第9話

9話


いままで無縁であった女の子と共に僕は電車へ乗って帰る……

白崎さん、井上さんの……いや、女の子の話し声……

なんだか、幸せだ。


「うん…それでしろくまなんだけど………」

「その前にしかりんちょっと待って?」

「はいっ!!」

楽しそうに話していたのにストップが井上先輩の一声によってかかる。

「ちょっと!何よっ!」

井上先輩がジト目を向け、僕に言ってくる。

「いや、なんか楽しくって……」

「犯罪者ってこうやって産まれるのね………」


……………え?

「ひどいですよ。井上先輩」


「で、しかりんどうしたの?」


一拍おいて、井上先輩は話し始める。


え?無視!?

「あのね………」


そして、長々と白崎さんが話し始めた。

5分くらい経っただろうか?

その話を僕と井上さんは聞いていた。


「まもなく、電車が参ります。黄色い線の内側にお下がりになってください」

駅のアナウンスが白崎さんの声を裂くかのように、入った。

そして、電車が来た。

その電車に乗り込み、僕等は4人がけの席に座った。


前からおもってたんだけど、井上さんって小さいよな。座ると足はついてないし、童顔。もう、それはどうしようもなく、童顔。本当に子供みたいだな……

なんて考えながら井上さんをじっーと見ていた。


「なによ?」


「いや、別に………」


「そういうの私は好きじゃないから、言ってよー」


「いや、でも……言ったら俺が逝きそうだから……」


「え?なんの話よ?」


「いや、なんでも……」


「だから、そういうのは好きじゃないって言ってるじゃない。さっさと言って楽になりなさい?」


僕は勇気を振り絞って


「あ、あの……背が低くて子供みたいだなって………」


カッチンッッッ!!!


な、なんの音だ?


おそるおそる顔を上げる……


井上さんの方を見ると、椅子の腕掛けが壊れていた。

「二宮……」


「はいっ!!」


「最後の言葉はそれでいいのね?」


「ご、ごめんなさいっ!!」


やばい!本気で殺される……


「ごめんで済めば警察はいらないのよっ!!!」


そういうと僕に何も言う間もなく殴りかかってきた。


ああ。僕はここで死ぬのか。


目を閉じ、死を覚悟する。


「はい。喧嘩はダメですよ?」


て、天使だ……天使があの悪魔から命を救ってくれた……


「しかりん……でも……二宮がぁ…」


と、悪魔は天使に泣きそうになりながら、訴えている。


「ダメです」


と、きっぱり天使に言われ、身体から力が抜けたように、ヘトン。


「はあい…」


と、腑抜けた声を出す。


後輩に説得される先輩……


「二宮くん?ダメだよ?コンプレックスっていうのがあるんだから、女の子にはね?だから、謝って?ね?」


僕も、天使に説教される。流石。神の使い。両成敗という訳か。


「はい!ごめんなさいっ!!」


僕は天使に説教され、謝る。


「し、仕方ないわね……」


一応許してくれたようだ。


ふう。一件落着っと。


「あの…二宮くん?」


安堵の息をついていると、天使こと白崎さんが話しかけてきた。


「はい?」


「背で思い出したんだけど、二宮くんって背大きいですよねー」


「え?そうですか?」


「はい!何センチあるんですか?」


「えっと、179です」


「おお!やっぱり大きいんですねっ!!私は168ですっ!」


「そうなんですか…」

女の人にしては、大きいとは思っていたが、すごい大きいな……


「私は140……」


「なんかごめん……」


そんな話をしていたら最寄りの駅に着いた。

僕たちは電車から降りた。


「背は小さい人がいいって人もいますよ?」


「そ、そうよね?あ、あんたはど、……どうなのよ……?」


「えっと、背が高くても低くても大丈夫ですよ?」


「そ、そっか…」


なぜかほっとしている……

なんでだろう…


「じゃ、帰りましょうか?」


「うん」


そして、僕たちは帰った。

僕はいつもと同じように、通学通りに、家の車庫に自転車を止めて家に入った。


「ただいま」


……あれ?


いつも帰ったら聞こえてくる声が今日はしない。


「梨花?……あ、そうか今日から部活だとか言ってたっけ?」


服を部屋着に着替えて、リビングでテレビを見る。


「今日、日本では2000にんの赤ちゃんが生まれました」


なんてどうでもいいニュースがやっている。


つまんねえ……


暇だ……


チリリリ!!!


携帯の音楽が急に流れ始めた。


「なんだ?」

おそるおそる携帯を見ると『メールを受信しました』と書いてある。


メール音か……


一年以上聞いてない音だったため、全くわからなかった。


メールを開くと……


知らない人からのメールだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー



件名:今日はありがとう


えっと、白崎ですっ!

初めてメール送るからなんだか緊張するよ~ >_<

ご飯の時はごめんねーm(_ _)m

あとあと、しろくまの所行ってくれてありがとうっ!


ーーーENDーーー



し、白崎さん…か、からの!メールだと?

ふぁぁぁ!!!!

ど、ど、どどうしようっ!?

ま、まずは返信か?

で、でも……どうすれば…

とりあえず僕は返信ボタンを押した。


なんて送ろう?


件名:こちらこそです。


こちらこそありがとうございます!

今日は楽しかったです


ーーーENDーーー


これでいいのかな?

あ、そうだ!インスタントガールフレンドでも呼ぶか。


「はいはーい!呼ばれて現るインスタントガールフレンドですっ!!」


こいつ、でてくる時のセリフみたいのは決まってないのか……


「どうすればいい?」


「えっと、ですね?もっとカラフルにして、ご飯のことについても話してみてください。」



今日は楽しかったです。

ありがとうございます。

ご飯は気にしないでください。

しろくまについては喜んでもらえてよかったです。


“カラフルに”って意味がわからないがこれでどうだろうか?


「どうだ?」


「カラフルがわからない?おや?しろーさん。相当の機械オンチですね?なら、絵文字とか顔文字とか使ってはどうでしょうか?」


「絵文字顔文字?なんだ?それは?」


「わかんないんですか?」


「うん……」


「えっと、このボタンを押して……ほら!いっぱいでてきましたよっ!」


そこにはよくわからない記号が並んで顔みたいになっているやつや、普通の顔みたいなのがあった。


「なにこれ?」


って、顔近っ!!

こいつだって、一応は女の子?だ。性別があるかないかもわからないが、見た感じ、女の子だ。そんなこの顔が近くにあれば、誰だって興奮するだろう。

だが、そんな感情を抑える。


「これが、絵文字ってやつですよ」


「じゃ、どれをどうすれば?」


さっきの文に目にも留まらぬ速さでインスタントガールフレンドは手を加え始めた。




今日は楽しかったです

o(^▽^)o

ありがとうございます

m(_ _)m


ご飯は気にしないでください。


しろくまについては喜んでもらえてよかったです(≧∇≦)


それではまた~(^^)ノシ



と、なった。


「こんな色とりどりにして大丈夫?」


あ、あんなに素朴な文だったのに……あんなになるなんてっ!!


「この現代じゃ普通ですよっ!!」


あ、奴は考えてることが読めるんだったっけ?……


「はい!」


どうやら、そうだったようだ。


「とりあえず、返信しましょう?」


「あ、うん……」


そして、送信ボタンを押した。


ふぅ………


「安心してる場合じゃないですよ?」


「え?なんでだ?」


「だって、返信が来るかもしれないんですよ?なら、もっとドキドキしててもいいんじゃないでしょうか?」


……言われるまで全然気付いてなかったが、返信か。


なんかよくわからないけど、ドキドキというか緊張するな。


「おやおや?士郎さん女々しいですね~。だけど、それも初恋って感じ……いや、違いましたね。二回目ですか~慣れてない感じがまたいいですね~」


「なんの話を……」


チリリリ!!


なんて話をしていたら、携帯がこの場の空気を切り裂くように鳴った。


「メールっぽいですね」


なんて言っているインスタントガールフレンドを無視してメールを開くと………

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