こえてこないな。
ここの扉は一気に開けるから、琴音も注意しててくれよ」
右手で傘を構えながら、左手で静かにドアノブを握ると、素早く回して扉を開け放つ。
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