第8話 監視
「東城様、右手の突き当たりがトイレになります」
響が案内する方向に目を向けてみると、廊下の突き当たりにトイレがあるのが見えた。
「左には風呂もあるんだな」
浴場と言うプレートが扉についていたため、響にそう聞いてみると「右手には洗面所と洗濯機も置いてあります」と答えた。
洗面所を見るとドライヤーが置かれているし、こちらのスペースは歩き回って欲しくないのだろうな。
響が隠したい「何か」の手がかりを探すため、次はトイレとは逆方向の廊下に目を向ける。
するとリビングから出た時と同様、左右に1つずつ部屋があるのが確認できたが、廊下の行き止まりに、廊下の行き止まりに頑丈な鉄扉があるのを発見した。
その鉄扉は他の部屋とは明らかに違うし、何か嫌な感じが漂ってくる。
何とか鉄扉に探りを入れてみたい所だが、これ以上見ていると響に怪しまれるため、すぐに視線をトイレに戻す。
「それじゃ、行って来るよ」
「左側が女性、右側が男性になっておりますので、お気をつけください。
私はここでお待ちしておりますので」
いつも笑顔の響だが、今は緊張感のようなものが伝わってくる。
響の視線を背中に感じつつも、それに反応せずそのまま歩いて、トイレの中に入る。
男子トイレに足を踏み入れると、小便器の前に立ち、大きく一つ深呼吸する。
「鉄扉には行きたいが、響が待ってるだろうな……」
響をまく方法があればと考えながら用を足していると、ある言葉が頭によぎった。
「洗剤の箱……か」
琴音の呟きには必ず意味があるはずなので、洗濯機のある部屋に行って調べてみるか。
トイレから出ると、廊下の中央部分に響の姿が見えないので、すばやく洗濯機のある部屋に入る。
洗濯機のある部屋に入ると、ドラム式洗濯乾燥機が目に飛び込んできた。
ネットも繋がる洗濯機で、確か25万円くらいする高価なものだったが、今はそれに目もくれず、近くの棚に置かれた洗剤の箱を手に取る。
封が開いているので、日頃から使っている洗剤と思われるが、中を確認してみても特に変わった様子は無い。
洗剤が別荘の秘密に繋がるとは思えないが、念のためもう1つある新品の洗剤の箱を手に取る。
「特に何も……この箱、一部が破れているな」
破れている部分から、洗剤が出てこないように気をつけてながら、中を確認する。
「これは鍵……だな」
こんな目立たない場所で鍵が見つかる言う事は、よほどの理由があってここに隠したのだろう。
鍵となるとまず思い浮かぶのは、廊下の突き当たりにあった頑丈な鉄扉だ。
響の警戒ぶりを見ると近づくのは困難だが、この鍵は必ず必要になるはずなので、ポケットにしまって、中央の廊下に戻る。
廊下に戻ると予想に反して、そこに響の姿はなかった。
次に頑丈な鉄扉に目を向けると、そちらにも響の姿が無いため、周りを警戒しながら、扉に近づいていく。
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