第14話

14話


また、夏祭りの事を繰り返すように、僕は失敗してしまったのか……


「………士郎さん」


インスタントガールフレンド!?


「………なんだ?今頃きて……失敗した俺を嘲笑いに来たのか?」


やはりやつは僕の心なんて考えず、うざいを通り越して、一周回って、もう清々しいくらいに笑っていた。そして、とどめを刺すかのように僕にこう言い放ったのだ。


「それも楽しそうですね」


………マジかよっ!!こいつ………



「それもって…………」


「でも、士郎さん。なんでもメガティブに考えすぎじゃないですか?」


「だって………もう、二回目だぞ……これが落ちないでなんだっていうんだ」


「それは士郎さん。失敗に対する『逃げです』失敗がどうしたんですか?そんなの誰だってあります。何度失敗したっていいじゃないですか。次、また出来なければその次また出来なければ何度でも、挑戦して失敗してくださいね」


僕はこいつの言っていることが理解できなかった。


「…………おいおいちょっと待てよ。僕の失敗で傷つく女の子の背を僕は、どれだけみなければいけないんだ?もう、あんな背中見たくない……」


僕は少し怒り気味で、例えると生理が近い女の人が腹いせに八つ当たりしてるような感じで僕はそう言った。


すると、やつは僕を慰めるように優しく言った。


「大丈夫です!私を誰だと思ってるんですか?しっかりフォローはさせてもらいますので、ガンガン失敗していきましょう。どんな人だって絶対に失敗しています。その失敗をどう考えて次に生かすかが大事なんですよ」


うっ!!!


なんだよっ!!


カッコ良すぎんだろ…………


「…………次は頑張ってみるよ」


「はいっ!頑張ってくださいねっ!!」


「てか、士郎さん。まずくないですか?火憐さん泣かせて放置なんて」


「あっ!」


やばいな……………追いかけるか


と思い、僕が玄関にかけ始めるとインスタントガールフレンドが前に出てきてそれを止めた。


「なんだよっ!!」


「ちょっと士郎さんっ!!追いかけるには、遅すぎますよ」


正論を言われた。当然のことだが、なにも言い返せなかった。


「じゃ、どうすればいいんだよっ!!」


「士郎さん。時間の経過ってのは大切ですよ。これは時間がいります」


「なんでだよっ!!このままじゃダメだろ?」


と、言い放つと僕は玄関に駆け出した。


パチンっ!!!


えっ!な、なんだ?僕にはなにが起きたのかよくわからなかった。でも、頬が痛い。

だが、なんだか暖かさを感じさせる痛みだった。


「士郎さんっ!!わかってくださいっ!!これ以上やると火憐さんが傷つきます」


「…………そ、そうか。お前がそこまで言うなら、いかないよ」


本当は火憐のところに今すぐにでも行きたいのだが、あそこまで言われたら仕方がない。


「おじゃましました」


と、僕は挨拶を済ますと火憐家を出た。


玄関で僕は一つ大きくため息をつくと家に帰るために自転車に乗り込んだ。


「火憐!会いに来たぞ!」


どっかで聞いたことのある男の声が聞こえた。


「うん?その声はれん?」


と、僕が返すと暫くの沈黙があった。


「うん?え?なんで士郎がここにいるんだ!?」


「えっと……」


と、僕が言い訳を考えていると、れんは頭を?惜きむしりながら混乱、いやむしろ錯乱して、自転車から転げ落ちてそのまま動かなくなった。


「お、おい!大丈夫か?」


返事はない。でも、呼吸はあるな。


でも、やべえな。


そんな時、火憐の家の扉が開いた。


「どうしたの?士郎ちゃん」


「ね、姉さん」


あ、昔の呼び方で呼んじゃった。


れんの様子を見て察したのか血の気の引いた顔で


「はやく家の中へ」


と、言った。


「はいっ!!」


僕は倒れたれんを抱えて火憐の家に再入場した。


そして、火憐のお姉さんに案内されて火憐のお姉さんの部屋に行った。


「ここに寝かせて」


「はい」


僕は言われるがままに動き行動した。


「息はあるし、大丈夫だよね?なら、ここにいてもつまんないし、リビング行こうか」


これでも、このお姉さんは看護師だ。多分任せて大丈夫だろう。


僕はこの言葉に甘えてお姉さんとリビングまで行った。


「どーぞ。お茶」


「すいません」


さっきの火憐の対応はダメだよな。やっぱり、O・MO・TE・NA・SIは大事。と僕は心から思った。


「でさ、さっきすごい顔して火憐でてったけど、どうしたの?」


さっきの話を全てまとめると火憐と俺が中学時代に両思いだったけど、すれ違いをして、その気持ちがどっちにも伝わらず、そのまま時が流れたってことだ。


こんなことを火憐の身内に言えるのか?無理だ………


ど、どうする!?


「えっと………」


「そ、そうかそうか。言いにくいよねー」


多分顔に出ていて、察してくれたのだろう。笑いながらそう言ってくれた。


「じゃ、話を変えよう」


「はい」


話の中でもリードしてくれて素晴らしい人だな。と、思いながら僕は話を続けた。


「あの火憐の恋人君は、どうして倒れてたの?」


僕は姉さんが、昔はれんのことをれんくんって呼んでいたのに、火憐の恋人君になっていることに、なんだか違和感を感じながら答えた。


「これは予測なのですが、僕が火憐の家にいてなんで会ってるのか?ってことについて、混乱して倒れたんじゃないですか?」


「ほほー」


「なんだか、難しい年頃だね」


「そ、そうですね……」


何故か僕に憐れみの目を送ってくる。


ドンドンッ!!!


二階から物音がなり始めた。


「多分、あの火憐の恋人君が起きたんじゃないかな?」


また火憐の恋人って言った。


なんか負けた感じがするな………


「そうですか……じゃ、僕が行ってきますね」


「何言ってるの?私も行くよ」


「あの、ちょっと言い訳に付き合ってください」


「いいけど、どうして?」


「ここで面倒起こしたくないんですよ」


「わかった」


「えっと…じゃ、こうして………」


「おっけい」


笑いながらそう言った。


うし、言い訳も考えたし行くか!


そして、僕とお姉さんはれんの寝ている部屋。いや、正確には起きたはずの部屋に向かった。


「おう。大丈夫か?」


「ああ」


俺が来るとれんは立ち上がろうとした。


「やめろってまだ少し休んどきな」


「あ、ああ」


「なあ、士郎なんでここにいるんだ?」


よし、掛かった。


僕とお姉さんは打ち合わせ通り話し始めた。


「それは私がね、呼んだの」


「昨日な電話がかかって来てな。火憐が最近なにも言ってくれなくて困ってるって相談されてね」


「そうか…」


多分、わかってくれたのだろう。


それから暫く沈黙が続いた。


「なあ、士郎。なんで火憐のことについて聞かれてるんだ?」


「そ、それは………」


どうする?はっきり言って三年間くらい連絡さえとってなかったのに急に家に呼ぶとか無理がありすぎるな……


「なあ、士郎。しっかり本当のことを話してくれ」


すぐに嘘はばれた。


「あ、ああ」


僕は、火憐との話など、あった本当のことの全てを二人に話した。


「そうなんだ………」


と、姉さんが呟いた。


「火憐から聞いたのか……」


「まあ、な」


「すまないな……俺も本当はしっかりとサポートしてやりたかったんだけどな………」


凄い落ち込んで、いまにも負のオーラでなにかの魔物でもよびだせるんじゃないか?って程の負のオーラを全身から醸し出していた。


ここでの選択ミスはまずいぞ?


この空気はまずい………


僕は少し考え、言葉をまとめ最善ではないけれど、会話を続行した。


「いや、もういいんだ。俺ももう好きな人出来たし………」


と、言うとそんなれんが急に本当に別人になったかのように元気になって、瞳を輝かせながらこっちを見てくる。


「ど、どうした?」


「え?マジで!?好きな人出来たの?」


「まあ、な」


てか、こいつ知ってんじゃなかったのか?俺が白崎さんのこと好きなの


「あ、確か……白崎……しかさん?だっけ?」


夏祭りのことを思い出したのか、わからないが、れんはそう言った。


「あ、ああ」


僕はその強気なというか、無垢な少年のようなれんの瞳に負け、肯定した。


「てか、あの時、二人きりにしてやるよ。って、いって他の奴ら連れて去っていったじゃねえか」


「あ、あれな。あれはちょっとした悪ふざけだったんだよな」


と、笑いながられんは言った。


「ほ、ほう………」


俺は悪ふざけってだけで、好きな人と二人きりにされたのか………


僕はこの時本当に心からそう思った。


こいつ、人助けとか絶対出来ない


と………


「ん?どうした?士郎」


「いや、なんでもない……」


「で、火憐のことフったの?」


グサッ!!!!


「もうちょいオブラートに包んでくれないか?」


「いや、だってよ?わかんなかったら面倒くさいじゃん?なら、直球ストレートど真ん中で勝負ってことよ」


「そ、そうか。でも、勝負はしてないんだけどな」


と、言うツッコミをれんはスルーして僕にまた、問いかけてきた。


「で、フったの?」


ど、どうする?答えてないし………でも結局フってるよな……?


「あ、ああ。多分フったのかな?」


「なんか曖昧だな」


どうすりゃいいんだよっ!!答えてないものをフったのフってないの言えないじゃねえかっ!!


「まあ、いいや。フったのか……」


と、笑顔で言った。だが、あの光を失った目でいくら笑顔で本当の心を隠そうとしても、やはり感情ってのは表情出てしまうものだ。


でも、その顔はあまりにも複雑で隠くそうとした表情がありすぎて有り余って、溢れ出していた。


「まあ、そうだな」


と、僕は答えた。


暫く沈黙が続いた。


ど、どうしよう…話すこともう無いんだけど…………


と、悩んでいる時、神様の人さしの光が舞い込んだ。


「はい!この話は終わりっ!!火憐の恋人君はもう、大丈夫よね?下行っておかし食べない?」


ナイス姉さんっ!!


と、僕は心の中で称賛し褒め称えてこの話に便乗した。


「そうしようか!れんは大丈夫?」


「う、うん」


「なら、いいねっ!!じゃ、下行こっかっ!!」


「「はいっ!!」」


そうして僕らは下の一階のリビングへ向かった。


「じゃ、ちょっと待っててね。いまコーヒー淹れてくるから」


「あ、僕も手伝いますよ」


僕はなぜか自動的に口が動いてそういった。


「ん?じゃ、お願いしようかな?」


「じゃ、僕も手伝います」


と、れんが便乗してきた。


「あ、ダメだよ。まだ、休んでて。その気持ちだけもらっておくねっ!」


と、優しく姉さんが言うと、れんがなんだか申し訳なさそうな顔をしていた。


「じゃ、士郎ちゃん。ついて来て」


「は、はい」


僕は言われた通りついて行った。


そして、一つの部屋に案内された。


案内された場所はキッチンだった。部屋はテニスコートの反面くらいある大きさで、その壁にはいろいろな料理器具がびっしり並んでいる。


業務用でもこんなに立派なの見たこと無いぞ………


と、若干驚きつつ僕はその室内に入った。


「ねね、びっくりした?」


「え?まあ、はい」


「これはね?お父さんの趣味でね?いろんなとこから買ってくるんだよ。でも、実際使うのはほんの少しだけなんだけどね」


と、笑いながら言うと、かなり年季の入ったやかんを下についている収納スペースから取り出した。恐らくそこにいつも使うものが入っているのだろう


「そうなんですか」


そして、やかんに水を入れて日をかけ始めた。


「あ、士郎ちゃん。そこの上の棚の中にお菓子がいっぱい入ってると思うから、取り出してくれない?」


「は、はい」


僕は言われたままその棚を開けると、クッキーや煎餅、ポティトやおかきなどがいっぱいあった。


僕はでも適当に2~3個取り出すとそれを見ていたのか、次の指示があった。


「この皿に出しちゃって」


の事なので、僕は用意されていた白い大きな丸皿にお菓子を出した。


「ありがとう。士郎ちゃん」


「いえいえ。こちらこそすいません。さっきは助かりました。ありがとうごさいます」


「え?ああ。あんなの気にしなくていいんだよ?」


「それでも、ありがとうごさいます」


と、僕はしつこいかもしれないが、お礼を言った。


「いーえ!」


ピューッ!!!!


と、高い音をやかんがうるさく鳴らし始めた。


「お?沸いたね」


姉さんはその沸いたお湯をコップに淹れ始めた。


「あ、士郎ちゃんミルクとお砂糖いる?」


「あ、じゃ僕はミルクだけで」


と、答えると頷いて答えてくれた。


「あ、火憐の恋人君に聞いてないや。ちょっと大至急聞いてきてくれる?」


「はいっ!」


僕は駆け足でれんのいる部屋。リビングにかけ始めた。


ズタズタ………


ガチャッ!!


「れんっ!!コーヒーのミルクと砂糖どうする?」


「あ、俺はいつもブラックだからいらないよ」


「わかった」


ズタズタ…………


と、僕は駆け戻った。


そのタイムなんと10秒っ!!


「いらないそうです」


と、僕は姉さんに報告するとまた、頷いて答えてくれた。


「あ、士郎ちゃん悪いんだけど、これ持って行ってくれない?ちょっと、私他の持ってくるから」


「はい。それってなんですか?」


と、聞くと、笑って


「秘密」


と、言った。


そして、僕は片手にコーヒーを3つともう片手にはお菓子を持つとリビングに戻った。


ガチャ


僕はテーブルにコーヒーとお菓子を置くとそのまま用意されていた席に座った。


やっぱり気まずいな………


ガチャッ!!


また、扉が開いた。


「おっ待たせっ!!」


と、勢いよく入ってきたのはお姉さんだった。右手にはアルバムのようなものを持っていた。


「それはなんですか?」


「ん?アルバムよ?」


と、言うと扉を足で閉めるとアルバムを机に置いた。


「それって誰のですか?」


「火憐のよ」


「え?火憐のですか!?」


と、大声でいかにもって程にれんは驚きを示した。


「ま、まあね」


と、僕と姉さんは若干それに引きつつも、会話を続けた。


そして、ページをめくると火憐のこれまで生きてきた0~17までの軌跡がそこには形として、写真として、残されていた。


「これね、入学式の時の写真よ。あんなに、お姉ちゃんお姉ちゃん。って、言ってたあの子がこんなに立派になって………」


「え?お姉ちゃんっ子だったんですか?」


「そうよ?私、大きくなったらお姉ちゃんと結婚する。とか言い始めたりして」


なんて話を楽しくしていたら、お姉さんがページをめくってそう、最近のページになると………


「あんなに小さかった妹が、こんなに大きくなって、そう、彼氏まで作るまでに成長して、私は姉として嬉しいのよ」


と、言った。


ぼくの頭はその発言の意味がいまいちわからなかった。まあ、姉として嬉しいのはなんとなくだが、わかる気がする。だが、なぜ今ここでそれを言ったのかがわからない。


「ねえ、火憐の恋人君?真剣に考えてね?君は本当に生涯をかけて火憐を愛して、あの子を、大事な私のたった一人の妹をささえてやってくれますか?」


と………………


僕はもう、見てることしか出来ないが、すごい緊張感が伝わってくる。


「はい!僕はこの先何が待っていても火憐といれば、僕はなにもかもを一緒に乗り越えていける。いや乗り越えることが出来ると、僕はそう思っています」


「そう………その言葉を聞いて安心したわ。では、れん君。あの私の自慢の妹を任せますよ」


「はい!任せてくださいっ!!」


と、れんが言うとなんだか場がすごい和やかになった。


そうだよな。なら、僕はしっかり、きっぱり火憐には申し訳ないが、一言。ごめんなさい。と言おう。


これが僕らにとって、一番いい選択だろう。


この後はゲームなどをして遊んで、そのまま時は流れて日が沈み始めた頃、僕らはやっとおひらきって事になった。


「ありがとうございました。今日は楽しかったです」


「僕も楽しかったです」


またもや便乗してきた。ちょっとくらいは考えればいいのに……


「そうね。わたしも久しぶりにはっちゃけちゃったわ。また、おいでね」


「「はい!是非」」


ここだけはなぜか以心伝心でもしてるみたいに、綺麗にハモった。


ガチャ!


「またね」


と、手を振りながら言ってくれる姉さんに僕らは手を振って答えると、扉が閉まった。


「じゃ、帰ろうか」


「そうだな。帰ろうか」


と、言うと自転車に乗り込み走り始めた。


「んじゃ、俺、こっちだから」


と、しばらく走ってから、れんはそう言った。


「ああ、またな」


「おう」


と、言って去っていくれんの背中は、大きく感じられた。


あいつも変わったな………


小さい時とは違う。もう、一人前になる資格のある青年に見える。


なのに自分は………もう、17だっていうのに、あいつと同い年なのになんでこんなに違うんだ?やつはあんなに未来のことを考えているのに………こんなんでいいのか?いや、ダメだ。そんなこと知ってるつもりなのに……どうすればいいかなんてわかんないし………もう、どうすればいいんだよっ!!!!


「士郎さん。やけになっちゃダメですよ?」


と、声が聞こえた。


インスタントガールフレンドか……


「やけになってねえよっ!!俺はこれからどうすればいいのかわかんなくなっちまっただけだ」


「え?士郎さん。なに言ってるんですか?火憐さんのお家で色々ありましたけど、士郎さんは地道に着々とやっていきましょう。まずは目先のことからやっていきましょう。いくらでも何度でも私はお手伝いさせていただきますから、どんどん迷って行ってください」


そ、そうか!自分の歩幅で進んでいけばいいんだ!わかったぞ!僕は自分の歩幅で歩んでいく、次はそう、白崎さんに告白だっ!!


「そうだよな。人生山あり谷ありだもんな」


なんだか、こいつと話すと落ち着くな…………


「そうです。人生はそんなもんですよ」


「ありがとう。インスタントガールフレンド」


「いえいえ、私は当然のことを行っただけですよ」


と、言い残すとインスタントガールフレンドは消えた。


よし、次に白崎さんに会うのは……


あ………………


僕は一つ重大なミスに気付いた。


「会う約束してねえっ!!!!!!」


と、自転車を漕ぎながら叫んだ。


そして、僕は家に帰った。


夏休みどっかに行きたかったのにな…………


でも、行くならどこがいいかな……


夏だし海とかプールとか?いやいやでも、さすがに急にプールとか海とかに誘うと変態だと思われるんじゃないか?………じゃ、うーん…夏って言ったら………やばいそのくらいしか出てこない………


でも、いきなり海とかプールはハードだよな……


どうしよう………


「士郎さん。そこは誘いましょうっ!勇気を出して!でも、それでも嫌だっていうなられんさんとか井上渚さんを誘っていけばいいんじゃないですか?」


「おお!その手があったか」


「ありがとう。インスタントガールフレンド」


「いえいえ、私は当然のことをしたまでです」


と、言うとさっきみたいに消えた。


全くあいつは忍者みたいだな……


でも、連絡手段は?考えるまでもなかったが、け、携帯でメールだよな。


僕は一人、自分の部屋のベッドに横たわりながら携帯を握っていた。


なんで送ろう?


うーんと、メールは用件をしっかりと伝える。これだけだ。


『海に行きませんか?あと、多分バカップルと井上先輩が来ます。』


で、いいのか?


でも、それ以外思いつかねえしな……


手汗びっしりで僕はそう入力して、送信ボタンに手をかけた。


ざわざわ


ざわざわ


本当にいいのか?


なに怖気づいているんだ!?


お、押せっ!!押すんだ!!


僕は白崎さんにその文を送った。


ふぅ…………


緊張した………


あと二人にも先ほどの文のようなものを送った。


なんでかな?白崎さんに送るのはあんなに緊張したのに、あとの二人は普通に送れたな。


よかった……


あんなの続いてたら確実に心臓麻痺で死んでたな………


ん?携帯?メール?



………ってことは返信待ち?


あ、白崎さんがなんで返してくるかわかんねえのかっ!!!


なんだこいつただの変態じゃねえかっ!って思われて、素っ気なく弾かれるんじゃないか?


う、うぅ………


やばい。もう、だめだ………


無性に緊張してきたな………


僕は手汗びっしりな手で携帯を握りしめながら返信を待った。


静寂が続いた。


こないなぁ…………


もう諦めかけていたその時、携帯が鳴った。


おおおおおお!!!!!!!


僕は飛び跳ねながら起きた。


期待を胸に携帯を開くとそこには………


柴崎れんと記載されていた。


お前じゃねえよっ!!!


まあ、一応誘ったしな………


と、思い確認のために僕はそのメールボックスを開き、さっきほど届いたメールを確認した。


件名:いいぞ!!


仕方ねえな。どうせ白崎さんと二人きりが怖かったんだろ?

行ってやるよ。


ーーーーーーENDーーーーーー



マジかよ………


……………こいつすげえな。要点だけ抑えて他のことは何も書いてない。ただの説明文を送っただけなのに、僕の心を見透かしたような文章を送ってきやがった……


どう返すか……


ーーーーーー


件名:わかった。


日にちはまだ決まってないが、それでもいいか?


ーーーーendーーー


で、いいかな?


うーんと………


悩んでても仕方ねえしな。まあ、いいか。


僕は送信ボタンを押した。


ふう……


軽いため息を吐き、ひと段落ついた。という安心感に浸っていると、また携帯が鳴った。


れんか?返信早いな。


携帯を開くとそこには『白崎 鹿』と表示されていた。


うわぁぁ!!!!!


白崎さん!?


ど、どうしよう………


開いていいのか?


「なに今更、怖気付いてるんですか?もう、やるしかないですよ?」


「そ、そうだな」


僕はメールを開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る