第4話見本市

ツナマヨさんからメールが来ている


件名:負ケマシタ~


「いやあ、コールド負け。相手との差がありすぎた。

ケイゴは四球とファーストゴロ

向こうのピッチャーがコントロールよくって

チームも声がすごい出てるし見習う面が多かったかな

サクサクさんは今日は仕事日かあ、お疲れ様

無事終わった?」


そっか、コールドかあ

そんな試合もあるよね。


件名:あららでしたね


「コールドでしたか・・強いチームだったんですね。

ケイゴくんより、ツナマヨさんのほうが落ち込んでるのでは?

こっちは相方の大福ちゃんが飲み会で、途中で帰らせてあげました。

どうも大福ちゃんには甘い私です(ちょっとウマイ?笑笑)」


大福ちゃんは小野寺さんのことだ。

小野寺さんのほっぺを思い出したら大福食べたくなってきた。

「あ!」

あるある

大福ではないけれど、おはぎを買っていたのを思い出す

台所へ行ってパックからひとつ皿に入れてフォークと一緒に部屋へ

一口食べる

「んまい」

言った言葉の後ろに音符がてててっと付いていく

小豆のちょうどいい甘さとしょっぱさも好きだし、中のもち米のもちもち感も

美味しい。

こんな時間に太るかな

一瞬頭の中をよぎるけど

こんなに美味しいんだから、今日食べてあげたほうがいい


続きを書き始める


「大福ちゃんが帰って、子ども達へのがんばったで賞に使う

お菓子セットを作って(参加人数が50人だから50個!)

それを1時間ほどやって帰れました。

結構疲れたのでした。ツナマヨさんは明日も野球ですね

がんばってくださいね」


送信


今日はお菓子セットの他に

優勝チーム用の金メダルと商品確認

他にも、最多得点賞とか最優秀選手賞も準備する。

それから

各チームに渡すビブスの仕分け作業。

参加する子はうちでレッスンを受ける子だけでなく

参加費500円で誰でも参加できる

サッカーって楽しいよ

友達誘って試合してみようよ

サッカーに興味が出るとっかかりになるように

参加賞や優勝チームへのメダルや

コーチ達も全員集合で

利益はほとんど出ない大会

上条さんは

「これに儲けを出す必要はないよ

ちびっこサッカー大会

楽しくっていいじゃねえか、それでうちに通ってくれれば

万々歳ね」


そんな上条さんはサッカーはしたことがない

昔、マンガのキャプテン翼を読んでサッカーにはまったからだそう。

それでクラブを作っちゃうのはすごいというか

なんでもきっかけって

そんなものかもしれない


スクールは、コーチ達も当たり前だけどサッカー大好きで

子どもが好きな人達ばかり

正式に社員として雇ってもらってるコーチが各クラスの

メインコーチで、サブコーチのほとんどは大学生のバイトくんだ

子ども達も

先生というより

年の離れた楽しいお兄さんて感じで接してる


のんびり楽しい大会といきたいところだけど

親達はかなり真剣な人が多い

試合前や試合の合間にお父さんがすごい気合を入れてたりする

あんまりボール触れない子の親は

「もっと前に出ろよ」

「ひるんでんじゃねえぞ」

などなど

ヤジ?

と思うような怒声が飛んだりする

あんまりひどいと

コーチが来て注意が入る

子どもを思う親の熱意にいつも圧倒される

うちの母は私の個人を尊重してくれたといえばクールだけど

自分の仕事優先の楓さん任せの放任主義だ

父はいれば優しいけど、朝早くから夜遅くまでの仕事の人だったし

楓さんと梅兄がいなければ

きっと

ひどく不恰好な人間に育ってだろうなと

スクールの

いきすぎな時もあるけど

愛情をまっすぐに

子ども達に向ける親達を見ると


そんなことを考えてしまう。


そこは

私が欲しかった親子の見本市のよう

お金を出して

買えたなら

いくらだって

出すのにな


ああだめだ

夜更けにこんなことを考え出すと

ほんとうにろくな考えにならない


もう寝よう






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