第10話

10話


件名:またお願いします。


はい!また、遊び夏祭りの時にお願いしますねっ!


ーーENDーーー


本当だっ!返信キタァァァァ!!


「よかったですね。士郎さん」


「あ、ああ」


夏祭り……?なんかあったっけ……


夏祭り行こうねっ!なんて会話したような気もするけど、本当に行くのか?あれに行ったら、カップル当然みたいなこの時代で?

あと、日にちは……何も決めてない………


「あれあれ?士郎さん?どうしたんですか?」


わかってるくせに……こいつは全く……


「夏祭りのこと、ほとんどおぼえていなかったんですか?」


僕を見下すように笑いながら、僕を蔑む…………

ドMと言われるやつにはご褒美かも知れないが、僕はそういうので喜んだりはしない。どちらかといえば嫌気が差すタイプだ。


「ああ、そうだよっ!!わかってんじゃねえか……」


「やめてください。バカ菌が移ります」


俺のことをバカにしやがって……絶対に許さねえっ!!


「なんかいいったか?インスタントガールフレンドっ!!」


そういうと僕は鼻歌交じりに、ポケットからサバイバルナイフを取り出し投げ放った。


ピシーンッ!!!!

だが、僕の投げたナイフはインスタントガールフレンドが作った何かの薄い膜のようなものでやつは守られた。


「私のことをなめないでいただきたいですねぇ?士郎さん?」


表情はまだ、あのままである。


「来いっ!!!!」


僕が一言そう言った。


その途端、僕の投げたナイフが槍の形に変形し、その膜をいとも簡単に破った。


「あ、あれはで、ロンギヌスの槍っ!?」


肉を裂くグサッという鈍い音と同時におぞましい悲鳴がこの部屋に響き渡った。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」


「お前の敗因はただ一つ。お前は俺は怒らせたっ!!」


「うぅ……痛いじゃないですか……」


痛いなんて言っているが、外から見ると血どころか傷さえ付いていなかった。


「そうはみえないが?」


「その、ナイフだけは……やめてください………」


「静かにしてたらな?」


「は、はーい……気を付けます……」


僕は投げたナイフを拾いベットに横たわった。


それ以降、インスタントガールフレンドは正座をしている。


あの会話から既に30分は経っただろうか?未だインスタントガールフレンドは正座しっぱなしだ。


やつは負のオーラを周りに撒き散らしている。

ここに居にくい……


自分の部屋なのになんでこんなに不快にならないといけないんだ………


よし、どうするか?……

と、思い僕は携帯のメールの履歴を見始めた。


夏祭り?


あ、そうだった!なんで怒ってたか、思い出したっ!!夏祭りだった!

すっかり怒った理由でさえも、忘れていたぜ。


「で、夏祭りっていつだ?」


「ふぇぇ?あ、はい……えっと、8月2日ですよ?」


と、涙目でインスタントガールフレンドはそう言った。


か、かわいい………


「おやおや?私に惚れると火傷しますよ?」


やつはけろっとして、いつものように笑っている。


「う、うるさい!刺すぞ?」


「すいませんっ!マジごめんなさい勘弁してください……」


「全く、呪文詠唱かよ……」


ようやくツッコミも加えれるようになってきたな………


おっと、いつもこいつと話していて思うが乗せられそうになるな……


「今日は何日だっけ?」


「8月1日ですよ?」


「あ……明日!?」


明日ってことは……服とか決めないと……と、思い時計をみるともう19時を指していた。


詰んだ……


「おや?どうしました?」


「明日の事なにも決めてない……」


「じゃ、明日のことどうにかしないとですよね?」


「あ、うん……」


まさか………


「じゃ、いつもみたいに頼んでくださいねっ!!」


いつもみたいに?そんなに何回もまだ、頼ってないんだが……

だが、何をしなければならないか。くらいはわかっていた。


僕はベットから降りてカーペットに正座をし、メリハリをつけて土下座っ!!!

これ以上綺麗な土下座はあるまい……

そして、畳み掛けるかのようにお願いした。


「インスタントガールフレンド!お願いいたしますっ!」


その土下座をみてやつは少し笑っていたが、そんなことは今はどうでもいいっ!!明日というか未来がかかっているんだっ!!土下座くらい朝飯前だっ!!


「その決意が私は欲しかったっ!ならばどうにかしてあげます。」


プッチーンっ!!!!


そういうと物凄い衝撃とめまいに襲われ僕は倒れた。そのあとに精霊のような小さい光に包まれたということが、なんとなくだが、わかった。


****


「う、うん?」


気がつくと僕はベットの上に横たわっていた。


「はっ!!」


僕は勢いよくベットから起き上がり

状況確認をした。


時間帯は窓から差し込む光がすこし明るいくらいで、多分時間はそんなに経っていないだろう……


何があったんだ?………


「士郎さん!どうしました?さ、早く行かないと白崎さんが待ってますよ」


え?明日は白崎さんと待ち合わせているけれど、


「いえ、今は8月2日ですよ?」


時計をみると8月2日午後5時を指していた。

え?ま、ま、待てよ?服も無いしなにも決めてない……


「ふっふっふ~私を誰だと思ってるんですか?」


「え?頭と名前のおかしいへんな奴だろ?」


「頭はおかしいかもしれないですが、名前は変じゃないですよ。私はこの名前が気に入ってますっ!!」


いつもとは雰囲気が全然違っていた。(口調は全くと言っていいほど変わっていないが)いつもはふわふわと浮いている軽いやつなんだが、今回は雰囲気が全然違っていた。


「そうか、それはすまない」


「わかればいいんですよ。士郎さん。」


「ほら、待ち合わせの時間はもうすぐですよ?」


全くの初耳であった。夏祭り行こうねっ!とは言っていたが、そんなことくらいで詳細なんて皆無と言っていいほどに決めていなかった……そのはずなのだが……


「では、携帯の履歴見てみてください。」


と、言うとやつは僕の携帯を持ってきた。


「ありがとう」


一応お礼をいい、携帯のメール履歴画面を表示した。


ーーーーーーー


件名:明日のことなのですが


明日は待ちに待った夏祭りですねっ!


えっと、明日の予定なのですが、午後5時半くらいから夏祭りに行きませんか?


ーーーーENDーーーー


なんだ?この文は………

送った覚えがまるでないじゃないか…


「まあ、それはそうですねーだって私が送らせてもらいましたから、士郎さんには身に覚えが無くて当然ですかねー」


「じゃ、お前がやったってことでいいんだよな?」


「はいっ!!」


「そうか……」


だが、これだけではだめだ。そう、服がないっ!!


「服はどうなったんだ?」


「クローゼットに似合いそうな服をしまっておきました。」


………………いつもはどこか欠点があるのだが、今回は欠点がない……なんでだ?


と、思いインスタントガールフレンドに目をやる。

いつも通りニコニコしている。


本当に、どうしたんだろうか……


「士郎さん!もう行かないと……」


時計を見たらもう5時10分を指していた。


僕の家から夏祭りの会場までは自転車で急いだら10分くらいでいける距離にある。


対して急ぐ必要もないが、僕はインスタントガールフレンドの選んだ服はどんなのか、という調査も含めて、準備をし始めた。


クローゼットを開けると………


色とりどりの服があり、それは見た感じでもお洒落だなって、思える服ばかりだった。


「どうですか?私のセンスは?

士郎さんに合うような服と同時に人気なものトレンドってやつを抑えて選んだんですよ?」


僕はよくわからないがトレンドってやつを抑えているようだ。


「なあ、いっぱいお洒落なものがあるのはいいんだけど、服ワカラナイ………」


「では、私がこの中で特に気に入った服でいいですか?」


「うん。頼む」


「では、少し待ってくださいねっ!」


「………これと、これにして、うーん……これで…出来た」



僕は何故かインスタントガールフレンドのマネキンになったみたいに鏡の前に立たされ、服がインスタントガールフレンドが指をパチンと鳴らすと…………


何があったかはわからないのだが、服が私服?に変わっている。


「どういうことだ?………」


クローゼットには色とりどりの服がいっぱいあったのだが、今僕の着ている服はすごくシンプルで白いシャツを着てごく普通のジーンズを履いている。


「あの、士郎さんここで、インスタントガールフレンドスタイリストからワンポイントアドバイスですよ。」


少し自分に見惚れていた………自分の顔ではなく、そう服に見惚れていたのだ。


「あ、なんだ?」


「その服長袖ですよね?」


夏だってのに、なにを考えているんだか……


「あ、そうだな……」


「腕まくりをしてみてください」


「うん………」


別に僕はこのままでもよかったのだが、仕方ないから腕まくりをしてみた。


僕はまだそんなに言葉を知らない……だが、これだけは言える。


……………か、かっこいい……本当に俺か?


「では、私はこれで……あとは士郎さん頑張ってくださいねっ!!」


「おい!どこにいくんだ?」


「少し用事が………でも、呼ばれたら雷神の速度で向かいますねっ!」


というと、僕の前から瞬きもいらない速度で消えていた。


僕は確かに目を見開いていたのに……


ブーブーっ!!!


僕の携帯がうるさくなり始めた。


僕は携帯を取り出し一応出た。


「もしもし。二宮です」


「あ、え、えと……二宮くん??今祭りに来たんだけど……どこにいる??」


白崎さんからだった。


うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!

遅刻!?そんなバカな……

と、思い時計を見たら、5時20分を指していた。


「し、しし白崎さん!?すいません今からぶっ飛ばして向かいますっ!!!」


「あ、はいっ!待ってますねっ!」


電話を失礼のないように切ると、僕は家を飛び出し、自転車に乗りぶっ飛ばした。


夏祭りのやっているところに着いた。


ハァハァ………


自転車をこの炎天下の中。飛ばしすぎたかな?


汗だくで息も上がっている……


んなことより白崎さんだっ!!


僕は白崎さんに電話をかけた。


電話をかけたが、応答がない……


この夏祭りはかなり大きいもので、推定だが、東京ドーム3つくらい広い会場だ。


さすがにこの中じゃ探せねえ……


「………士郎くん?」


蝉の声やがやがやとしたノイズが鳴り響く中、僕を呼ぶ声がした。


後ろを振り向くと……………


白崎さんが立っていた。


「あっ!やっぱり士郎くんー」


僕はこのとき言葉をほどの衝撃にであった。


僕の見たものは……

何を隠そう白崎さんの浴衣姿だっ!!


花火柄の黒い浴衣を纏い、大人っぽい色気みたいなものを出している。完全無欠とはこのことを言うだろう。


なんだこれは……可愛すぎる……


「あの、二宮くん?そんなに見たら恥ずかしいよ………」


あ…………


「ご、ごごごめんなさいっ!!」


うつむいている為、表情がよくわからないが多分、恐らく、いや、絶対的に照れている。これは間違えようが無いだろう!!!


絶対僕は鈍く無いっ!!!


「そ、それじゃ………いきましょう…か」


「はいっ!」


こうして僕達の夏祭りは幕を開けた………

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