第14話

「なんであんた、こんなゲームに参加したんだ」

「るふれりかの資格与えられるものはランダムですのよ。拒否権はありませんの」

「条件、知らなかったのか」

「つい、さっきまで。白湯を飲み切った時に、あるるふれりかからお告げがありましたのよ」

「資格を持ってなきゃゲームの本当の内容すら教えないってわけか。意地悪いな」

「ふふ……本当に」


 苦く笑うぬいは自分の顔を、今の表情をわかってて言っているのだろうか。泣きそうな、納得できないことを無理やり自分に課しているような顔をしていることに、気づいているのだろうか。いや、ないだろうなと反語で考えながらうつわはため息を吐いた。


 協力すると言った。うつわにもおいしいメリットがある。しかしこれは本当にぬいの、この幼い少女の心を傷つけてまで行われるべきことなのだろうかと。うつわは思ってしまった。

だから。


「おい、俺たちはは防戦一択だ」

「え?」

「戦いたくないんだろ? だったらそれでいいじゃないか」

「……いいんですの? うつわの願いが」

「お前こそ、いいのか?」

「ぬいは……るふれりかになりたいですのよ。でも、そのために人を傷つけたくない、ですの。でも、うつわともっと一緒にいてお話もしたいんですのよ……でも」


 泣きそうな顔で。零れる間際までためられた赤い目で。涙にぬれた声で。

 でも、でもと願いと嫌悪の間で揺れる少女を見ているのは辛かった。透明な矢印は朝日にきらきらと輝ていて、その美しさの対比がうつわにさらに辛みを募らせた。


 うつわは子どもは好きじゃない。だが、このぬいはうつわの『ぬい』であるし、何よりも一緒に滝行をした仲間だった。


「るふれりかになれなくても。俺は『ぬい』を一生大切にするし、喋りかける。それじゃダメなのか」

「うつわ……」

「会話が出来なくても、人の形になれなくても。俺はあんたを思い出すし、正直友だちだって言ってもいい。それに『ぬい』に向かって話しかける。それじゃ、だめなのか」

「だめじゃないです……だめじゃないですのよ」


 決壊した赤い目は、ただ静かに。ぼろぼろと大粒の涙を流した。

 そんなぬいの頭を、うつわはやっぱり優しくなでたのだった。

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