6話 受験終わり

「ただいまぁ~……」

やっと帰って来たっと、あれ、返事がない……家の中も真っ暗だ。

おかしいなまだ店を閉める時間じゃないのに?


「おーい、みんなー!」


………誰でもいいから返事をしてくれ!無理!この雰囲気無理!気のせいだと判っていても視線を感じられずにいられない


「っ、後ろに居るんだろー判ってんだぞー!」

叫ばないと泣いちゃうぞ、俺。



「うぐっ、みんな~……」

なんで、誰もいないの!?18の男が泣いてるんだぞ!トイレも探したし風呂場だって。ファンタジーならと思って父さんの部屋の本棚の後ろに隠し通路が無いか探したりしたけど、見つかったのは真面目な本の後ろに秘蔵本があった位だった。………後で借りよ



リビングに向かうと部屋の中から食欲をそそる匂いがしてきた。

「ま、まさか」

もう恐すぎてリビングで体育座りをして、地縛霊のマネとかやりそうな位恐かった


「だ、誰かいますかか~……」

恐る恐る部屋の中を見ると色々な料理と家族達がいた。

「えへへ、コウタお兄ちゃんお帰り!」

「うえ!?お、おう……ただいま?」



要はサプライズらしい、でも俺が予想以上に恐がってり検討違いの所を探したりと計画通りに事が進まずどうするか話し合ってたらしい。


「それでこの料理は?」

「うふふ、お祝いよお祝い」

へ……お祝い?

「なんだ、駄目だったのか?」

「いや、試験結果は三日後だからまだわからないよ」

「む、そうなのか……」

「父さん、だから言ったじゃないか……と言うか毎年そうだろ?」

とダリル兄さんが呆れた様に父さんに言う

「ん~……まぁ、もう受かったみたいなもんだろう」

「ちょ、やめてよこれで俺が落ちたらどうするのさ」

「その時はその時だ」

「なんだそれ………」

「ねー早くごはん食べようよー」


確かに凄い料理だな、数々のの料理の中の一つを目にしたとたん思わず仰け反ってしまった。なんとか耐えてそいつを見ると、それは見事に綺麗な円型でその外見は純白、そして上には赤いイチゴが等間隔で置かれている……そう見た通りイチゴのケーキである。


「こ、これは」

と、言うとダリル兄さんが答えてくれた

「あぁ、お前は初めて食べるんだっけ?ケーキって言うんだ」

くそっ!ここでも出てくるか、生クリーム野郎シン


「どうしたの、座らないの?」

「お、おお……座るよ座る座る」

今は視界から消して置こう


「では、コウタの試験合格を祈って乾杯!」

『かんぱーい!』


予想外な事もあったけど、こうやって心から合格を祈ってくれるこの人達にはいつかデッカイ事をして恩返しをしたいな……



ケーキは普通においしかったです。






ん…、眩しい……もう朝か。

「ーーふっ、ん”っ、と……」

身体を伸ばしながら今日の予定を考える。


今日何するかなー、父さんからは今日は店を休んでもいい、て言われたけど他にやること無いんだよな~。ゲームやテレビ、マンガや小説があれば……元の世界が恋しい………


街に出てぶらつくか。思えばこの一年店の手伝いと鍛練ばっかでまともに街に遊びに行った事が無かったな。ちょっとワクワクしてきた……



「母さんちょっと遊びに行って来るねー」

「ん?はーい夜には帰って来るのよー?」

「ういー」

今日は俺の異世界の街デビューだ!

ーーー出るときに例のお客さんホ◯が居た時は肝を冷やしたが………




お、おおおお!じゅ、獣人だ!まぁ、普通の人に獣の耳があるだけなんだけどね。

エルフやドワーフとかも見える、ここがそこそこ大きい街だからかな?

大通りは人が多く露店などもある、ある露店から何かの肉と野菜の炒め物を買った。


「んぐんぐ……おー旨い」

なんだろうお祭りの焼きそばに似た旨さを感じる。これはいい食べ歩きでもしながら探索しよう。



「モグモグ……なぁんだほほ?」

そこら辺をぶらぶらしていたらいつの間にか周りを歩いているのが剣や弓、でっかい斧、如何にも冒険者みたいな姿をしてる人達ばっかりになっていた。その冒険者達の大半は少し進んだ先にある大きい建物に入っていった。


「ーーまさか冒険者ギルドか……!」入らなきゃ!



「あのー……はいりまーす……」

あんなに上がっていたテンションは何処へ、でもしょうがないよね、冒険者ギルドってテンプレ通りに行けば絶対トラブルが起きる所だもんね。だから俺がこうなるのもしょうがない。

それよりも受付だよ、受付!やっぱり美人さんとか居るのだろうか?えーっと……


ーーー男、男、男、男ーーー



は?なんで?思わず後ろに下がってしまった

ーーゴッ、「ん?」どうやら看板が脚に当たった様だ。

何か書いてあるな、んーと”今日はイケメンデー”

ーーーえ、なに…それは……、受付を見ると確かに皆イケメン、冒険者を見ると殆ど女性の人ばっかだった。何だよイケメンデーって……


「はぁ……」

予想とだいぶ違っていたギルドの姿に困惑を隠せない。憂さ晴らしに近くの森で魔物でも狩るか。



「お、坊主じゃねーか」

「どうも、ザックさん」

今話しているのはザックさん、ここ東門の門番をやってるおっちゃんでしょっちゅう此所から森に行っていたらいつの間にか軽く雑談をする仲になっていた。

「久しぶりに森に行くのか?」

「まぁね、ちょっとモヤっとした事があってね」

「何だよモヤっとした事って」

「冒険者ギルド」

「あー、今日はあの日か」

「?」

「えーっとだなーーー」


ザックさんが聞いた話だと、一人の女性冒険者が男性の受付をもっと増やして欲しいと言ったそうだ、勿論男性の受付がいない訳ではない。でも、その人が言うには『あれはオッサン私の言う男性とは違う』と言ったらしい、酷い……。そんな抗議を何週間も続けてた効果か他の女性冒険者も便乗して『そーだ、そーだ!もっとイケメンを増やせ!』『結婚させろー!』等と言われギルド側は知ったこっちゃねーよ!と思っていたがこのままでは業務に支障が出ると思い妥協案として月に一度イケメンデーなる物をやってるらしい………



「ーーーと言う事だ」

「しょうもな……」


為になった様な、ならない様な。そんな微妙な心境のまま森に入っていった。


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