第10話秘密

山ちゃんとヒメとシイナと私の4人は

週に1度は集まっていろんな話をした


内容は恋の話が多かった


山ちゃんに会うたびに言われる

「毎回手料理なんて好きじゃなきゃできないよ、絶対それって恋だって」

「だって、それは竹田君がお金ないから」

「お金なくたって好きでもない人には普通作ったりしないって」

山ちゃんはどうしてもそれは「恋」だと決めたいらしかった

ヒメは

「楽しかったらどっちでもいいでしょ、シイナのラブラブなほうが心配」

「なんで?」

シイナがはあ?って顔をする

「だって、そんなにべったべただと、冷えるというか、冷めるのも早そうだし

冷めたらかっちかちに凍りつくって、シイナの乙女心」

「なんかすごくひどいこと言うね、ヒメ」

「ちょっと冷えといたほうがいいかもって言ってるの」

ヒメは高校まで彼氏がいたけど、卒業したらあっという間に浮気をされたらしい

ヒメは1度の浮気も許せなかったし、彼氏は新しい彼女と一緒になってしまった

「男なんて最低だよ、あたしを振るなんてほんとバカ」

今だ傷心中なのだ

「男はみんな浮気するんだよ」

ヒメの決め付けには山ちゃんが

「うちのパパはママ一筋だよ、今だに毎朝チューとかしてるし」

「えー、ほんと?」

全員でびっくりする

「だって、パパアメリカ人だし」

もう1回びっくりした、それでみんなで山ちゃんを見るけど

「・・日本人の遺伝子しか受け継いでないね」

まるっきり日本人な顔だから、ハーフだなんて思わなかった

「そりゃそうだよー、生まれと育ちはアメリカだけどパパの両親は

日本人だから、向こうで育って国籍をあっちにしたんだって」

言い方悪かった?

そう言って山ちゃんは笑うから、なにそれーって私達も笑った


「じゃあさ、話を戻すけど」

戻さなくていいよ、山ちゃん・・

「竹田君と付き合ってないなら、他に好きな人とかいるの?

あたしはいつかパパの故郷のアメリカに行って、アメリカ人と結婚する予定だから

今は恋はしないって決めてるし、シイナはのろけたことばっかりだし、ヒメはとりあえずアウトでしょ」

「誰がアウトよ、繊細なの、立ち直るのにもう少しかかるの」

髪でも切ればいいかなあって、胸まで伸ばしているストレートの髪をくるくる指でねじる。


けど、ヒメはきっと切らない

くせ毛の私には羨ましすぎるきれいなまっすぐなストレートの黒髪

私がいいなあって言ったら

「洗うのも乾かすのも大変だし、傷みやすいしめんどーなんだけどね

別れたあいつがすごいほめてくれてたから、なんか切れなくて」


そう言うヒメ

まだきっと好きなんだなって思った


それにしても

「アメリカ人ってさ、日本にだってたくさんいるのに、アメリカでないと

だめなの?」

なるべく話をそらしたかった

山ちゃんんは、ちょっとうなったけど

「やっぱアメリカでが・・いいかなあって、そんなわけで、ねえさく、

今、あたし達の中で一番つついて、いろいろ聞きたいのがあなたなの」

「あなたなのって言われても、私で遊ぼうとしないでよ」


そらそうったって無駄だよって顔してるし、ヒメも

「私も気にはなるよ、図書館で一緒にごはん食べて、本の話?して

まったりすぎて、なんか年寄りかって思うけど・・さくはそれが楽しいんだよね」

説明されて、確認されても困るんだけど


「さくは昔っから秘密主義なとこあるから、口を割らすのは大変だしね」

シイナもフォローしてくれない

「秘密主義って、なにそれ」

「秘密って何を秘密にしてんの、さあ吐け!」

ヒメと山ちゃんに同時に言われる

「秘密なんてないって!なんでシイナは今、そんなこと言うの?」

「だって、実際そうでしょ?」


何か隠してるのは知ってるよ

シイナの目がそう言っていた


ああもう・・

はぐらかせないや

ちょっとの付き合いで

ちょっとの仕草でヒメの気持ちの揺れが

私にだってわかるように

私からは

なにかがだだ漏れしてるんだろう


それは女子には美味しいスイーツみたいに

食べてみたいことなんだろう

逆だったら私だって知りたいし

聞きたい


でも、梅兄のことは言えない

どうごまかそう

納得してもらえること

ずっとつつかれ続けるのは嫌だし


「・・・モモさん」

思わず口からこぼれ落ちた


「モモさんって桃田酒店のモモさんだよね?」

シイナがうそでしょー?って叫ぶ

「あ・・いや・・」


「誰それ?」

山ちゃんが身を乗り出してくる

なんで、女子はこういう話が好きなんだろうって考えても仕方ないけど

シイナが説明してくれる。ありがたいことで・・

「さくと私が住んでる近所に桃田酒店って酒屋さんがあるんだけど、そこの息子で私達より・・いくつ上だっけ?確か梅太兄さんと同い年だよね?」

仕方ないからうなずく

「じゃあ2つ上だよ、背がすっごい高くって、梅太兄さんってさくのお兄ちゃんなんだけど、2人が仲良くって、私も小さいときは結構遊んでもらったんだ」

でも・・と続ける

「今、あんまりいい噂聞かないよ。水商売の女の子と付き合ってるって、母さんが言ってたよ」

ちゃらいのかってヒメがいやな顔をする

山ちゃんは

「別に秘密にすることなんてないじゃん、好きになるってしょうがないでしょ。でもなんかあれだね、彼女もいるのかぁ・・」

で、いつから好きなのと聞かれて

「ちゅ、中学から」

うわあ・・長い片思いしてるんだねえとしみじみと言われた

シイナも

「なんで早く言ってくれないのよー、さくって水くさすぎるよぅ、ちゃんと応援するのに」

怒られた。ヒメだけは

「ちゃっちゃと言っちゃって、すっきりしたほうがいいかも。そのモモさん?はさくの中で理想化されてるんじゃない?しかも水商売の子が好みなら望みなさそうだし」

「ヒメは応援する気はないねー、ぐさっと言うね」

山ちゃんがあきれるけど

「やめとけばって言うのだって、応援だよ。あたしはそのモモさんとやらは知らないからなんとも言えない、だからといって竹田君がいいとも言えないし、さくだって望みがなさそうだってわかってるから竹田君と付き合おうってなったんじゃないの?竹田君と付き合えばモモさんを忘れるかもって下心ありで、付き合ってるとしても」

ヒメは続けた

「いいじゃん、それでも・・うんそれでいいよ。進展しないまんまずっと片思いを続けてるよりはいいと思うな」

「おお、ヒメ語るね」

感心する山ちゃんとシイナ


私は驚いてた

ヒメが言葉にしたのもあるけど


私からだだ漏れしてるものを

汲み取って

言葉にしたら

こういうことなんだろうって


もしかしたら

話せば

受け入れてくれるかもしれない

一瞬そんなことも思ったけれど


けれども

やっぱり言えなかった























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