第34話 世界的スター

 新宿で野暮用があった時に、交通費をかけて行ってただ帰るだけでは勿体ないと、猫カフェに寄ってみた。

 意外にも、それが初めての猫カフェだった。

 今までは、野良猫に不自由しなかったのである。


 二十匹ほどの猫がいて、三十人ほどのお客さんが入っていた。

 うち半分は、外国の方である。

 まだこの頃は、日本にしか猫カフェがなかった時代だ。

 猫たちは我が物顔で悠々と室内を歩き回って、群がる人間たちなど何処吹く風であった。

 もはや猫じゃらしにも反応しない。

 ただ、猫のオヤツ(ササミ)には食い付きが違った。

 店員さんからオヤツの容器を貰うと、あっという間に一匹の猫が肩に登ってきた。

 肩乗り猫だったラドを、懐かしく思い出した。

 足元には二~三匹の猫が私の太ももまで伸びてオヤツを強請り、棚の上からは「ちょっとちょっと」と肉球で手を引き寄せられる。

 その余りのフィーバーっぷりに、思わず声を上げて笑ってしまった。

 れなくされていたお客たちは、口々に「良いな~」と話し合い、注目の的である。

 そしてその半分は、外国人だ。

 世界的スターになったと勘違いした瞬間だった。


 また猫がマスコットのテーマパークで、猫の写真コンテストをやっていたので、ついでに写真を撮ってきた。

 ハート型のクッションを抱えさせて『愛してるにゃ♥』とタイトルを付けたり、毛繕いしている二匹を撮って『ちゅう』とタイトルを付けたりした。

 残念ながら入選はしなかったが、スマホのアルバムに、今でも大事に取ってある。

 猫の記録が人生の記録になるほど、私の日々は猫まみれなのである。

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