第2話 叔母

山道を登り始めて10分。

携帯の地図にはもう目的地が見えていた。

頭を上げると少し奥の方に茶色い建物が見えた。


山の中にぽつんと建っている一軒家。

家の横には広めの畑と田んぼがある。

圭太は玄関の前で止まり、タオルをリュックに縛り、ドアを叩いた。

「はぁーい」中の方で女の人の声が聞こえる。

ガラガラガラ…

「圭ちゃんかな?」

「はい。坂口圭太です。」

「よう来てくれたねぇ。ささ、入って入って。」

「おじゃまします。」

中に入り、客間に通された。女の人はお茶を持ってくるけぇねと言って奥の方に歩いていった。

客間には水墨画の掛け軸が飾ってあり、その下の棚には二眼レフカメラと思われる物体が飾られていた。

「お待たせ〜、麦茶でごめんね。」

「あ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

「そういやぁ、まだ自己紹介してなかったね。上野正美、あなたの叔母にあたるのかね。見ないうちに大きくなったねぇ…」

曽祖父が亡くなってから、この家は叔母である正美さんが管理しているらしい。

麦茶を飲みながら曽祖父の話を叔母から聞いた。

曽祖父は写真の修行をすると言ってこの山奥の家をひとりで建てたらしい。

掛け軸の下にあるのは曽祖父が最後に使っていたカメラだったーー



なぜ、僕がここに来たか。

その理由は1つ。曽祖父が残した遺書にこう書いてあったからだ。

『光を残す遺産ほど美しいものはない。その遺産に終わりはない』


僕はこの言葉に一目惚れしてしまった。

曽祖父が残した遺産を僕が継ぎたいと思い僕はカメラを始めた。

曽祖父が残した遺産の続きを作りたかったからだ。


叔母さんの話を聞いているといつのまにか空は赤く染まっていた。


とりあえず今日は泊まんなさい。

叔母にそう言われ、曽祖父の残した遺産を今日はゆっくりと見ることにした。




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「写真」の彼女 miso @miso-miso

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