8話 新しい家族
「がうう」
一緒に狩りをしてのんびりしていると狼がこっちにすり寄って来た。
「おーなんだ構って欲しいのかーうりうり」
フェイは耳の裏が好きなんだよな~このこの!
フェイって言うのは親狼の名前、そして二匹の子狼は、わふわふ言ってるのがメイル、がうがう言ってる方がレックスと名付けた。
「柔らかいな~、ーーともうそろそろ帰るか……」
そんな事を呟くと狼親子がこっちを寂しそうに見てくる。
うっ……むぅ、家に帰ったらペットを飼っていいか聞いてみようかな?ーーー
「ただいま~っと………!?」
「お、お帰り……」
「あらぁ~、やっと会えた」
な、何故……
「あー…この子っすか最近副隊長がご執心の男の子って」
「うふふ、可愛いでしょ」
「ちょっ、君大丈夫っすか、真っ青っすよ!?」
「すいません……すいません……自分はノーマルなんでどうか……どうか……」
「………副隊長、日を改めるっす」
「えー!せっかく逢えたのに……」
「これ以上の死体蹴りは止めるっす!」
うう……、喋り方は小物みたいなのになんて頼りになる人なんだ………。
その後、小物さんの説得の末帰る事になった、しかし帰る時に誰にも気付かれない様に俺の尻を触って笑顔で帰って行った………。
夕食は俺から黒いオーラが出ていたのか、みんな心配していたが、ダリル兄さんが店の出来事を説明したら納得された。ーーーいや、助けてよ!
あ、そうだ、フェイ達の事を聞かないと。
「あ~父さん、母さん」
「ーーどうした?」「?」
「あのさ……ペットって飼ってもいい?」
「ペット?」
「うん、親犬と子犬(みたいな奴……)なんだけど」
「犬か……」
「あら、私は良いと思うけど」
「まぁーーー」
「え!コウタお兄ちゃん犬飼うの!?やったー!」
「うお!ビックリした……まだわかんないよ」「えー!駄目なのお父さん……」
そう言ってネメは涙目で父さんを見上げた。あ、あざとい……あいつ自分の武器をわかっていやがる。愛しの娘の視線に父さんは思わず「わ、わかったいいぞ……」と言ってしまうのだった。
「本当にここの先にいるのか?」
「大丈夫、大丈夫。いるから」
次の日、俺はダリル兄さんと狼親子の元に向かっていた。どうしてダリル兄さんがいるかと言うとーーー
「ちょっと森に行って来るねー」
「ーーコウタちょっと待ちなさい」
「ん、なに?」
「もしかして昨日言っていた犬の所に行くのか?」
「まぁ、うんそんなとこ」
「なら、ダリルも連れて行きなさい」
「え、なんで」
「ダリルを連れて行って、もしダリルが連れて帰るのを止めた方が良いと言ったらわふわふ!止めるんだぞ」
「む………」ーーーー
なーんて事があった、正直ヤバい………だって犬しゃ無くて狼だし、しかも最近気付いた事だが、フェイの奴は魔法を使いやがる。最初に見たときは驚き、「え!ここの狼は魔法使うの!?」と叫んで子狼達を驚かせてしまった、家に帰り調べると普通の動物は魔法を使えないらしい。ーーーつまりフェイ達は狼型の魔物と言う事になる。やべぇ……やっばい、犬どころか普通の狼ですら無かった……。
しばらく歩きフェイ達のいる湖にたどり着くとダリル兄さんが驚きながら言った。
「な、森の中にこんな綺麗な所があったのか……」
「うん、結構気に入ってるんだ、ここ」
「あぁ、確かにここはいいな………!」
ん?ーーーあぁ、どうやら兄さんがフェイ達を見つけたらしい。
「……おい、コウタ落ち着いて、ゆっくりと下がるぞ……」
「あー、えとね……ダリル兄さん、実はあの子達なんだ……」
「は?何がだ?」
「昨日話した子達なんだけど……」
「いや、だってあれは」
「うん、狼だね……」
「犬じゃないんだぞ?」
「うん」
「………おまえなぁ……」
あ、あははは……
「取り敢えず兄さんの事を紹介しに行こう」
「………大丈夫なのか?」
「安心してよ」
念のため兄さんを後ろに隠しフェイ達の元に向かった、あちらも気付いた様で子狼立神岩走って寄ってくる。
「わふ!わふ!」「がう~」
「うへへへ、よしよし……」
兄さんがそんなニヤニヤしながら子狼を撫でている姿を見てちょっと引いていた、フェイは俺と子供の様子を優しく見守っている。
「みんなに紹介するよ、後ろにいる人は俺の兄さん、ダリルって言うんだ」
「わふ~」「がう?」「(ぺこり)」
「お、おう……」
しばらくたったら兄さんも大丈夫だと思ったのか狼達とじゃれあい始めた。
「おお、ふわふわだなお前達……」
メイルとレックスを撫でてご満悦な様子、今なら。
「で、兄さんどうかな?連れ帰っても大丈夫だよね?」
「ん?まぁ大人しいしお前の言うことも聞くみたいだしな……良いじゃないか?」
「マジ?やった!」
これでいつでもモフれる、勿論それだけが目的では無いよ?心配だってある。
「良かったなフェイ、俺達の家に来ていいってさ」
「……ウォン!」
フェイも嬉しそうに尻尾を振っている。
「コウタ、そろそろ帰るぞ」
「わかった……じゃあおいでフェイ」
そう誘うとフェイは立ち上がって俺の隣に来た、メイルとレックスは兄さんの腕の中だ。
「おう、坊主……てお前の隣にいる奴って……」
「やぁ、ザックさんこれは犬だよ」
「は?」
「犬」
「いや、それ魔」
「犬だよ」
「お、おう……」
「おい、コウターー」
「さぁ、兄さん早く行こう」
「ちょ!おい待てって!」
「………あれは、魔物だよな?」
「コウタ、お前なにを隠してる」
「へっ!?なにもかくしてないよぉー」
「いやいや、下手くそか!」
「べ、別になにも無いよ、無害だよ、無着色だし」
「なに言ってるんだ?ーーそんな事はどうでもいい、正直に言いなさい」
「えっと……そ、のー、実は………この子達魔物なんだよね!」
キャピッ、とでも言いそうなテンションで重要な事を告げたら兄さんが固まってしまった。
「やっぱりか……」
「あれ?気付いてたの?」
「そりゃ、俺達の言葉を理解してるみたいだし。何よりもデカイ」
あ、この世界でも流石にフェイはデカイか、ちなみにフェイは小学生が乗れる位にはデカイ。
ーーー会話を聞いていたフェイ達が不安そうな目で俺達を見ていた。ダリル兄さんはその視線を受け止め言った。
「別に今更おまえ達が魔物だと知った所でどうこうするわけでは無いぞ?ただこれからは一緒に暮らすんだからお互いの事を知らなくちゃな」
やだぁ……カッコいい。
最近はイケメンが周りに多いせいか乙女化が止まらなく自分が心配になった。
「……狼だな」「狼ね……」「狼さんだー!」
うぉ……父さんと母さんが難しい顔してる。ネメはフェイと早速じゃれあってる、あー空気が重い、腹痛くなってきた………。
「コウタ」
「はぁい……」
「犬では無かったのか」
「あー、いやその……ね?」
「置いていきなーーー」
「ちょちょちょちょ!」
「……なんだ」
「落ち着いて欲しい、ほら見てあんなに大人しいよ?それにほら!」
出すしかない最終兵器
「まぁ!可愛い!」
「あー、子供の狼さんだー!」
「そう、子供もいるんだよ。だからお願い!」
「だかなぁ……」
父さんはそう言って子狼に視線を向けた、「わん!」「がう?」
「ぐっ!……わかったちゃんと世話をしろよ」
え、マジで!いやぁ、流石の父さんでも子供の純粋な目には勝てなかったか。
「あぁ、ちゃんと見るよ!」
こうして新しく三匹の狼が家族に加わった。
ちなみにフェイ達はネメや近所の子供達の人気者になったりするのだが、それはもうちょい先のお話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます