第7話 星になった仔猫と、新たなアイドル
猫のいる風景が当たり前になった高校生の頃、友人の家で仔猫が生まれた。
引き取り手を探しているという事で、友人宅を訪ねて選びに行った。
雑種で、様々な毛色がいる。
トラ、三毛、ソックス。
可愛かったので、黒に足先だけが白いソックス猫にした。
新しい家族を迎えようとワクワクして、仔猫が離乳する時を待っていたがその後、電話連絡がきた。
その仔は生まれつき腸が捻れていて、亡くなったという。
新しい家族は、お星様になった。
無邪気に母猫の胸の中でお乳を飲んでいたあの姿を、けっして忘れない。
巡り合わせとは不思議なもので、その傷が癒える頃、今度は別の友人の家で、アメリカンショートヘアの仔猫が生まれた。
選ぶまでもなく、みなアメショである。
一匹貰い受ける事にして、車で友人宅に向かった。
三分間のドライヴを終えて我が家の床を踏んだ仔猫は、元気よく歩くのだが、まだ足下が覚束なく、わしわしとジグザグに歩いた。
「真っ直ぐ歩いてるつもりなんだろうね」
その愛嬌のある姿に、大笑いである。
命名権は、やはり私だ。
やはりまだにゃんたまがない事から、雌なのではと家族は言ったが、私はにゃんたまを隈取るような模様があるのを見逃さず、雄だと断定した。
そしてまたしても、私の中で活躍していたヒーローの名前を取った。
WEBにも投稿している作品の『ラドラム』という名前の愛称、『ラド』だ。
祖母などは、牛脂の『ラード』と覚えたようである。
私の目利きは見事当たり、アリスの『弟分』がやってきたのだった。
その頃アリスは、去勢をした事から恰幅がよくなり、六キロを超えていた。
ふくよかというよりは、運動量も活発で骨太な美しい毛並みだったから心配はしていなかったが、明らかにラドには脅威となる存在だった。
人間も含め動物は、親の真似をして大人になる。
アリスには、猫の手本となる親がいなかったのである。
追いかけっこをしている内は良かったが、追いついたが最後、ラドが悲鳴を上げるまで噛み付くアリスに、『噛み付くと痛い』という事を教える為に、親代わりの私が噛み付かなくてはいけなかった。
高校生にして、子育ての大変さを思い知った出来事だった。
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