第7話 異変

まず建物の構造を把握する必要があるため、ゆっくりと椅子から立ち上がる。


『ドン! ドン! ドンドン!』


響にトイレの場所を聞こうとすると、突然何かを叩くような音が聞こえてきた。


音の発生源は外ではなく、建物の中からだ。


「何だ、今の音は? 別荘内に誰かいるのか?」


『状況を動かず絶好の機会』だと思い、奥の扉に行こうとすると、響に「何でもありません。ただ風で物が落ちた音ですよ」と言われ、静止される。


響の口調に変化は見られないが、瞳に浮かぶ陰りを隠せていない。


「灰」の時は逃げられたが、あの音も核心をつくと判断して、すぐに行動に出る。


「珈琲飲んだら、トイレに行きたくなってきたな。

 響、ちょっとトイレを借りてもいいか?」


「もちろん大丈夫ですが、最初に申しました通り、奥はプライベートスペースと

 なっておりますので、トイレ以外への立ち寄りはご遠慮くださいね」


「私がトイレまでご案内します」と響が言ったため、それに倣い二人でラウンジを後にする。


ラウンジを出ると絨毯が敷かれた廊下が奥へと続いており、左右に1つずつ部屋が、右手中央にも廊下が続いているようだ。


響の後に着いて廊下を歩きながらも、部屋の様子を伺ってみるが、中から物音1つ聞こえてこない。


部屋の中を確認できないまま、廊下の中央まで進むと響がそこで足を止める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る