第13話呪文

梅兄を意識するようになって

顔もまともに見られなくなった

話したり、そばにいると

気持ちが大きく揺れるから

バカみたいに梅兄の前ではぴりぴりした態度になった


中学生のあの日から

どうしてそうなるのか

いくら考えても答えは出ないし

どう考えていいのかもわからなかった


嫌って避けてタブーにしてしまわないと

どうにかなっていきそうで怖かった


どんどんあふれてくる気持ちに知らない振りをして

何もなかったことにしようと努力した


自分の中の本当なら愛おしくて大事に守っていきたい

誰かを好きになる想いを棺桶に入れ続けた


墓場に捨てられ続ける想い


もうずっと

梅兄が好きだった

理由なんてない

普通は理由があるのかもとか

もうどうでもよかった


好きと想うたびに気持ちを捨てて

その繰り返しが延々続いた

機械的に捨て続けようとしたけれど


時々とても苦しくてどうしようもなくなった


もう無理だ

この苦しさから逃れたくて

自分が思うままに、思うとおりに行動しそうになった


だけど

梅兄に言えるわけがなかった

知ればきっと軽蔑される

拒まれてしまうぐらいなら


この苦しさと一緒に生きていくほうがずっとましだった


付け焼刃なのはわかっていたけれど

誰かを、代わりを探し続けた


友達にはモモさんと嘘を付いて

自分の心には

竹田君はいい人だから

竹田君にしてしまえばいいと


固まった心の上に呪文をかけて

上から塗り固めてしまいたくて


ごまかし続けた

自分自身すらわからなくなるぐらいに



それがどれだけ傷つけることになるなんて考えもしなかった

私は本当に自分のことしか考えていない馬鹿者だった












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