第13話

13話


最悪だな。あんなこと言わなければよかった。


てか、あいつの情報網使えねえ。流石ネットくらいの情報網。


あいつが全部悪いんだっ!!ちっ!なんかムカついてきた。あーもう、いらいらする。


「士郎さーん」


空の方から声が聞こえた。


この感じ………インスタントガールフレンドだなっ!!


僕はポケットに手を入れてサバイバルナイフを持つと立ち止まった。


「おや?士郎さん」


僕は何も言わず立ち止まっていた。


これまでに無い緊張感だ。


ざわざわ


「おー……」


と、奴が僕に言葉を発しようとした瞬間、僕は声のが聞こえた方角にパッと振り向くと、サバイバルナイフを彼女の腹部に突き刺した。


赤黒いべっとりとした液体がナイフか刺さった部分から溢れ出してきている。


「し……ろう…さん!!急に何するんですかっ!!痛いじゃ無いですかっ!!」


「ふっ!知らんなっ!お前が悪い」


と、ナイフをハンカチで拭きながらそう言うとと何故かインスタントガールフレンドは切れた腹部を抱えながら笑い始めた。


「ちょっと、士郎さん!!笑わせないでくださいよ。もっと血がでてくるじゃないですか。あははは」


「な、なんだ?」


やっぱり効いてないな……


「もしかして厨二病って奴ですか?」


と、腹から血を流しながら笑って、訊いてくる。


「あの程度じゃ、まだ元気みたいだな。もう一発刺しとくか」


俺の怒りがわかったのだろうか?表情が一気に青くなった。


「ご、ごめんなさいっ!!もうやりませんっ!だから、ナ、ナイフだけは………」


その言葉に僕は耳を貸すことは無くまた、突き刺した。


「ぎゃぁわぁぁぁぁぁ!!!!!!」


と、この世のものとは思えないほどの叫び声。


「同じとこ刺すなんてひどいですよっ!!」


彼女は少し涙目になりながら僕を上目遣いで見てくる。


「あ?また刺されたい?」


「ごめんなさい。マジ勘弁してください。」


やっとしっかり謝ったので、僕はナイフをしまった。


「ふう……よかった。」


インスタントガールフレンドはポツリ多分本心でとそう呟いた。


と、いうと暫く沈黙があった。


「あ、そうだ!!士郎さんっ!!朗報があります。」


「どうしたんだ?」


「告白してください」


……………え?


やつはいつも通り無垢な笑顔で、軽い淡々とした口調で、なんの前触れも無く、そう言った。


「おいおい!待てよっ!!なんでそうなるんだ?こ、告白って…………………てか、わかってんのか?今お前のした発言の重さがっ!!」


「告白がどれだけ大変かなんて知ってますよ。それでフラれて心が折れてうつ病になった人も見たことあります。それに私も………」


と、言って黙り込み俯いた。

え?何?僕はなんかしたか?急になんなんだよっ!!


一応、謝る?か?


「な、なにがあったか知らないけど、それは大変だったな……なんか悪いな…………」


「い、いえ、士郎さんは悪くないですよ………」


おいおい!!なんだよ!!このどんよりとした空気……いつもならウザいくらい元気なのにどうしたんだよ!!


仕方ねえか………


「で、でさ?告白の件なんだが。」


と、インスタントガールフレンドの機嫌を直すべくそう言うと


「あ、はい!その件についてお話しさせていただきますと」


さっきのは嘘みたいにニコニコといつも通り。通常運転で話し始めた。


「すげえ元気じゃねえかっ!!心配して損した。」


「え?私はいつも元気ですよ」


「そ、そうだ………な」


言い返す言葉もねえ。異常なまでにいつも元気だ。


「じゃ、お話を続けさせて貰いますねっ!!」


「お、おう」


「えっと、今日いろいろバタついてたのは士郎さんが告白して大丈夫かどうか?ってのを審議してまして……結果告白して大丈夫ってことなので、告白しましょう」


簡単だったし理解しやすかったのだが、意味わかんねえっ!!!


「それはつまりそっちのよくわかんない事情で告白しろって事か?」


「まあ、ザックリと言えばそんな感じですかね」


あっさりと肯定した。


「ほ、ほう。そうか」


まあ、告白はいつかは通らないといけない道だ。だから、それはいい。だが、勝算はどれくらいあるかってことだ。


「今日、一日中。忙しそうだったんだから、確率というか、勝算は出てんだろ?それはどうなんだ?」


「えっと………」


と、言って指を鳴らすとインスタントガールフレンドの前に薄いパネルのようなものが現れてそこには文字が映し出されていた。


若干驚きつつも、僕は会話を続けた。


「で、勝算はどうなんだ?」


「えっと………あ!ありました。0.3パーセントです」


……………え?それは成功がだよな?おいおいまずいだろっ!!!ほぼ失敗じゃねえか!!


「それって成功すんのか?信じられねえんだが?」


「でも、今日やっと0.00パーセントから0.3パーセントになったんですよ?好意持たれてよかったじゃないですか!!今日より前に告白なんてしてたら絶対にフラれてましたよ?」


「いや、よくねえよっ!!てか、これでもフラれるんじゃないか?」


でも、やはり僕の心は喜んでいた。少しでも微量でも好かれたんだ。と


「フラれるかもですが成功するかもです。」


と、いつもヘラヘラしてるムカつくインスタントガールフレンドがかなり真剣だったため、いつもなら『ふざけんなっ!』とかいってるとこをしっかりと答えた。


「ま、まあ、そ、そうだよな。」


だが、ここで一つ疑問が生じた。


どのくらいでそこらへんのクソリア獣がそうなったかだ。


「でも、成功してる奴らってどのくらいの確率で成功してるんだ?」


「告白成功確率は1パーセント未満でみんな告白してます。」


「マジかよっ!!1パーセントあれば成功するのかっ!!」


「私達のデータですとそうですね。」


「でも、データなのでそのところ注意してくださいね。」


「お、おうっ!参考にさせてもらうよ。」


でも、とりあえず成功しないとだよなっ!!


よし!もう腹を括ったぞ。次会う時の別れ際に告白する。


「お?士郎さん決断したみたいですね」


「お、おう。なんだ?それってわかるのか?」


「そりゃ、全てお見通しですよ」


「ほ、ほう………」


「夜も遅いですし、そろそろ帰った方がいいんじゃないですか?妹さんに心配かけますよ?」


「それもそうだな。じゃ、帰る。また頼むな」


と、言うと僕は自転車に乗り、家に帰った。


もう妹は寝てるといいな。


ちょっと怖い……


家に着き、僕は家を見た。電気は……ついてない。よし、寝てるな。


僕は家の玄関前に着き一つ深い深呼吸をすると、家のドアを開けた。


「ただいま」


ふぅ………寝てるみたいだ。よかった。


「じゃ、俺も寝るか」


と、一人つぶやき自室に行った。


自室に入ってすぐさまベットへ飛び乗ると、かなり疲れていたのか、そのまま死んだように眠りについた。


ブーブーブーッ!!!!


携帯が鳴り始めた。


その音で僕は深い眠りから目を覚ます。


「あ…………なんだ?いま夜中の三時だぞ。」


と、いいながら携帯画面を見てみると『一条 火憐』と表示されていた。


こいつ何してんだよ。でも、丁度いいかあの時何言おうとしてたか聞くチャンスだし………な


「………もしもし」


僕は適当に出た。


「もしもし?士郎?」


「どうしたんだ?」


「夜遅くにごめんね。あのさ、明日………ちょっといいかな?私の家に来て。待ってるから」


ブチっ!!


「お!おい!!」


と、僕が大声で言ったが、返ってくるのはツーツーっという音だけだ。


まあ、なんかあったわけじゃ無いし明日会いに行くか。


そして、また眠りについた。


ジリリリリリッ!!!!


目覚まし時計が鳴った。


一つ大きなあくびしながら、伸びて起きるとすぐに風呂場付近の洗面台に向かう。


いつも通り歯磨きをして口の中を濯いでいると


ガラガラガラッ!!!!


と、勢いよく風呂場の扉が開いた。


な、なんだ?


「お、お兄ちゃん居たの?」


と、全裸の妹は少しの驚きながらそう言った。


「は、早く服着ろよっ!!!」


僕はとっさに妹に背を向け目を逸らした。


やべぇ、また見ちまった……


「お兄ちゃん………かわいい。」


「う、うるせえっ!!早く服着ろってっ!!」


「はいはい」


と、軽くそう言うと、妹はバスタオルを体に巻いた。


「あれ?お兄ちゃん。今日はどっか行くの?」


「あ、ああ。」


「そっか」


「じゃ、私も今日は部活だから、帰り遅くなるから、夜ご飯は勝手に食べてくるんだよ」


と、お母さん風に言うと妹は風呂場から出て行った。


そのあと僕も自室に戻り、この前インスタントガールフレンドに教わったシンプル イズ ベストな服装に着替えると、そのまま僕は玄関に向かい外に出た。


外を出たはいいがどうやって行ったっけ?


確か……吉野川家っていう牛丼屋の近くだったっけ?


その近くまで行けば多分わかる。


僕は4年前の記憶を頼りにその牛丼屋の付近の住宅街に向かった。


……………ここらへんだよな


牛丼屋の近くについた。


こっちだよな?


いろいろな家がびっしりとまるで図書館の本棚みたいに並んでいた。


僕はこの迷路のような住宅街を一軒一軒の苗字の看板みたいな奴を見ながらぐだぐだと自転車で走っていた。


一条………じゃない


一条………じゃない


一条………じゃない


「一条じゃない九条だ」


と、タバコを蒸しながらおっさんが言った。


……………え?誰だ?


てか、このおっさんどっかで見たな気がする…………なんだっけ?


うーん


アロハシャツ着てるな。ん?ってことは、あの時の店員っか!!!


あの店員にはボロクソに文句を言いたいがまあ、いいか。と思い僕は自転車をまた走り始めようとするとそのおっさんが話しかけてきた。


「お前、あの時ファミレスにいた小僧だろ?」


こ、小僧!?俺が?まあ、お前からしたら小僧かもしれないけどよ……


「うん?違ったか?」


「あ、あぁ。そうです」


「あと、お化け屋敷にも来ていたな」


「は、はぁ」


「小僧。お前はいま、一条っていう家に行きたいんだな?」


「ま、まあ。そうです」


「じゃ、ちょっと目をつぶれ」


「え?ど、どうしてですか?」


「なんでもいいだろ?」


「は、はぁ」


僕はそのおっさんの言う通り目を閉じた。


「よし、もういいぞ。一条っていう家に着いた」


「え?なにもしてないですけど………」


僕は目を開くと、さっきまでの場所ではなくそこは一条の家の前だった。

なんか懐かしいな。


「じゃ、またな。小僧」


と、そう言いを残すと、そのおっさんは気づけば居なくなっていた。


「なんだったんだろう………」


まあ、いいか。今は火憐が心配だし。


火憐の家のチャイムを僕は鳴らし少し待っていた。


「はーい」


と、言って黒髪のショートヘアでスレンダーな、なんとも男顔負けのボーイッシュなかっこいい女性が出てきた。


「ど、どうも………」


「あら!しろーちゃんじゃないの!?」


「お世話になってます」


「ひっさしぶりーー」


「お久しぶりです」


昔は、僕にお姉ちゃんがいたらこんな感じなんだろうな。って思えるくらい仲が良かったのだが、火憐に振られたあの日以来、話してないし関わってもいない。だから、この人とは四年ぶりなのだ。


なんで顔して会えばいいかわかんねえよ…………


けど、もう会ってるんだよな。


「あ、何?ごめんごめん。火憐に要かな?」


「は、はい」


「ちょっと待っててね。今、呼んでくるからー」


と、言うと家の中に戻っていった。


暫くして、火憐が出てきた。


「急に……ごめん」


なぜか顔を赤くして、下を向いてそう言った。


「ね、熱か?」


「い、いや。元気だよっ!!」


「そ、そうか」


「で、話ってなんなんだ?夜中に電話してきて。」


「あ、それね。ごめん。とりあえず家に入って?」


「まあ、いいけど………」


と、言うと僕と火憐は火憐の家に入っていった。


「お邪魔します」


「今、ねえさん以外居ないから、私の部屋でいい?」


「いいよ」


と、僕が承諾すると僕達二人は火憐の部屋に行った。


昔とあまり変わらない白とピンク主体のちょっと子供っぽい部屋に、僕はポツリと声を漏らした。


「懐かしいな」


「ほとんど何も変えてないからねー」


と、解説が帰ってきた。


僕は床に敷かれたカーペットの上に座った。


「で、話ってなんだ?」


「えっと…………ね?私ね、あの日れんと士郎に告られた日さ」


やっぱりあの日の話か。


「もう、いいよ…決着はついてんだから」


と、僕はちょっと押し気味にそう言った。


すると、すぐにそれを跳ね返すように


「わ、私がよく無いのっ!!」


と、言った。


え?なんで?だって、一番傷ついたのって俺じゃん。なのになんでまた、その傷口に塩を振るような真似するんだ!?


「な、なんで?」


「だって、あの日私、しっかりと結論言ってないんだよ?」


「だって、あの日『ごめんね?』って確かに言ったぞ?」


「それは………違うんだよ。私、本当は士郎のこと好き………だったんだよ?」


え?え?今なんて?『す、好き!?』だって火憐。今、れんと付き合ってんじゃん。れんのこと好きなんじゃねえの?


「し、士郎。聞いてる?」


「あ、ああ」


「も、もうっ!緊張したんだからねっ!!もうちょっと、なんかあってもいいじゃないっ!!」


急にキレ始めた。


全く、女って言う生き物はよくわからねえな……………


「な、なんかってなんだ?」


僕はもう、白崎さんに告白するって決めたんだ。成り行きだったけど……


「うーんと、なんだろう……」


「それもわかんねえのに言ったのかよ」


と、僕は笑いながらそう言った。


「な、なによっ!!」


また、怒った。本当に女って難しい。


「で、でさ。話を戻すんだけど……さ?そ、その……わ、私と…………つき……あって…………………くださいっ!!」


聞き間違えてなければ、付き合ってください!?だと!?


「え、えぇ!!!!!お、お前わかってんの?て、てかれんはどうすんだよっ!!」


多分、あと、残りの寿命のうちにこんなに声を張り上げることはもう無いだろう。


「れん?あー。あれはどうにかなるでしょ?」


こ、こいつ……彼氏のこと忘れてるとか………


まあ、確かにあいつも男の僕から見ても、イケメンと思われる部類に入るしな……「女」関しては困らなそうだ。


「えっとね、れんは私に協力してくれたんだ。」


は、話が見えねえ……


「え?どういうことだ?」


「あの日さ。実は私はれんに相談してたんだよ。」


「何をだよっ!!」


全く、しっかりと日本語しゃべってくれよ。


「だ、だからぁぁぁ!私がし、士郎のこと好きな事………」


お、おいおい!!じゃ、あいつはなんで告白したんだ!?振られるに決まってんじゃんっ!え?でも………振ってないな………あれあれ?つじつまが合わねえぞ?


「俺もれんに火憐が好きなんだけど、どうしようって、相談してたんだよ」


「そ、そうなの?」


こ、この反応。何も聞かされてないみたいだ。知らなかったのか……


じゃ、俺たちが両思いってことをしっていたのってれんだけ………ってことになるよな?


「じゃ、なんでれんは告白したんだ?」


僕は告られた火憐に尋ねた。


「いや、こ、告白されてないんだよね………」


「え?じゃ、なんで『告られた』とか

嘘ついたんだ?」


「だって………れんに相談したら、『いい方法がある』って言ってたから……」


あの時………


私はれんに相談して話したんだ。


「………………で、いい方法って?」


「いいか?よく聞けよ?なんでも敵が居ると物事っていい具合に進むんだ」


「そうなの?」


「あ、ああ」


「その悪者役を俺がやるから、あとは頼む」


「ちょっと待って。意味がわからないんだけど………」


「いいから、そういうことにすれば」


「わ、わかった」


と、まあ、こんな感じで、そういうことになったそうだ。


「れんはれんなりに考えてくれたんだな……俺は……そんなことにも気づけずに、れんをあの日ボッコボコにしちまったな…………」


「あの時は凄かったね…」


「でも、やり方下手すぎんだろっ!!もうちょっと考えてやってくれよ………」


「そうだよね……なんで私も止めなかったんだろう………」


僕はあの日の事全部あいつのせいにしていた。だけど、あいつはあいつなりに考えてやってくれてたんだな。すまない。そして、ありがとう。


て、次に会うときに、しっかりいってまた、昔みたいに笑って「あれは無いぜ」って話せるようにならないとな……僕のたった一人の男友達。親友ってやつなんだから………


「で、でさ。士郎………私と付き合わない?」


そ。その話か…………今いい感じになんかこの話終わりそうだったろ?なんで水を差すかなーこの、空気読めないクソJKめっ!!


「その話はもう、今はよく無いか?」


「そ、そう………」


と、小さくポツリと言うと、火憐は無気力ながら立ち上がると、自分の部屋から逃げるように出て行った。


そして、火憐の部屋に残される僕。


「僕は帰ったほうがいい……な」


僕はそのあとゆっくりと立ち上がると火憐の部屋から出た。


こういう時は火憐ならトイレだな。昔っからなんかあるとトイレに逃げ込む癖があるからな……………


僕はトイレをノックすると


「な、何よっ!!」


「今日はもう、帰るわ」


「わかった。ばいばい」


と、扉の向こうから聞こえる音は花火の終わった後のような寂しさを感じさせた。


「じゃ、またね」


この後、言葉が返ってくることはなかった。


白崎さんの花火の時と同じだ。


……………なんでだよっ!!


また…………繰り返すように……もう、こんな気持ち嫌だっ!!


僕は帰らずにトイレのドアに寄っかかって床に腰を降ろした。


「なあ、火憐」


やはり言葉は帰ってこないが、そこからはクスクス………っと泣いている寂しい音が聞こえてくる。


泣いてる女の子がいる?


こんなん帰れるわけねえじゃねえかっ!!


僕はしばらくそこに座っていた。


ガチャッ!!ゴンッ!!


扉が開き、当然。その扉は僕に当たる。


痛い………


デッドボールが当たったようなゴンッ!!という音と共に神経を貫かれるような痛みが身体中に走った。


「あ、まだ士郎いたの?」


と、痛がっている僕を、見てないように全く気遣いもせずにそう言った。


「居たの?じゃねえよっ!!痛えよ」


少しキレ気味に僕がそう言うと


「あ、ごめんね」


と、笑いながら言った。


「なんか昔みたいだな」


あ、口が滑った………


火憐は俯き黙り込んでしまった。


また、やっちまった………


さっきまで昔みたいに話せてたのに………


ど、どうする?なんて言えばいいんだ?クッソッ!!!全然出てこねえよっ!!頭が真っ白だ。考えれば考えるだけわかんなくなっていくっ!!


と、僕は頭を抱えながら悩んでいると、火憐から話しかけてきた。


「で、なんで帰ってないのよ………」


まだ、俯いているが声の震え、トーンなどから緊張や苦しみなどが痛いくらいに伝わってくる。


こ、こんな火憐みたらもう引き返せねえじゃねえかっ!!


本心を言えばいいんだ。


「いや、だって俺ら、友達じゃん?親友泣かせて帰れねえよ」


火憐はまた黙ってしまった。


………選択ミスったか?


ど、どうする?


やっちまったか。斯くなる上はっ!!謝るっ!!


「ごめ………」


と、僕が言葉を発したその時、火憐が狂ったように、訴えかけるように言葉を乱射し始めた。


「な、なんでよっ!!なんで今になって優しくすんのよっ!!もう、私振られたじゃんっ!!な、なんでよっ!!し、士郎のバカァァァァァァ!!!」


と、いいながら火憐は家から出て行ってしまった。


その彼女の背中はどこか寂しそうだった。

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