第9話 異音
ガチャン ガチャン
あと扉まで数メートルと言う所で、後方から何かを閉めるような音が聞こえてくる。
「今は扉を調べるチャンスだが……。
琴音の身に何か起きたのならすぐに戻らなければ」
脳裏に浮かぶ不安を振り払いつつ、駆け足でリビングに向う。
中の様子を伺うために、リビングの扉に耳を当てるが、中から物音は聞こえてこない。
音を立てないよう扉を少しだけ開けて中を覗いてみると、先程までいたテーブルに琴音の姿はなく、響の姿も見当たらなかった。
響は俺の行動を不審に思っていたのは間違いないので、琴音がどこかに連れていかれた可能性が高い。
俺は「もう後には引けない」と判断して、リビングの中に入った。
リビングに入って部屋の様子を伺ってみるが、琴音がいた場所に荒らされた形跡もないし、衝立の向こう側にも誰もいない。
次にキッチンに目を向けてみると、先程は響が使っていたので開いていたのに、今は扉が閉まっていた。
「玄関に行く扉も閉まっているが、まずキッチンを」
キッチンの中に人の気配は感じられないが、警戒しつつ足を踏み入れる。
キッチンに入ると、中に人の姿は感じられなかったが、何か嫌な気配を感じた。
警戒感を施しながら、新築の建物かと見間違えるほど綺麗に保たれたキッチンを見て回る。
すると机の上にカリカリに固まったパンと目玉焼きが、そのままになっているのを見つけた。
これは朝食の……いやこのカリカリ感は、今日ではなくそれ以前に作られた朝食だろう。
琴音はパンと目玉焼きは食べたと言っていたので、この別荘にいると思われる別の人物のために作られたものと考えるのが妥当だろう。
となると考えられるのは、響が警戒していた、頑丈な鉄扉の向こう側で、誰かを監禁している……か。
やはりキーになるのは頑丈な鉄扉の向こう側だと判断し、すぐにリビングへ戻ると、そこには響の姿があった。
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