第2話

2話


「感謝しなさいよねっ!」


確かに、女心なんてわからないしな。ゴミ以下かもしれない……


「な、何よ。黙り込んじゃって大丈夫?」

「いや、なんでも………」

「なんか…ごめん」

「気にしないでください……」

場の空気沈み、周りもそれに合わせるかのように、暗くなっていた。

「あ、そういえばどうして不良みたいなのに絡まれてたんですか?」

彼女は黙り込んで顔を伏せてしまった。

「あ、すいません…」

「いいのよ…別に…」

もっと悪い空気になった…


そこから彼女の家に着くまではお互い黙り込んでしまい、会話がなく、住宅街はまるでなにも無いような静寂に包まれていた。


「着いたわ」


意外と近くに彼女の家はあった。


ん?………この子をじっくり見ていなかったからよくわからなかったが、かなり可愛いじゃねえかっ!!

僕の頭2〜3個分くらい身長が低くて、まるで小学生みたいだった。目は綺麗に青く輝くサファイアのような光を放っている。俗にいうな碧眼ってやつだ。アニメなどではよく見るが、本物に会えるとは思っても見なかった。髪はキラキラと輝く金髪で、ツインテールにまとめている。

そして、まだ幼さが残るというか、幼い、かわいい女の子だ。


先程は暗くて服とかも見れなかったが、全体を見ると、制服が同じであった。

もしかして……

「高校同じですよね?」

と、聞いてみた。


「そうね」

僕の制服を見たのか、同じだと判断したこの子も、そうだと、明言する。

「あの、何年生ですか?」

少女はまた、なぜか怒りながら

「あんたねぇ……女の子に年を聞くの?ふざけるんじゃないわよっ!」

と、大声で怒られた。

「すいません…」

まあ、多分身長的に、今年からの一年生っていっても……少し若いか。なら、飛び級生とかか?本当に小学生と変わりはしない。

「でも、何年生かくらいはお礼として、仕方なく教えてあげるわ。3年よ」

僕はその言葉に驚きを隠せなかった。


「な、何よっ!文句でもあるの!?」


「い、いえ。3年生にしか見えませんっ!!」


「じゃ、今日はありがとう。さようなら」


「いえいえ。さようなら」


僕が挨拶すると、その子は自分の家に入っていった。


よし、送れたし、帰るか。


そして、彼女の家の、玄関ポーチから出た矢先。


ガチャンッ!!!


と、扉が勢いよく開く音がした。


「彼氏さん?」


…………………………え?


僕は目を疑った。先輩?……いや、この先輩とは違う少し陽気なトーンの声。さっきの先輩とは違う。そして、髪型も短髪だし……目も少し先輩より濃い青。かわいい………


「ち、違うわよっ!!大体なんであんなにぱっとしないやつを彼氏にしないといけないの?この私がっ!!!」


さすがにそこまでいわれると結構傷つくな……

「あの、すいません……こちらは?」

「私のお母さんで、井上 陽子【いのうえ ようこ】よ」

「へ、へぇ……」

………二人はなぜかこっちを見てきている。


あ、自己紹介しろってことかっ!


僕は軽く自己紹介を済ました。


なんなんだ!?このロリ遺伝はっ!!お母さんもロリじゃねえかっ!!!!


そして、自己紹介が終わると、また話を掘り返してきた。

「で、彼氏?」

いや、さっききっぱりないって言われたんですけど!?

「い、いや……違います」

「そっかー残念」

と、少し落ち込んだ井上母。

でも、すぐに話題を変えてきた。

「夕飯食べていかない?」


………見知らぬ女の子の家でお世話になるのか?これはいくらなんでも、ダメだろ?僕は断ろうとしようとした時、井上先輩が、

「食べていきなさいよ、ママもそう言ってるし…」

まあ、この人が言うなら、食べて帰ろうかな?

「じゃ、お邪魔します」

すると、彼女が

「いらっしゃい」

と言ってくれた。

僕は、ダイニングに案内され、席に着いた。

「今日は、ママ特製ハンバーグなんだー。貴方は運がいいわね。」

彼女はすごく嬉しそうだった。

「そうなんですか!それはおいしそうですね」


そうこうしているうちに、彼女のお母さんの手料理がテーブルに並べられた。


僕の前には、大皿にハンバーグ、お客用のお茶碗の中には白い白米。そして、サラダなどが並んでいた。

「召し上がれっ!」

「ありがとうございますっ!」

「頂きまーす。ほら、あんたも食べなさいよ」

僕の横でハンバーグを箸で切って上品に食べる井上先輩。


「いただきます」


と、同時に合掌すると、箸でハンバーグを掴もうとした。

だが、全く持ち上げることができなかった。箸で切れるくらい柔らかく、その切れ目からは肉汁が溢れ出し来ていた。


やべえ……うまそう。


切ったハンバーグを口に運び口の中に含んだ、瞬間。ハンバーグという概念が、僕の口から居なくなった。


え?


たまらずもう一口頬張る。


ハンバーグが口の中でとろけていく…


なんだこれ……


「美味しい!!」


あ、言葉として出てきてしまった…


「美味しい?よかったー」

と、微笑んでいる井上母。

「でしょ?」

と、なぜか自慢げな井上先輩。


そして、いつの間にかハンバーグは無くなっていた。お腹いっぱいだ。


「「ご馳走様でした」」


「お粗末様でした」

と、お母さんが言うと食器に手をかけた。

「あ、片付けますよ」

すかさず、僕も手伝う。

「お、ありがとう。士郎くん」

「いえいえ。こちらこそありがとうございます」

しばらくして、片付けも終わり、僕はバックを持って、帰る準備を整えていた。

「あ、もう帰る?」

と、お母さん。

「はい。長居は良くないと思うので」

「そっかー。渚はちょっと変な子だけど、仲良くしてやってね」

そりゃ、そうだ。だって、お風呂に入っちゃうんだもの。

「あ、はい」

「じゃ、またね」

「はい。お邪魔しました」

と、言うと彼女の家から出た。


****


あの子最初は変な人だと思っていけど、かわいかったな。

と、そんなことを考えながら帰った。

彼女の家は結構近所ですぐに僕の家が見えてきた。

僕の家は、どこにでもあるような一戸建てのごく普通の家だ。


「ただいま」

「あれ?お兄ちゃん遅かったね」

奥の方の部屋。ってことは、リビングあたりから声がする。

「お前今日、部活じゃないのか?」

長年一緒にいる声だ。わからないわけがない。

「それがねー。無くなったのっ!!」

「そうか」

奥の方かフリフリのエプロンを着て出てきたのは中学生くらいの女の子だった。

指でVサインを決めて笑顔っ!!!

お前はなんだ?アイドルか?


いや、アイドルにいてもおかしくないな。さすが僕の妹っ!!

僕とは全然違うな。


そして、陽気なこの性格もあり、学校では結構人気があるらしい………


僕はリビングに向かい、いつも通りに白いソファに腰を下ろし、どうでもいいテレビのニュース番組を見始めた。


だが、僕はただテレビを見ていた訳ではない。というか見ていないっ!!

なんで?そりゃ、今日二人の女の子と話せたんだぞ?テレビなんて見てらんないよなっ!!!


脳内はお祭りさわぎである。


「どうしたの?お兄ちゃん?ニコニコしてなんか……気持ち悪いよ?」


考えていることが顔に出ていたらしい。


「いや、なんでもないよ」


気持ち悪いと言われたがそんなのは学校、家、いろいろなところで日常茶飯事のため別に気にしなかった。


「そんな話はあとにして、お兄ちゃん!今日は女の子と話せたのかな?」


ニコニコして聞いてきた。

毎日こんな感じだ。

「今日は少し喋れたよ」

「おお、よかったよかったっ!

お兄ちゃんに彼女さん出来たら、梨花も、一安心だよ。」

「お、おう。ありがとな。」

「あ、お兄ちゃんご飯あるけど食べる?」

「今日は、知り合った女の子の家で、食べてきたからいいよ」

その時、僕の全身に電撃が走ったっ!!!

や、やばい!!

「おやおや?お兄ちゃん…ご飯食べた?誰とかな?」


異様なオーラを放ちながらそう言った。


まずい!!!逃げないと!!


野生のかんか何かが働いて僕の体はリビングから出れる扉を目標に走り始めた。


「お兄ちゃん。どこにいくって言うんだい?今日は朝まで寝させはしないよ?」


あと一歩と言ったところで妹が不敵な笑みを浮かべながら、その扉の前に仁王立ちし、その扉の鍵を閉めた。


言ってることとやってることが矛盾してんじゃねえかっ!!


口では彼女作れとか言うくせに、行動では作るなっ!ってか?


と、叫んでやろうっ!と決心したが、僕は妹の顔をみて恐怖を覚えた。


こ、こいつには叶わねえ………


そして、今日起きたことを全て話した。

「ふーん、まあ、お兄ちゃんの女の子に対する拒絶酷いもんね。なんか、怖がってるというか…………」


今、妹に恐怖しているがな!!


拒絶……か……

「じゃ、風呂入ってくるな」

「じゃ、梨花は風呂は入ったし、もう寝るね。お兄ちゃんっ!!」

「おう」

僕は風呂に向かった。

僕は風呂では嫌な思い出が思い出されるばかりで嫌な場所の気がしてたが、今日ばかりは、幸せだった。


でも、僕はそんなに言われるほど、拒絶しているだろうか?


今日は、楽しかった。

ぱっと風呂を済ませて寝ることにした。


僕は風呂場から出ると一旦リビングに戻り、牛乳をコップに入れ一気に飲み干し、2階の自分の部屋に行って

ベットに横たわった。


疲れていたのだろう。僕はベットに横たわるとすぐに眠りについた。


****


ジリリリリリリ!!!


目覚まし時計がうるさくなった。


「………も、もう朝か」

僕は見慣れた天井を見上げていた。

「トントン」

ノックの音が聞こえた。

「お兄ちゃん朝だよ。」

「ああ、起きてるよ」

僕はベットから降り、1階のリビングに向かった。

「あ、お兄ちゃんもうすぐご飯にするねー」

「おう、ありがとな」

親はいつも家にいない。その為、小さい頃から、妹が朝ごはんを作っている。

「ご飯注ぐね」

「目玉焼き出来たよっ!お兄ちゃん」

「おう、じゃ、いただきます」

「どう?今日は美味しくできたと思うんだけど…」

目玉焼きは半熟でトロっとした黄身が溢れてきて物凄く旨かった。

「うん、美味いよ」

「よかった」

「あ、もうこんな時間早くお兄ちゃん行かないと…」

ふと、時計をみると、もう普通ならとっくに学校に着いている時刻になっていた。

やばい、遅刻する。

「じゃ、いってきます。」


僕は即座に片ずけて学校に向かった。


僕は自転車に颯爽と乗り込み、風を裂くかのように思いっきりペダルを回した。


学校前にたどり着いた。


チャイムが鳴り響き、僕の皆勤賞はどこかに消えていった。


まだ、ホームルームの時間なので、どうにか『とっくにここに居ましたよオーラを出していれば大丈夫かもしれない』と、思い僕は忍びのようにするりするりと自席へ向かった。


「二宮さんなにしてるんですか?」


ギクッ!!!


と、全てを見透かしたかのように担任は黒板に文字を書きながら言ってきた。

や、奴っ!!後ろに目でもついてんのか!?

「すいません」

「なんで遅刻しちゃったんですか」

「えっと…朝の準備で手間取って…

すいません」

「そうですか。次からはしっかり来てね」

ふと、周りを見渡すとクラスの人達がクスクスと笑っていた。

僕はそんな光景を見て今置かれている状況に気がついた…

僕は、誤魔化しながら席に座った。



「だ、大丈夫ですか?」

昨日隣になった白崎さんが話しかけてきた。

「大丈夫です」

「そうですか、それは良かったです」

普通の人にはごく普通のやり取りなのかもしれないが、僕には嬉しいことだ。


僕は自席から外を眺めながら、なんとなく授業を受けていた。


「ここ、テストに出るぞー」


数学の教師がそう告げた。

……はっ!

テストだと?

すっかりテストのことを忘れていた。

高校2年となるとまあまあ難しい問題だったり、いろいろででくるが、僕は比較的頭のいい方だから大丈夫であると思うが、学校が終わったら、とりあえず家に帰って少し復習しようか。

「今日はここまで」

チャイムと同時に先生が終わりを告げた。

「あ、あの…」

白崎さんが話しかけてきた。

話しかけてきてくれた!?

僕は極力普通に見えるように、普通に答えた。

「なんですか?」

「二宮さんって頭の良かったですよね?」

「普通よりは少しいいくらいですが…」

「あの、すみませんがお勉強教えていただけませんか?」

うん?これってなに?お勉強デート!?


いやいや、まさかな。僕なんかはただの先生位置でどうせ、彼氏といちゃいちゃしてるのを僕に見せつけるつもりだろ?


そんなん知ってんだよっ!!


「じゃ、場所は図書室でお願いしますね?」


「は、はい!」


場の流れのままに承諾してしまった……


まあ、いいか。勉強教えるのは楽だしな。


なんて安堵して、次の授業の準備をしようとしたが、クラスのみんなは仲のいいやつらで集まり、机をくっつけ、弁当を広げていた。


……あ!昼休みじゃん!!


僕は、昼休みにやると決めていた、インスタントガールフレンド探す。

目的は、お礼をするだけ。

そして、廊下に出ようとした時

「お、士郎さんどうしたんですか?」

と、後ろから、声が聞こえた。その声のした方を向くと、インスタントガールフレンドがいた。

「お、おう。昨日は、ありがとうな」

若干驚きつつ、僕は返答する。

「いえいえ、インスタントガールフレンドとして当然の事をしただけですよっ!」

しかし、なぜ、インスタントガールフレンドは、いつも変な所からでてくるのだろうか?

前は先生が教室に入ってくるときに一緒にはいってきてみたり、昼休みが終わり、教室に戻ったときに僕の席に座っていたり……

あいつは何者かわからない。謎だらけだ。


放課後になり、僕は、白崎さんと二人きりでテスト勉強をするはずだった…

白崎さんが待っていたが横に何故かインスタントガールフレンドがいた…


「ここ教えて」

「ここはこの公式を使ってこうすれば、ほらね簡単でしょ?」

「あ、ありがとう」

「ね、ねえ。あ、あの言いにくいんだけどね…あのね…」


…………的な展開を期待していた僕は少しやる気を失った…


「あ、あの二宮くん。大丈夫?ぼーっしてるけど…」

「あ、はい大丈夫です」

僕は白崎さんの隣に座る。


「あの、白崎さん?なに教えればいいですかね?」

……返事がない?

うーん。どうするかな。

白崎さんも自分なりに考えてるのか。よしよし、ならば、ここは黙って見守ろう。

「わからない問題あったらら言ってくだいね」

と、一言だけ残し、僕もノートを振り返り、勉強する。

「あの、二宮くんここの問題わからないんですが…」

「あ、ここは、この公式を使ってこうすればいいんですよ」

「おお、ありがとうございます。

二宮くんは教え方うまいですねっ!」

と、にこやかに白崎さん。

「そうですか?白崎さんの理解力がいいからですよ」

「いえ、私は頭悪いし、なんの取り柄もないし…」

「ねえねえ、士郎さん」

インスタントガールフレンドが話しかけてきた。

「なんだよ?」

「ここは漢の見せ所じゃないんですか?漢字で書くと、漢字の漢ですよ~そう!まさに漢のなかの漢ですよー」

「わかったから…」

「今、こんなに美人が自分のことで悩んでるんですよ?ならここは好感度を上げるにはもってこいじゃないんですか?」

なにを言いたいんだ?こいつは。

「インスタントガールフレンドさん。よくわかんないんだが…」

「だから、ですね?女の子が悩んでるんですよ?助けてあげましょうよ~士郎さん」

「もう、それはわかったから、なんて言えばいいんだよ」

「あれあれ?士郎さんそんな頼み方でいいんですか?」

こいつに頼み事をしたい時などは、頭を下げたりしないといけないようだ。

「くっ………お願いします。なんて言えばいいですか?」

僕はなんでこんな奴に頭を下げなければならないんだ?と、ひどい屈辱感に襲われながら、僕はしぶしぶ頭を下げる。

「よろしい、なんて言えばいいか教えてあげましょう。”そんな事ない、そんなにかわいいんだからもっと自信持って下さい!”

と、言えばいいんじゃないんですか?」


信じるしかないんだが、なんか違うような気がする…

「うーん…それでいいんだな?」

もう一度訊く。

「はい!」

満面の笑みで彼女は言ってくれている。

いちいち頭を下げているが、彼女には何度も助けられている。

僕が少し違うと思っても、彼女はいつも正しかった。

ならば、自信を持って言ってみるしかないじゃないか!

勇気を振り絞って言うしかないっ!


「そんなことない!そんなにかわいいんですから、もっと自信持って下さい!」

白崎さんは少し戸惑っていた。

「か、かわいくなんてないですよ。もう、からかわないで下さい!も、もうそれ以上からかったら怒っちゃいますからねっ!」

と、言いながら赤面の白崎さん。

か、かわいい。

僕は、どうすればいいかわからなくなってしまった…

インスタントガールフレンドに助けを求めてみたら、もっと押せ!みたいなジェスチャーをしていた。

「からかってなんてないですよ、ただ僕は本当の事を言っただけですよ」

「も、もう怒っちゃいますよ?」

「こんなんで好感度あがるのか?」

心の中で訊く。

「はい!私の好感度レーダーがビンビンになってますよっ!」

パッと見た感じでは、どこも変わってる感じはなかった。

「ど、どこだ?」

「嫌だなぁ…しろーさんこのエッチ」

「え…」

「私のスイッチ、いれるつもりなんですか?」

「待て待て、なんの話だ?」

僕は全く理解出来ていなかった。

「冗談ですよ冗談、もうしろーさんは全く冗談が通じなくて困りますよ」

「なんだって?」

少しいらだって、僕は席を立ち、やつの方まで行くと、ポケットにあったサバイバルナイフで刺してみた。

「う、痛いですよ。しろーさん」

人にみえない幽霊みたいな存在だが、有効だった。

「もう一回、刺されたいか?」

「い、いえ結構です…」

「なら、しっかり教えろ」

「うーん、テストの話にでもすればいいんじゃないんですか?」

「あ、そうか」

この時に僕はここで何をしていたのかを思い出した。


そう、テスト勉強をしていたのだ。


テスト勉強のついでにインスタントガールフレンドのしつけ方も出来るなんて素晴らしいっ!!


「あの、なんでナイフもってるんですか?」

「あ……これはですね?なんとなく出したくなって…」

「だ、大丈夫ですか?」

白崎さんは、そこに獣でもいるんじゃないか?ってくらいの表情でこちらをみていた。

「大丈夫ですよ」

「そうなんですか…」

「しろーさん、好感度が下がってきてますよ?」

「待って?なんでだ?」

「そりゃ、怖いんじゃないんですか?」

「また、刺してやろうか?」

「い、いえもう勘弁してください」

好感度が下がったのは、はっきり言ったらこいつのせいだ。

「そ、そんな事より、これ以上会話続けないともっと下がってしまいますよ?」

畜舎!こいつのせいなのに、なんでだよ…

だが、こいつに切れていても仕方がない。今は、切り替えろ。うーん………なんの話しようか。

僕は周りを見渡し、話題を探す。

あ、そうか。テストじゃん。

「あ、そう言えばテストまであと何日でしたっけ?」

「え、えっと。少し待って下さいね。うーんと…次の月曜日からですよ」

「あ、そうなんですか?ってあと3日しかないじゃないですか」

「あ………」

ガラガラガラ…

と、図書館の扉が開く。

「あなた達、もうこんな時間よもう帰らないとダメよ?」

担任の律先生だ。

時計をみるともう午後7時をさしていた。

「じゃ、帰りましょうか白崎さん」

「あ、はい。ありがとうございました。」

僕は二人きりで昇降口に向かった。

さっきは、インスタントガールフレンドがいたので、二人きりではないと思えて、あまり緊張しなかったが、二人きりに実際なってみるとかなり緊張して、もう、爆発寸前だった。

「あ、あの」

白崎さんが話しかけてきた。

「どうしました?」

「あの明日時間ありますか?」

明日はどうだろう?なにかあったかな?と思い、情報端末のカレンダー機能を見てみたが、なにも記入されていなかったので、多分明日は家でダラダラする予定のはずだ。

ってことは暇なのか?

うーん…暇ってことでいいのか?

僕は少し考えてみた。

家でダラダラするってことは最高のことである。

なんにもしないでただニートみたいに寝てダラダラする……こんなにも幸せなことはあるだろうか?

あ、考えているときに、白崎さんに用件を聞き忘れていたことに気づいた。

「あの、白崎さん明日なにかあるんですか?」

「えっと、明日暇なら勉強教えてもらいたいなって、思っているのですが……で、でも明日二宮さんが暇じゃないなら……大丈夫………ですよっ!」

白崎さんは、僕を尊重して、他人行儀に、そう言う。

そんな気遣いのできる子と、一緒にいれるんだぞ?なら、迷う事なんてないっ!!

「暇です!暇じゃないなんてありえません!てか、どんなことがあっても暇にします!」

あ、言いすぎた…

彼女は少し驚いていたがニコッと笑みを浮かべて言った。

「はい!楽しみにしてますねっ!」

「は、はい」

昇降口で靴を履き替え、白崎さんと共に帰った。

「白崎さんは家はどこなんですか?」

「えっとコッチです」

僕と同じ方向だった。

「おお、僕と同じですね」

「では、途中まで一緒に帰りましょうか?」

「はい!」


そして、僕らは二人きりで、歩いていた。

他の人から見れば、彼氏彼女に見えるかもしれないが、全く、そういうことではない。友達ですら、怪しいのに。というか、僕はこの人とどうなりたいんだろうか?全然わからない。


あ、明日のこと全く考えていなかったことを下校中に気づいた。

「明日なんですが、何処に集合しますか?」

「えっと、私の家?」


な、なんだってぇぇぇ?


「白崎さんの家で大丈夫なんですか?」

感情を押し殺して…疑われないように訊いた。

彼女は満面の笑みで、

「はい!私の部屋でいいのなら大丈夫ですよっ!」

「ごめんなさい。図に乗りまし………」

ん?って、ほう。白崎さんの部屋で、二人きりなのか?

お、おいおい待て待て!

いま考えただけでも緊張してしまう…

こんなんで、大丈夫なのか?

で、でもあれだよな?どうせ勉強しかしないんだし、大丈夫だよな?というか、緊張する必要ないんじゃないか?多分、大丈夫のはずだ。

「二宮くーん。大丈夫?」

呼び方が変わっていたが、そんな事はどうでもいいっ!!大丈夫なのか?

「にのみやくーん」

「は、はい」

声が裏返った…

僕はいまなにかがやばい。なにがやばいかなどはわからないがとにかくやばいんだ。

「だ、大丈夫?二宮くん」

白崎さんが心配してくれているんだぞ?

大丈夫に決まってる!緊張はするけどまあ、大丈夫のはずだ。

今、パニックに陥っても、意味がない。明日にならないとわかるはずがないんだ。

と、考えだした僕はとりあえず冷静になり、どうにか正気を取り戻した。

「だ、大丈夫です。」

「そうですか、良かったです。」

ふと、疑問が浮かび上がった。

「あの、白崎さん。僕、白崎さんの家知らないんですが、何処か、教えてください」

「はい。えっと、うーん。じゃあ、私の家に行きますか?」

「はい」


それから白崎さんと話しかけたかったが、何を言えばいいのか?話しかけた後どうするか。などを考えていたら、彼女の家に着いしまった。


結構ご近所さんだった。

「少し遠いですか?」

白崎さんが心配そうに聞いてきた。

「いえ、どちらかと言うと近いですかねー」

「そうですか、よかったです。遠かったら、迷惑かけちゃいますからね」

と、笑顔で言ってきた。少し見惚れてしまいそうになったが、なんとか大丈夫だった。

「家の場所はわかったので、帰りますね」

「はい、また明日ー」

彼女とは、家の前で別れた。


明日が楽しみだな。

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