第12話

12話



「いらっしゃい」


お化け屋敷に入ると同時にどこかで聞いたことのあるような声が聞こえた。


忘れもしない。あの時の態度がすごい悪い店員だ。お化け屋敷だというのになぜかアロハシャツを着て、店にいた。


「ペアで500」


多分お金のことだろう。にしても高いな………


僕は500玉を置くと店員に背中を押されてお化け屋敷のスタートに立たされた。


「白崎さん大丈夫?」


「えっと……」


と、白崎さんが何かを言おうとした時、やつは動き始めた。


「心の準備はいいよな?じゃ、いってらっしゃーい」


と、発するとと同時に僕らを強引にお化け屋敷へと放り入れた。


「ちょっと待てぇぇぇ!!!!」


僕は大声で叫んだがもう、手遅れであった。


ふざけんなっ!!あいつ………


また、ファミレスの時と同じようにふざけた事しやがって………


でも、もう後戻りは出来ないっ!


「白崎さん。大丈夫?」


あれ?どこにいるんだ?返事もないし……………


なんか肩が重いし背中には柔らかい感触が………………


入って早々、な、なんだ?怖すぎる。


白崎さんは居ないが、でも振り向けない。


ど、どうする?


「白崎さん?どこ?」


やはり返事がない。


こんな時は落ち着け。


僕は深く深呼吸をすると後ろを振り返ると………


なにもなかった。


なにもないのにまだ、肩が重い。


まさか?本物の幽霊に取り憑かれたか?


自分の肩を触るとなにか他の感触があった。


な、なんだ?人の………指みたいだな。


な、なにこれ!?


マジでお化け!?


まだ、一歩も進んでないのに僕はもうこの場から動く事すら出来なくなっていた。


ど、どうする?白崎さんは居ないし僕も動けそうにない。


いや、待て。ここで動かないでどうするんだよっ!白崎さんだってきっと一人で怖いはずだっ!!!


僕はそう思い。お化け屋敷をかけ始めた。


色々なギミックがガチャーンッ!!とかバリバリバリッ!とか行っていたが、そんな事はどうでもいいっ!!


そのまま走り抜けると、外に出た。


祭り会場の遊び場の入り口の近くに出てきた。


白崎さんが………いないっ!!


僕が叫ぼうとすると、肩に何かが刺さったような痛みが走った。


僕は肩を見るように恐る恐る振り向くとそこには白髪の少女が僕に乗っていた。


白崎さんは僕にガッツリしがみついていたのだ。


僕は、恐怖から解放されて身体の力が抜けて白崎さんを支えるのがギリギリになってしまった。


「白崎さん」


「怖いよ」


背中を通して震えているのが伝わった。


どうすればいいんだろうか……?



「大船に乗ったつもりでいてくださいねっ!」


ふと、インスタントガールフレンドが言っていた言葉を思い出した。


あの時、僕はなんでか安心した。


「あ、もしもーし。士郎さん?」


そんな時だった。また、あの時同様に頭の中に直接響いてくる声。


「あ、うん」


「よかったです。まだ、無事みたいですね」


「まあ、ギリギリな」


「で、どうすればいい?」


「えっと、そのままおんぶしててください」


「インスタントガールフレンドさん?」


いまこいつ。おんぶしてろって言ったか?


「だから、おんぶしててくださいね?」


「は、はあ……」


「もしかして、筋力なくて白崎さんも愛すべき人も持てないって事ですか?これじゃ、女の子にモテませんよ?」


「上手いこと言ってんじゃねえよっ!!そんくらい出来るっ!」


「じゃ、頑張ってくださいねー」


ブチッ!っと僕の脳内にコードが切れたような音が聞こえた。


痛ってえ………


また、通信が途切れた。


まあ、いいや。


僕は白崎さんをおんぶして奴等二人が待つ金魚すくいのコーナーに向かった。


「おう、士郎。生きて帰ってこれたか………って、一人お亡くなりになってんじゃねえかっ!!!」


「勝手に殺すなっ!!」


「いらっしゃーいっ!!」


そんな会話をしているとイキのいい声が聞こえた。


あれ?これもどっかで聞いたような声だな


その声がする方向を見ると………


僕の見間違いだろうか?小学生が働いている………


ちょっと親何してんだよっ!!と、思ったが、どっかで見た事あるような碧眼、金髪、ツインテール、この三つが三原則みたいに綺麗に揃っている奴は僕の知っている中では一人しかいない。


そう、井上 渚だ。



「あ、二宮?」


どうやら彼方も気づいたようだ。


「こんにちはー」


「はい!コンビニ弁当」


「え?」


「何よ?挨拶でしょ?」


いやいやいや、待てってコンビニ弁当って挨拶なのか?


「え?その背中は?もしかして、しかりん?」


「う……コンビニ……弁当」


そういうと白崎さんの体から震えが感じれなくなった。


「あ、あの、二宮くんもう大丈夫だよ」


「あ、はい」


僕は白崎さんを下ろすとなんか皆んなが、初々しいカップルを見るような目で僕らを見てきた。


「なんだよっ!!」


「いや、なんか士郎にしては新鮮っていうか………さ?ね?れん」


「あ、ああ。そうだよなー」


なんか火憐の様子が変だ。


やっぱりなにかあるんじゃないか?


「なあ、火憐なんかあったのか?」


僕がそう聞くと火憐は黙りこんでしまった。


え?このいるだけで辛いような澱んだ空気……

まるで、腐ったチーズの世界に来たようだ。


まずい事言っちまったか?


「い、いや……何でもないよ?」


口をひょっとこみたいに曲げて火憐はそう言った。


顔に書いてあるって……


「ま、まあ今は夏休みだし、楽しもうぜ!」


彼女を守る彼氏………なんだ?これじゃ僕が悪役みたいじゃないかっ!


「そうね!じゃ、そろそろ花火が上がるらしいし、早めに行こっ!」


と、井上さんが言った。


サポートマンみたいのも出てきたしまあ、いいか………


「じゃ、行こうかー」


「あの、皆さんちょっといいですか?」


「はい?どうしました?白崎さん」


なんか………先生みたいだな


「あの、私いいとこ知ってるので来て貰ってもいいですか?」


「おおお!!!!!行きますっ!」


みんなが声を揃えてそう言うと


「じゃ、行きましょうっ!!」


と、それに負けないくらい強い威力で言った。


どれだけ歩いただろう………


僕らはなぜか山の奥地へと来ていた。


夏のせいで虫は多いし、暗くて足場もあまり見えない。


「ね、ねぇ白崎さん?」


「はい?」


「これあってるの?」


火憐が、木の枝を杖にしながら歩きながらそう言うと


「はいっ!あと少しですよ」


と、元気よく言った。


全く辛そうじゃないなあ………

と言うか、むしろ楽しんで山を登っている。ってのは彼女の顔を見ればわかるだろう。


僕ら、幼馴染み軍団はもう、ヨボヨボの年寄りみたいになっているのに、白崎さんは明るい子供のようにニコニコとしてもう、斜面が斜面じゃなくなった壁みたいなとこを登りだした。


「さすがに………壁は無理だろ?」


ざわざわ………


信じるんだっ!信じろっ!!!


僕は神様と、天使のような白崎さんに祈りながら、僕はこの壁を登ってついていった。


はぁ…はぁ……


もう、手と足…いや、もう体全体が自分の体では無いようだ………


手はダンベルみたいに重いし、足はずーっと吊ってるように痛い……


「もう、マジで無理だ限界だっ!!」


「俺も………火憐も背中に居るし……かなり来てるぜ」


「ああ………なんか天使も見え始めたよ………」


そんな時であった。


「みなさんっ!もうつきますよっ!あと少しですっ!」


「「まじえんじぇー!!」」


まるで、以心伝心してるみたいに、さっきと同じように叫んだ。


「ついたぁぁぁ!!!」


「そろそろ打ち上がりますよっ!」


バンッ!っと、一つ花火が夜空に美しく咲いた。


「「「うわぁぁ!!!」」」


僕らは歓喜の声を上げる。


「綺麗!ってか近っ!!」


手を伸ばしたら届きそうな距離に花火が打ち上げられていた。


「それはですね?ここの山の麓から打ち上げているからですよっ!!」


と、白崎さんがサポーター風にそう言った。


「へぇーそうなんですか。白崎さんって物知りなんですね!」


僕はニコッと笑いながら言うと白崎さんもニコッと返してくれた。


か、かわええ………


そんな時、肩を軽く誰かに叩かれた。


「おい、士郎。まだどうせ、白崎さんに告白とかしてないんだろ?」


れんが小声で僕に話しかけてきた。


「え?してないけど、べ、別にそんなつもりじゃねえよ」


「何言ってんだよ。そんなの見ればわかるって、長い付き合いなんだしな」


こいつには何も隠せないな……


「お、おう………」


「俺らは井上先輩連れて、あっちの方に行くから、あとは頑張れよ」


「え?ちょっと待てよ」


と、言うと同時にそれをかき消すかのようにれんがこう切り出した。


「あっちの方が綺麗に見えるよっ!あっち行かない?」


「え?本当?」


「うんっ!」


「じゃ、あっち行こうか!」


そして、僕の方を向きながら親指を立て、「頑張れよ」と声はないがそう言うと、あっちの方に行ってしまった。


二人きり…………


ど、どうしようっ!!!


二人きりを望んではいたが、実際なってみると緊張して手汗がひどい……


なんか話さないとまずいな。


なんでもいい!!


とりあえず話すんだっ!!


花火に関した事でいいよな?


「は、花火綺麗ですねっ!」


なんだそれ?さっきも言ってたし、そんなのわかんだろっ!!


「はいっ!綺麗ですよね!!」


僕の方を見てそう言った。


うっ!!かわいい…………


この時、僕はこの光景に言葉を失った。


神秘的だ………


綺麗な花火と美しい白崎さん………


なんて神々しいんだ。


「どうしました?」


「い、いや………何もないですよっ!!」


そこからは何もなく、ただ単に花火を見ていた。


やがて、花火は次第に少なくなり、ラストスパートをし始めていた。


やがて、空に光が無くなり、さっきまで色鮮やかな花が夜空に美しく咲いていたのに今は暗い、何もないつまらない空だ。


「なんか花火のあとって寂しいですよねー」


し、白崎さんがぼ、僕に話しかけて来た……だと?


いや、いかんいかん。浮かれるなっ!!自分っ!!


「ですよね。僕もそう思います」


「最初は綺麗だけど、散っていった火花と、とともに何かを無くしているようで最後って………嫌だ……」


こんな白崎さん見たことない………

いつもはあんなに元気なのにのだが、この時は違った。


なんか………まずいっ!!


なんて言えばいいんだっ!!!


「お任せくださいっ!!」


インスタントガールフレンドの声が聞こえた。


その声のあと、酷い頭痛に襲われて僕の体から何かが抜けた。


そのあとすぐ目が覚めたが何か変だ。


体がやけに重い……


山登りで疲れたからか?


いや、違うっ!!


明らかに違うものがあった。


なんだ?この胸はっ!!!


なんかふくよかなものが付いてるぞ!?


これ………僕の体じゃない!!


てか、あれはなんだ?僕と白崎さんか?


今の僕は、僕じゃない僕と、白崎さんが話しているのが見える。


なんで!?何これ!?


「心配しないでください。大丈夫です」


また、あのインスタントガールフレンドの電話みたいなのが来た。


「え?お、おい!何してんだ?」


「え、今?いい事してます」


「そうなのか?」


「はいっ!!」


まあ、インスタントガールフレンドならしっかりやってくれるはずだ。


状況はよくわからないが、僕はインスタントガールフレンドを信じるっ!!


僕………じゃなくてインスタントガールフレンドが何かを白崎さんに言っていた。


そんな時であった。


また、頭が割れるような頭痛が僕を襲う。


そして、痛みが治まり、目を開けると、白崎さんが泣きそうな顔をして、僕の前に立っていた。


今は自分の体のことなどはもうどうでもよかった。なんて言ったって白崎さんが……………


「泣いてんじゃねえかっ!!!」


「えっと、白崎さんに何を言ったかでいいんですか?」


「多分それだ」


僕は少しキレかけていたが、泣きそうな白崎さんの前だ。と、心を落ち着かせて聞いた。


「じゃ、言いますよ。『なら、心の底から楽しかったっていう記憶を作ればいいんじゃないですかね?』って言いました」


「………………え?」


「なんてメルヘンチックな事言ってんだよっ!!!」


「女の子はメルヘンチックなのが好きなんですよっ!特にあういう子は」


「そうなのか?」


「はいっ!!」


いつもの弾けるような声でそう言った。


「あ、まだ会議終わってないんだったっ!!!私は即座に戻らないとなので、あとは頑張ってください!」


そして、風のように僕のところから一瞬にして消えた。


「おやぁ?お二人さん?」


「おあついねぇ……」


白崎さんは僕に抱きついて泣いていたのだ。


井上さんなら変態っ!!とかバカァァ!!とか言って殴りかかってきてもいいんじゃないか?


なんで黙ってんだろ?


「こ、これは違うからっ!!!」


僕は否定したが、白崎さんはまだ、みんなが来たのをわかっていないのか、否定どころか僕にもっと強く抱きついてきた。


「ちょ!白崎さんっ!!!」


うわぁ………幸せだ………


「まあ、まだいいじゃねえか」


「そうだよ?士郎?もうちょっとそのままでいなさい」


君らはなんだ?僕の親なのか?


上から目線だな。歳はまあ、誕生日から言ったら、僕が一番早いのに……


「そ、そうか」


それからしばらくして、白崎さんは泣き止んだ。


「ありがとうっ!士郎くんっ!」


泣いた後で目が少し赤くなっていた。


うっ!!!


可愛すぎんだろっ!!


「じ、じゃあ行こうか」


目を逸らし、照れ隠しながらそう言った。すると


「はいっ!!」


と、元気のいい声でそう言った。


来る時は辛かった山も、なぜか、少し歩いただけで、すぐに降りれた。のだが、あいつらカップルはすごい疲れていたというのに。


「大丈夫か?」


「あ、ああ……」


よっぽど疲れているのであろう。こしを折り曲げ顔を伏せながらフラフラと歩いていた。この歩き方まるで……


「これはゾンビですか?」


「うわいめふやむそまるな」


と、意味不明なことを叫びながら襲いかかってきた。


「マジでゾンビでしたぁぁぁ!!!」


と、叫びながら僕はやつらから離れる。


「はい!水ですよ?」

と、言って白崎さんはそのゾンビに水を渡す。


奴らはその水を奪い取るように取ると、その水を一気に飲み干した。


「ふぅーーー」


二人は体から魂が抜けているようだった。


「大丈夫か?」


と、僕の良心でそう言った。


「あ、すいません。なんか私と親しい人以外はなんかみんな疲れるんですよねー」


と、白崎さんは言った。


「な、なんで?」


「生まれつきそうなんですよねー」


「へ、へぇ……」


う、うん?どういうことだ?


難しいことは後で考えて、今はとりあえず状況だけ、整理しよう。行きはすげえ疲れた。本当に死にそうなほどに………だが、帰りはどうだ?全く疲れてない……ってことは?


少しは好意を持ってもらえたってことじゃないか?


実感は無かったが、少しでも好意を持ってくれたってことだよね?


そ、そうだよね!?


「おお!!!!!」


それがわかった瞬間。体のうちから込み上げてくる感情を抑えきれず、狂ったように叫んだ。


「ど、どうした?急に」


「あ、ああ。なんでもない」


僕は一人で笑っていた。いくらキモいとか思われてもいい。少しだけでも、白崎さんに好かれたのだから。


うーん。でも、なんで僕は好かれたいと思うのだろう?


「どうしましょうか?」


「帰る?」


「そ、そうですよね…………」


「じゃ、俺たちはここら辺で帰るよ。またねーん」


「じゃ、私もー」


と、次々とバカップル、井上さんが帰ったあと白崎さんと僕はまだ、この夜の静けさの中、一言を発しないで静かに黙って立っていた。


な、なにかないのか?


神にすがる思いでインスタントガールフレンドを訪ねた。


「おい!!インスタントガールフレンドっ!!」


「なんですか?今忙しいんですよ!」


「そんなことは知らねえよっ!!どうすんだよっ!!」


「えっと、そこら辺だとまだ屋台とかやってるので、そこら辺に誘ってみたらどうですか?」


携帯端末をポケットから取り出し液晶画面を見ると22:00となっていた。


「こんな時間だけど、まだやってんのか?」


「はいっ!私の情報網はネット以上にありますから」


「す、すごいな…」


「あ、今からいろいろあるので、またー」


「あ、ああ」


ブチッッ!!!!


痛っ!!!!


あいつまたか………


まあ、いいや


「白崎さん!じゃ、僕と屋台とか行きませんか?」


「え?まだやってるんですか?」


「僕の情報網はネット以上ですから大丈夫ですよっ!!」


「そ、そうなんですか??」


首を傾げながらそう聞いてきた。


うわぁー!!!!


クッソかわいいじゃねえかっ!!!


おっと、へ、返事しないと…………


「は、はいっ!」


「じゃ、行きましょうか!!」


そして、僕と白崎さんは山の麓からまた戻って屋台のある場所へ向かった。


「ね、ねぇ。二宮くん着いたら何する?」


「うーん………ついてから考えようかな?」


「そっか………」


やべえ………


白崎さんと二人きりだ。


これ多分他の人から見たら彼氏と彼女に見えてんのかな?


ちょっとの優越感に浸っていると白崎さんが話しかけてきた。


やばい!!!!


変な奴だと思われたか?


「士郎くん!」


「あ、はいっ!!」


「祭り会場着いたよ………って言ってもこれって…………本当に祭り会場?」


「場所はあってますよね?」


「うん………」


僕らがさっきいた場所と全く違う……


これが夜の祭り会場………


いや、違うな深夜のと言うべきか?


さっきの祭りとは別物だ。


というか、これは祭りと言えるのだろうか……


それさえも不明だ。


「ね、ねぇ。これ本当に祭りなの?」


「ぼ、僕もよくわかんない……」


独り身の高校生などが、沢山いた。


え?これって………なに?


「看板見て二宮くんっ!!!」


言い方からして尋常じゃないことだな。と、すぐにわかった。


「なに?どうしたの?」


さっきまでは『お二人以上でのご来場をお願いします』って書いてあったのに今はその文字はなく、代わりにあるのは『お二人組禁止!お一人様に限ります』と書いてある。


え?な、なんで?


今ってリアルが充実してる方に優しい時代じゃないの?


やっといい感じになってきたってのに………なんなんだよっ!!!


「に、二宮くん今日は無理っぽいね…………」


「で、ですね………」


暗く、押しつぶされるくらい重い。まるで海底に沈んだような気分だ。


多分、白崎さんもそうであろう……


「まあ、まだ夏休みは始まったばかりですし、チャンスはありますよっ!!」


「はいっ!また、お願いしますっ!!」


元気にそう言ってくれたのだがやっぱり内面は……


「はい」


「じゃ、また遊ぼうね。士郎くん」


「はい。またー」


クッソッ!!!白崎さんに喜んでもらいたかったのに………


僕は女の子一人。笑顔に出来ない自分の惨めさに劣等感を抱きながら愛車の待つ駐輪場に向かった。

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