第5話DVD

そして、ライブのお客さんが1人だったとき。


その1人が全てです。


その1人が笑わなければ、死亡。


逆その1人を笑わせれば勝ちです。


だから、本域で漫才をいくら上手にやっても、ガッチガッチに作り込まれたコントをしても、

その1人がクスリとも笑わない場合がある。


だって、ライブ会場にお客さん1人ですよ。


その1人が緊張してるんです。

笑いにくい空気が漂っているんです。


いらうしかないでしょ?

お客さんいらうしかないでしょ?


「今日、どこから来はったんですか?」


「どこでも好きなとこに座って下さいね。」


少しでも、その1人のお客さんの緊張を解いた者の勝ちです。

ってゆうか、そういう事をしないと、1人ってなかなか笑いません。


やがて、僕の出番が来て、舞台にさっそうと飛び出し、

「どうも、原田おさむです!」

と、喋り始めると、その1人のお客さんの様子がおかしい。

モジモジしてる。


・・・・・そして、


・・・・・トイレに行きました。


舞台ではネタを喋りはじめたばかりの僕が1人。


どうする?

どうすると思います?


待つんです!


その1人が帰ってこないかぎり、どんなけネタしても、それは、


壮大な、独り言です!!


トイレから帰ってくるまで、ひたすら舞台の上で待ちます。

そして、1人のお客さんが帰ってきます。


「あっ!待っててくれてたんや!」


もちろん向こうもそんな顔します。

そのコミュニケーションも大事です!

そして、ネタを再開します。

そんな時も、


「どこまで、喋りましたっけ?」


その一言で、まず、クスッときます!


そうやって、1人のお客さんを暖めていくのです。


だからその1人のお客さんのために、ネタも中段するし、再生するし、


DVDです!


僕らは、DVDです!

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