第18話
そうして迎えた20日午後11時55分。
るふれりかになれる条件が揃ったぬいが言うには、21日になった瞬間にるふれりかになれるらしい。
ここまで一切敵の襲撃はなく、日々平凡と過ごしていた2人。
時にチャーハンを分け合い、アイスを奪い合い、のんびりと過ごしていた2人は21日になる瞬間を固唾をのんで待っていた。
親子の亀よろしく、うつわの背中にぬいを乗っけて漫画を読みながら。
「うつわ」
「ん?」
そんな親子亀2人、その背中でぬいはうつわへと声をかけた。クーラーの効いたうつわの部屋でまったりと過ごしていた。
ぽつりと小さな声で呟いたぬいに、うつわは漫画を読んでいた顔をあげる。
「ありがとうございます、協力してくれて」
「別に。俺にも叶えたい願いあったし」
「それでも、ありがとうございます」
かち、かちと確実に時計が時を刻む音がした。
うつわの背中から、ベッドの上から降りて床で青い絨毯の敷かれた床で正座するぬい。静かな声で礼を言い、ぬいは笑った。子どものように無邪気な笑みで。嬉しそうに。
それにどこか違和感を覚えて、さっと嫌な予感が頭をよぎったうつわはぬいに問いかけた。
「お前の願い、叶うんだよな?」
「……」
「俺と一緒に居て、話するんだよな?」
「……るふれりかは」
声が涙にぬれる。一回唇をかみしめると、悲しみと嘆きに震える声で、ぬいは言った。絞り出すように。苦しそうに。
「才能となったるふれりかは、ふさわしい所有者が来るまで神の御箱で眠りにつくらしいんですの」
でも大丈夫ですのよ。うつわがいてくれたから、ぬいは寂しくないですの。
とうとう顔をうつむけて、気丈ともいえる健気さで涙声のまま言うぬい。ぽたりと1粒の雫が太腿の上で揃えたぬいの手の甲に落ちたのを、うつわは見逃さなかった。
なんだよ、それ。うつわは体を起こしてこぶしを握った。ぎりぎりと音がするまで握りしめられたそれが痛かった。
「それじゃあ!」
口を開いたとき。
短針、長針、秒針が0を指した。
ぬいの身体が輝きだす。きらきらと光の塊を飲み込んだごとく内側から光る。まばゆいばかりの光があふれ出て、うつわの部屋を、視界を白く染め上げた。音が遠く、虫のなく声などの一切何も聞こえなくなる。
それでもうつわの目を焼かない不思議な光は、まただんだんとぬいに収束して納
まった。
ふわりと目を開けるぬいの瞳が、青く輝いていた。
比喩ではない。本当に、サファイアをはめ込んだようにきらきらと輝いていたのだ。それを呆然と見ていることしかできなかったうつわに、ぬいは声をかける。
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