5話 入学試験ー実技3

昼飯だ、でも何故か食欲がでない、他の受験者も同じだ。え、何故かって?そりゃあシンの野郎が生クリーム地獄を見せてくれたお陰でみんなダウンしちゃってる、ヘリックでさえ「僕も今日は止めとこうかな」とか言うぐらい酷かった……

そんな事態を起こした本人は今イチゴのショートケーキをバクバク食って周囲に精神ダメージを受けさせている、鬼畜か。


「昼休憩が終わったら最後の一戦か~」

「君なら大丈夫だよ、頑張って」

「………うん」

ーーって、乙女か!ついヘリックの爽やかな励ましに頬を染めながら返事をしてしまった……、なんか隅の席に座っている女子達が怪しい雰囲気を出してるし。


一戦目はヘリックにボロ負け、二戦目はシンがみんなに被害を出したからと言う理由で俺の勝ち、……こんなんで受かるか?


「ーーなんとしても勝たなくては………」

「だ、大丈夫?凄い悪い顔してるけど」

おっと、俺としたことが顔に出てしまったか、いやいやそんな勝つためにー、とか言って闘技場に細工をしたりとかしないさ。

…………本当だよ?




「次、69番と67番」

「うし、やったるぞ~」

「頑張ってね」

「おう!」

そう言ってヘリックと拳を軽くぶつけた



「よし、いいな?……始め!」


67番の子は最初に見た時と同じでジッと相手である俺の事を見ている、俺は構わず懐に踏み込み剣を振る。


避ける、受ける、反撃をする。それをずっと続ける、これまでは相手が強すぎたり、よくわかない奴だったりして教えて貰った事を全然出しきれていなかった、……だいぶ見苦しい言い訳だけど。

でも今回は俺と相手の実力差はそこまで無い、だからこそ落ち着いて全てを出し切れる、逆に拮抗してるからこそ出し切ら無いと勝てない訳だけど……


「せい!」

「ん……くっ!」


落ち着け、おじさんからも言われた。

何も考えず、落ち着き、斬れば良い、と言われた。だから教え通りに落ち着け、何も考えるな………


ーーー何も考えずに

ーーーただ剣を振るう

ーーー避け、受け、そして斬る……ただそれだけ



「………」

「?」(雰囲気が変わった……?)


ーーー避ける


「な、消えた!?」


ーーー斬る


「ーーっ!」

(気づいたら目の前に奴はいない、殺気も何も無い攻撃……さっきとはまるで別人だ)


ーーー受ける必要はなさそう、じゃあ避けるのと斬る事だけを考えようーーー


「くっ!はぁ……はぁ……」(何処かで勝負に出ないと負ける……)


それから数回の刃を交わせて最後の時がきた


「……っ、ハァァ!」(これで決める!)


ーーー相手の短刀が真っ直ぐ俺の額に向かって突き出される、俺は脚の力を一瞬抜き姿勢を下げる、前に倒れる勢いのまま脚に再び力を入れて思いっきり踏み込みすれ違い様に首を斬ったーーー



あ………


「アァァァァ!斬っちゃった!」

やべぇ!?首を思いっきり斬っちゃったよ!人を殺しちゃった!

慌てて後ろを向くと傷も無く仰向けに倒れ気絶している相手がいた、それを観ていた先生が


「ここでは痛みは有るが傷は出来ないと最初に言ったはずだぞ?」

「へ?」

あれ?そんな事言ってたっけ、ちゃんと話を聴いとくんだった……一人で焦って恥ずかしいじゃん……

「はぁ……まあいい、お前の勝ちだ」

「あ、はい」


そっか俺やっと勝ったのか。


「おーい、コウター!」

おっとヘリックが呼んでる


「おーやっと勝てたぜ」

「おめでとう、でも前の試合も勝ってたじゃないか」

「あれは勝ったとは言わんだろ……」

「あはは……」

「笑って誤魔化すな」

そんな事を話していると少し離れた所に座っていた女子の集団がこちらをチラチラ見ながら何かを話していた。


「どっちが受けだと思う?」

「やっぱりコウタくんが受けでヘリック様が攻めでしょ」

「いやいや、ヘリック様が受けでしょ」

「えー」

「………そこで生クリーム野郎を……」

『それは無い』


「………」

「どうかしたのかい?」

「いや、何でもない」


そう、なんでもない俺はあの子達が何の会話をしてるかぜっんぜん!解らん、そうだこれからは鈍感系でいこう、解らなければ何も怖く無い!最弱は最強だからね!流行的に!



しばらくヘリックと雑談をしていたら先生が俺達を呼んだ。


「えー今日はこれで試験を終了とする、結果は三日後の昼過ぎに正面入口前に貼り出される予定だ」


三日後か……微妙な日数だな、何するかな~


「質問は無いな?………よし、それでは解散、皆良く頑張ったな!」


あ”ー!やっと終わった、早く帰って寝たい……


「ヘリック様、御迎えに上がりました」

「あぁ、お疲れ様ルーフェス」


あれは…ヘリックの護衛かな?若いな。


「ん?あ、コウタ」

「おう、もう帰るのか?」

「うん、帰ったら勉強だ」

「うへぇ……大変だ」

「全くだよ、たまにはサボって思いっきり遊びたいよ」

そう弱音を言いながらも笑顔なんだが?


「ヘリック様……そろそろお時間が」

「ん?おっと、そうだね……すまない時間みたいだ」

「らしいね、じゃあ三日後な」

「あぁ、三日後にまた」


う~む、ヘリックはやっぱりどっかの貴族様だったのか。家名とか聞けば良かった……また今度でもいいか、取り敢えず寝たい……

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