歌舞伎町の小学生
さちこ
第1話 桜の時
AM4:57。「カッチャンッコ」
いつものように、ゆうきは仕事に出かけた。
サッとスーツに着替え、パッと頭を整え、ネクタイはポッケに入れて鏡で全身チェック。
玄関の鍵が閉まる音が、「いってきます」に聞こえる、様な気がしてる。
ゆうきとの結婚生活も、もう6年。
結婚して3ヶ月目にチワワが我が家にやってきた。
5歳のデフと4歳のビチ。
デフはゆうきの事が大好きで、いつもお腹の上で寝る。ビチは自由気ままで、おやつ時だけ媚びを売る。キャバ嬢ならぬ、キャバ犬。
2004年3月、散りゆく桜を見た。
「さくら〜独唱〜」を歌いながら、高校を卒業した。
2004年4月、満開の桜を見た。
大学の入学式だった。
この時の満開の桜は、私を新しい生活へ誘い込んでいた。オリエンテーションも終わり、学校の門を出ると左から、ブルーオーシャン香りが近寄ってきた。
「芸能界とか興味ない?モデルやってる!?」
「顔ちっちゃいし、モテるでしょ!?」
「モデルのバイトとかしてみない?」
ブルーオーシャンの香りが続く。
『これが東京かぁ〜』
と思っていると、ブルーオーシャンの香りがタバコの臭いに変わった。
「時給3000円のバイト、興味ない!?」
「携帯教えてよっ!」
『時給が3000円!?やっぱり東京だなー』
と20日前まで、ガストで時給750円で働いてた私はとりあえず、駅前にある無料求人誌を5冊手に取り1件「社会勉強」だと、自分に言い聞かせ電話をかけた。
「お電話ありがとうございます。クラブエクセレントでございます。」
歌舞伎町の小学生 さちこ @minami_s
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