9話 試験結果

「……眠れない」

緊張して全然寝れない、ーーー今日は学園にて試験結果が張り出される日、そのせいか眠いのに寝れない。

「うーん、あ~……」

意味もなくブリッジをしてみる、ちょっと変なやり方をしたのか土踏まずの所を釣りそうになった。

「ほわ!?危ない危ない……」

隣を見ると狼親子が身体を寄せあって寝ている

。メイルとレックスはお互いの顔を寄せて寝ている。フェイは俺の突然の奇行を黙って観ていた。

………なんだろう、恥ずかしいな。


「だぁー!もう寝よう、さっさと寝るからな~……」

そうだ!何も考えない、そうすれば寝れるはず。俺が得意な事じゃないか!

ーーー何も考えず、白に真っ白に………





ーーー寝れなかった……窓から差し込んでくる朝日が苛立たしい。


「はぁ……起きるか」

まだ家族は起きていないので静かに外に出た。

「ん~っ、ふぅ…走るか」

そう思いいざ走ろうとしたら、後ろに気配を感じ後ろを振り返った。

「ーーーなんだ、フェイ達か……一緒に走るか?」

「ウォン」

どうやら行きたいらしい、尻尾を揺らしている。

「よし、じゃあ行くか!」

何処までも行ってやるぜ!



ーーー舐めてた、コイツら二時間走ってるのに全然疲れた様子がない………今も立ち止まって息を整えてる俺を早く行こう、みたいな感じで見てくるし……ただでさえこっちは寝不足なのにこれじゃあ試験結果を見る前にダウンしちまう。


「ゼェ……ゼェ……はぁ、もう帰るか」

そんな残念そうにするなよ、心が痛むわ。



「だぁ~疲れた……」

日差しが眩しい……ん?

「太陽が真上に……あっ」

もう昼じゃん……



ーーーうわ、すげぇ人。

「うーん、人が多過ぎて見えねぇ……」

「やぁ」

「うお!?、ーーーヘリックかよ、脅かすなよ……」

「あはは、ごめんごめん、それに久しぶりだね」

「おう、久しぶり……試験結果は見たか?」

「コウタと同じで見れなかったよ」

「お前もか」

試験結果の前にはかなりの人が集まっている、受かったのか友達と笑顔で話していたり、落ちてしまったのか沈んだ表情でその場を離れる者等。いろんな人が見えた。


「ヤバい、不安になってきた……」

「んー、コウタは大丈夫だと思うけどな~」

笑いながらヘリックが言う。

「なんで本人よりそんな自信があるんだよ……」

「だって最後の試合は凄かったからね、僕の時は手を抜いてたのかな?」

「いや、三試合とも本気でやってたさ」

「じゃあ最後のあの消える動きは?」

「あれは集中しないと出来ないんだよ、ヘリックの場合は集中出来る暇が無かったし、生クリームの場合は色々驚いてそれ所じゃ無かったから」

「なるほどね~、でも凄かったよブーストの魔法を使っていたのに魔力を感じなかったよ」

「ん?ブーストってなに?」

「え、身体強化の魔法だけど……」

そんなのあったのかよ!あのおっさんそんな便利な魔法のことを少しも教えてくれ無かったぞ!


「へ、へーそんなのがあるのか」

「まさか使ってないの?」

「えーっと、ブーストだっけ?それ所か魔法全般のやり方すら知らないんだけど……」

「……使わずにあの動きか……」


へ…ヘリック……?目が恐いんだけど。なんかマズッたかな、でもあれ以外の答え方がわからんし………。


「まぁ、その……ねぇ?………あ、掲示板の前に行けそうだ行こうぜ!」

「あ!ちょっと誤魔化さないで欲しいんだけど!」

「え?なんだって?」

「いや、だから誤魔化さなーーー」

「え?なんだって?」

「………わかったよ、聞かないよ……」

「すまんね…」

自分ですらよくわかんないのに聞かれても答えられないよ。っと試験結果、試験結果は………


「あ、僕はあったよ!」

むむ、ヘリックは無事あったらしい、自分のを見つけて無いせいか複雑な心境だ。


「えーっと、69……69……あ、あった!!」

やった!あった!良かった……本当に良かった……

「良かったねコウタ、ーーて泣いてる?」

「ひぐっ、らいてねーよ!」

「あはは……しっかり泣いてるじゃないか……」

ひっく……だって実際、試験内容は微妙だったし不安に決まってる。受かったのは奇跡だと思う………


「ほら、合格者はあっちで入学手続きをするらしいよ」

「……あぁ、行こうか」


「番号と名前を」

「7番、ヘリック・ギルバルドです」

「えっと、69番コウタです」

「っ……そ、それではここの方にサインを……」

「はい」

「?はぁ、わかりました」

この先生はなんでこんなに緊張してるだ?

まさか……


「ヘリックって実は大物?」

「はは、そんなことないよ」

ホントかぁ~?だってヘリックに大物か?って問い掛けた時、先生がマジかコイツ……みたいな顔で見てきたぞ!

「じーー」

「んー、しょうがないな」

心底困った感じでヘリックが言った

「実は僕、この国の王子なんだ」

「は?」

「王子なんだ」

「………」


王子?マジか、いやいや無いでしょ。なんで王子が王都の学園に行かずにこんな何の取り柄も無い街(ここの領主に失礼だけど)に来るんだよ。ーーーははぁん、もしやコイツ俺を驚かせようとしてるな?でもこんな冗談を言うって事は王族との関わりが深い所の貴族か……しょうがない乗ってやろう。


「……マジかよ」

「あはは、びっくりしたよね?」

「あぁ、びっくりだ」

「?そっか……でも気にしないでいつも通りでいいからね?」

「いいのか?」

「今からは同じ学園の生徒だからね、学園にまで身分を持っていくつもりは無いよ」

コイツは何を言っても様になるな、何処からか風が吹いて髪をかき揚げている……なんだこれ。みんなこっちを見てるし……


「えっと、今日はこれで解散ですか?」

「ええ、明後日からですね」

「そっすか……わかりました」



明後日か、楽しみだ。

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