第12話 闇なる怪異

「琴音様は何とか守ったのですが、沙耶は蜘蛛の糸で縛られ、

 蜘蛛から伸びる触手のようなものと結合されてしまったのです」


「それでその蜘蛛に何かを要求された訳だな?」


響の言う通りなら、該当する怪異が1つ思い当たる。


「はい。妹の命が惜しければ、人を生け贄として差し出せと……」


響はそう言った後、肩を落として俯いてしまう。


「普通の蜘蛛ならまだ戦いようがあったのですが、

 殴ってもすり抜けてしまうため、それは不可能でした」


「やはり、そうか。響の言う風貌、知能から考えると、

 地下にいるのは『闇蜘蛛』で間違いない」


「闇蜘蛛……最近頻発している怪異と言うやつですか?」


「そうだ。闇蜘蛛は普通の蜘蛛が巨大化したものではなく、

 怨念の塊のようなものだからな」


響にそう言うと「やはり従うしかないのか」と頭を抱え、落ち込んでしまう。


この落ち込みようを見ると、妹の安否に不安を抱いている事以外にも何かあるのだろう。


もしかしたら、妹のために別荘近くに来た人物を誘い込み、闇蜘蛛に捧げていたのかもしれない。


「だいたいの事は分かった。頑丈な扉の鍵を琴音が隠したのも、

 惨劇を続けさせないよう 行動したのも琴音なのだろう?」


「……はい。昨日の朝、琴音様が私から鍵を奪って、どこかに隠されました。

 私としてもそれが正しいと思ってはいるのですが、妹の事を考えると……」


「まあ妹の命を人質にされたと言っても、関係もない人物を巻き込むのは駄目だ。

 でも事情さえ分かれば現状を打破する方法はある」


俺は笑顔でそう言って響の肩をポンと叩くと、響はゆっくりと顔をあげる。

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