7話 森での出会い
「よっと」
攻撃を避けると同時に剣を振り猿の魔物の首を落とす。ーーーうん、いい感じだ。お、あれは!
「……パンツうさぎだ」
なに言ってるの?とか思ってるだろう、だけど残念ながら本当の名前である、見た目はうさぎだ、違う所は毛が下腹部にしか生えていないと言う事だ。その為、初めて会った冒険者が『まるでパンツを穿いてるみたいだな!』と言った所からパンツうさぎ、と言われてるらしい。
ーーーでもそんな事はどうでもいい……何よりもあのウサギは旨いのだ。
「あいつらのお土産に狩って行くか……」
あいつは気配に敏感で何より脚が速い、一度逃げられたら捕まえられない……。だから気配を消す、音を出さない為に動きを最小限に、殺気も出さない為にーーー斬る。
「………おっと」
いつの間にか仕留めていた、集中するのは良いんだけど、どうも記憶の方が飛んでしまう。
よく、『お前は集中すると凄いが記憶が飛ぶのは危ないから早く使いこなしなさい』とか言われたっけな~。おじさん今どこで冒険してんのかな。
ウサギの血抜きが終わり獣道を進んで行く、迷うことは無い。何度も通ってる道だ。
しばらく歩くと広い空間に出た、そこは花が一面に咲き正面には透き通る様な綺麗な湖があった。
俺はそこで辺りを見渡す、すると目的の奴らを見つけた、あっちもこちらに気付き近寄って来る。片手を上げながら俺は挨拶をする。
「よ、久しぶり元気?」
「わん!わん!」
「がう!」
「………」(コクリ)
目の前に小さい狼の子供が二匹とその親狼が居た。
ーーー コイツらとの出会いは半年位前の話。
「ふっふふふ……」
買った、とうとう自分の剣を買ってやったぜ!エクスカリバーとでも名付けてやろうか……
「俺のエクスカリバーが血を欲している……」
聖剣なのか魔剣なのかよく判らん発言なこれじゃ。でもせっかく買ったんだし試したいなぁ。
「?あれは……パンツうさぎじゃん」
お、珍しい。確か父さんが言うにはかなり旨いらしいけど……
「………殺るか」
ーーそーっと、そーっと……って!?
「ーーあぁ!待て!」
くっそ、木の枝を踏んじまったみたいだ!
とにかく追いかけーーはや!
追いかけたのはいいが、ウサギの脚が速く徐々に引き離されて行く。
「ぜぇ……ぜぇ……このぉ、喰らえ!」
最早ヤケクソ気味に右手に持った剣をウサギに投げつけた、ずっと走って疲れていたせいか剣はあらぬ方向に飛んで行った。ウサギは急に左に方向を変え全身のバネを使いトップスピードで方向を変えた。
「な!? もう……無理だ……脇腹痛い」
それでも名残惜しくウサギを見たら何故かウサギが倒れていた。
「はぁ……はぁ……なんで!?」
近寄って見るとどうやら自分が投げた剣が運悪く刺さってしまったらしい。
「マジか、ノーコン万歳だな……」
焚き火に調味料等で味付けをしたパンツうさぎを近付け火を通す。
「あー、いい匂い……」
ーーーそろそろいい頃合いかな?よし、じゃあ頂き……
「うお!?なんだ?」
服を何かに引っ張られてる感じがする。
後ろに視線を向けると二匹の子狼がグルグルと喉を鳴らしながら俺の服を噛んで引っ張っていた。
「ん、なんだ肉が欲しいのか?」
俺が二匹にそう言うと一瞬肉の方に視線が行き欠けたが無視をして背を向け歩き出した。
「あ、おいもう行くのか?」
出来ればモフりたかった……
二匹は少し進むと立ち止まり俺の方を見て鳴いて来た。
「来て欲しいのか?」
と聞くと二匹は頷き先に進んで行く。
「な!ちょ、待てって!」
えーっと、火を消して、荷物と剣。それに肉!ーーよし、これで大丈夫……て、あいつらもうあんな所まで行きやがって少しは待ってくれよ!
しばらく進むと花が一面に咲いている湖にたどり着いた、だけどそんな光景を堪能する程の余裕が無かった。視線の先には子狼の親であろう大きな狼が血だらけで倒れてた居た。
「おいおい……」
恐る恐る近付いて診る、何かの魔物にヤられたであろう引っ掻き傷があった。ケガをしてだいぶ時間が経っているのだろう息が弱い。
二匹の子狼がこっちを視る。
「………」『………』
「はぁ……」
あー、もうやってやんよ!
確かリュックの中に薬と包帯があったはず……
「ーー今から薬塗るから暴れるなよ……」
湖の水を使い傷を流した、暴れるかと思ったが本当に体力が殆ど無いようでピクリとも反応せず浅い呼吸を繰り返すだけだった。そのあと指に付けた薬を傷に塗り包帯を巻こうとした。
「ぐおおおぉぉ!」
も、持ち上げられない!ど、どうする。これじゃあ包帯が巻けない、……こうなれば。
狼の腹に中身のパンパンのリュックを軽く下に挟み込み両前足、両後ろ足を両手で掴み引っ張ると同時にリュックを押し出し狼をリュックの上に置くと言う作戦を実行した。まぁ、ちょっと体が痛むかもしれないけど大丈夫だよね?
「ふんぬぅぅぅ!はいれぇぇぇ!」
『………』(ぷるぷるぷる)
隣で俺の様子を観ていた子狼達が震えている、そんな凄い顔してるか今の俺………
その後はなんとか包帯を巻き、一応ポーションを飲ませた。しばらくすると呼吸が安定してきて安堵する。
「ふぃ~、これで多分平気かな?」
「わふわふ!」「きゃんきゃん!」
「うわぁ!」
二匹がお礼をするかの様に俺の顔を舐めて来る。ーーーペロペロ、ペロペローーーペロペロ、ベロベローーーベロベロ、ベロン、ベロン
「ちょっ、なめ……舐め過ぎっ!」
取り敢えず今の所は親狼の方は大丈夫そうだし帰るか。
「んー、じゃあ俺は帰るな?」
『………』
んな捨て犬みたいな目で見るなよ……
「明日も診に来るから大人しく待ってなさい……ほら、これあげるから」
俺の食べ掛けのウサギ肉を置くと二匹は近寄って来て、いいの?本当にいいの?と見てくる
「食べて良いよ、ほら」
「「わふ(きゃん)!」」
元気がいいねー全く。ーーーーー
それからはほぼ毎日湖に通い親狼の様子を診に行ったりしていた。徐々に傷も直り動ける様になっていった。最初こそ親狼に噛みつかれそうにはなったけど俺が手当てをしたと知ると大人しくなった。
そして今に至るという事だ。今はたまに一緒に狩りに行ったりすらする、大事な相棒達だ。
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