4話 入学試験ー実技2

「うっ……」


実技試験二試合目、俺は対戦相手を目の前に胸を抑えていた。


「何だよ、これ……」

「フハハハ!これが私の力だ」


俺と相手の辺り一面”真っ白”になっていたーーー







「ハァッ」

「ぐぁ!」

「勝負あり!」

『キャアアアア!』


ヘリック流石だな、安定してる。

てかもはや女子の歓声が超音波になり初めてる、向かい側に座ってるのに耳を抑えたくなる。

ヘリックも若干引いている。


「お疲れ」

「あぁ…ありがとう」

「ヘリックはもうこれで三戦目か」

「うん、コウタまだ?」

「まだ二戦目すらやって無いよ、人数が多いからしょうがないけどさ」

早く俺の番来ないかな~


「69番、14番」

「お、やっとか」

「みたいだね……14番、強敵だよ……」

「お前が言うほどか」

「まぁ…ね」

確かに14番の奴はオレンジ色の髪で前髪が長いせいで目元が見えないという謎の人っぷり、でもそこまで強キャラ臭はしないけど…

「?取り敢えずやるだけやるさ」



「両者構え」

さて、相手の武器は……

相手は両手の掌を上に向けた、すると掌の上に魔方陣が出て来て。

「魔法使い?」

「惜しいな……」

意外と渋い声をしてるな、てか魔方陣が出てるのに魔法使いじゃない?

「俺は………召喚師だ」

「召喚師!」

おおー!召喚師だと、ヤバいテンションが上がってきた……でも掌を上に向けている、見た目は飲食店の店員さんだ、掌におぼんでも乗せたら完璧な店員さんだ。

そんな格好で何を出すのだろう?


「ーー来い!」

「うお!?まぶし!」


突然、手元が光だした。数秒後やっとその光が消え奴の手元にいたのは……


「パイ?」

パイと言っても男が好きなパイではなく生クリームがタップリと付いているパイだった


「え、それが武器?」

「そうだ」

「えぇ……」

パイで戦う奴なんて見たことねぇよ、でも構えは様になってるな……なんかムカつく………


「よし、準備はいいな?では行くぞ……」


え、先生ツッコまないの、あれに?

俺がおかしいのか……?

ヘリックを方を見ると彼も苦笑しながら此方を観ていた。


「……良かった、俺がおかしい訳じゃないのか………」

割と本気で心配しちゃったよ。

あ、先生がこっちを見てる。

「ーーすいません、大丈夫です」

「うむ……、では始め!」


始まったか、まずは相手の出方を見ーーー

「ほわぁぁぁ!!」


合図と共に俺に向かってパイ投げてた、肩が良いのかかなりの剛球?を投げ込んできてちょっと大袈裟に避けたら後ろの方からバチィィィン!、と破裂音が聞こえ恐る恐る後ろを振り替えると此方の試合を観ていた受験生の顔面に当たって顔を生クリームだらけにしながら仰向けに倒れていた………


「ーーや……やべぇ……」

不味いあれは不味い、かなり強烈な音が聞こえた……前を見ると既に新しいパイを召喚している姿がそこにあった。


「次は、当てる」

ヘリックとは違う意味で強者だこいつ……




「ふっ、はっ!」

「っ、うお!」


相手がパイを投げて俺と観戦してる奴らが避ける、そんな事を5分位続けていた。


ぐぬぅ……中々攻められない、球速はそこそこあるが避けれない程ではない、でもパイ自体はそれなりの大きさだから迂闊に近付けないし一回切り落とそうとしたらそこら辺に散らばって逆に危ない。

ーーパイ強いな……



パァン!、また一人殺られたか……、ただ観戦してるだけなのに。

可愛そうに……、そう思いながら周りを少し見た。


「うっ……何だよ、これ……」

「フハハハ!これが私の力だ!」


集中して気付かなかった、俺と相手の辺り一面が生クリームだらけになっていた……


見てるだけで胸焼けを起こしそうだ……


「ふふ、これたまけではないぞ?」

「……なに?」

まだ何かあるのか、てかキャラ変わってんぞ……


「ん?」


なんか甘ったるい匂いが……まさか!?


「気づいた様だな」

「お、おまえ……」

これは辺り一面を生クリームだらけにして甘ったるい匂いを出す事により相手を気持ち悪くさせるという非道な戦じゅ………気持ち悪……


相手を見ると人差し指を上に掲げていた


「……パイが一番好きなのはわかったよ」

「違う、上だ」

「上?……なっ!?」

上を見ると空に巨大な魔方陣があった、周りの受験生、未来の後輩の姿を観に来たここの生徒も呆然としていた。


「これが俺の全力全開!」

「なんか聞いたことのあるフレーズ!」

「くらえぇぇぇぇぇ!」


魔方陣から無数のパイが出て来て此方に向かって降って来た、まさしくパイの雨……


「いやいや…、そんな事言ってる場合じゃないぞこれは………」

空を見る、どんどんこっちに迫って来るパイ達。

「お、終わりだぁ……」

「みんな生クリームまみれで死んじゃうだぁ……」

もし俺が部外者だったら正直笑う、間違い無く笑う……でも残念ながら俺は当事者だ、だからこそこいつらの言いたい事が判る。


ーーー滅茶苦茶生クリーム恐い!

あ……涙出てきた。



「セイントシールド!」

「ファイアートルネード!」


どうしようか悩んでる間にヘリックと先生が流石に不味いと思ったのか迎撃をしだした。

俺も魔法が出来れば……、空を見上げると巨大な魔法の盾がパイを防ぎ、炎の竜巻が多くのパイを塵にしている。


「やっぱり魔法凄いな……」

などと魔法を絶対に覚えてやると決意を改めている内にどうやら終わった様だ。

「ヤッタァァァァァ!タスカッタァァ!」

「うぐっ……ひっく……」

「ありがとう……ありがとう……」

みんな余程恐かったのか泣いてる者までいる、一部テンションがおかしい奴もいるが………



けっこう広めの闘技場を埋め尽くす位の量のパイをたった二人で防いだのか……、先生は判るけどヘリックは同年代に比べたら何段も上にいる、俺はあいつに追い付けるかな?






試合結果は周りに被害を出しすぎたという事でシンの……あ、生クリーム野郎の負けになった。

あまり嬉しくないね!

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