第13話 祓う者

「妹を救う方法があるのですか?」


「ああ、これはそのための商売道具だからな」


響の目線の高さで傘を掲げて、自慢の商売道具を見せつける。


「俺の本職は闇を祓う者だ」


「闇を祓う者……。

 東城様にこのような目に会わせておいて、虫が良すぎるとは思いますが、

 闇蜘蛛を退治して頂けませんか?」


「大丈夫。闇を祓うのは俺の使命だから、退治はもちろんさせてもらう。ただ」


次の言葉を発しようとした所で、背後から何かを感じたため、傘に力を込めて、それを薙ぎ払う。


傘でとらえた「何か」は壁にぶつかり、砂のようなものを残しながら消えていった。


「さっきキッチンを調べている時に何か気配を感じていたが、

 闇蜘蛛の子供が1匹紛れ込んでいたようだな」


「東城様はほんとに蜘蛛を退治できるのですね」


響は暗がりの中で一筋の光を見つけたが如く、とても嬉しそうな表情を浮かべる。


「俺は嘘はつかないから、任せてもらえば大丈夫だ。

 それで先程の話の続きだが、地下室に行く時、

 琴音も一緒に連れて行きたいのだが」


「しかし琴音様を危険な目に会わせる訳には……」


響は床に落ちた砂を見ながら不安な表情を浮かべる。


「琴音には見透す力があると読んでいる。

 俺を見て別荘に招いたのも、危険人物でないと本能的に判断したんだろう」


それでも心配なのか、「闇蜘蛛を退治する事に琴音の力が使えるのか」と響が再度問いかけてくる。


「響と闇蜘蛛の子供と戦った事で、 闇蜘蛛が俺の存在を感じているはずだ。

 闇蜘蛛が待ち構えている状態でも、強引に排除する事も可能ではあるが、

 琴音に手伝ってもらった方が確実に遂行できる」


「そうですか……私の一存では決められないので、琴音様を連れて参ります」


「分かった。それじゃ俺はここで状況を整理しているよ」


俺はそう言って響を見送ると、冷めた珈琲を口にして、現状確認をする事にした。


捧げ物が途絶えた事で、闇蜘蛛の怒りもかなり高まっているだろう。


なので戦う事以外に、琴音にも細心の注意を払わなければならない。


最近の怪異は知恵を付けて来ているので、何をするか分からないのだ。


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