第1章「初めての痛み。」
さて、『拡張手術』の話をする前に、まずはそこに至る迄の経緯を話そう。
話は、尿路結石を排除する為に入院するところから始まる。
ひとりのヲタが居た。
そのヲタに発症した『尿路結石』の大きさは、当初、ゴマ粒ほどであった。
だがそのヲタは、その程度なら多少の痛みを我慢すれば、自然に流れ出てくる、という医者の言葉を信用し、それを3年間、通院すらもせず放置した。
3年後の春の朝、それは何の前触れも無く襲ってきた。
朝起きた途端見舞った激痛は、経験者以外には実に理解しづらいものであった。
いきなり背中に何者かが匕首で脇腹を抉るように刺した、そんな表現がピッタリな激痛なのである。過去、何回か刃物で切られた事はあったが、ソレの比では無いと思う。刺された事は無いのだが、多分そう。
3年前の結石は腎臓の中から流れ出る事も無く、不摂生の力を借りて尿管を完全に塞ぐ大きさに育ってしまったのであった。
激痛のあまりに、救急車を呼ばず病院へ行く為にタクシーを呼んでしまうくらい混乱するほどの痛み。
呼んでしまった以上は仕方無くタクシーで行きつけの病院へ向かったのだが、痛みで思考が混乱していたために病院名を間違えてしまい違う病院に行ってしまって更にのたうち回るハメに。兎に角まともで居られない痛みである。
なんとか本来の病院に到着したヲタは直ぐに医師の診断を受ける。
尿管に詰まった結石を排除する為、ヲタを診た担当医は直ぐに、超音波破砕施術を施すことにした。
現代の医療技術の発展はめざましく、開腹せずに、外部から衝撃波を結石にぶつけて粉砕する施術を可能にしていた。
一回小一時間で済み、実に簡単で、しかも内臓を痛めないから痛みが余り無い、治療費も健康保険で1割(当時)、総額2万円で済む、患者に色々と優しい治療方法であった。
それを一月一回、約一年近く続けた。
破砕施術後はちょっと大変で、内臓に負荷がかかるので軽く熱が出るのと、衝撃波が腎臓に当たるので結構な血尿が出る。赤いんじゃ無くて真っ黒。初めての施術の後に排尿した時は「なんじゃこりゃあっ」と太陽にほえろの松田優作ばりに絶叫したのだが、まあ今となってはいい思い出である。
思い出。
…………
済ミマセン、モウ一回部屋ノ隅デガタガタ震エナガラ命乞イシニ行ッテイイデショウカ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます