-白黒の騎士-
◇1
白と黒の翅と少しの毒を持つ蝶が数えきれない程生息している村がノムー大陸に存在していた。蝶以外に名物と言えるモノはなく観光客もドメイライトへの通過点としてこの村へ立ち寄り蝶の姿を見て楽しんでいた。
それがワタシの産まれた村で育った村で、10年前ドメイライトとデザリアの戦争で消滅した村。
村人達の避難命令もなく突然眼の前で両国が殺し合いを始めた。何十人もの村人が巻き込まれ命を落とした。
どうにか逃げ隠れ、生き延びた者へドメイライト王が吐き出した言葉に温度はなかった。
小さな子供も沢山いて住む場所もない村人達へ1人の騎士が仮設村を提供してくれた。
大人達は感謝し、そこで暮らし始めた。
どこの誰かも知らない人間に餌を与えられて、その人間に媚売りすがり付く大人達が嫌いだった。
ワタシ達は数十人で仮設村を抜け出した。行き先は元の、ワタシ達が住んでいた村。
戦争に巻き込まれてからたった数週間。そこには何も無かった。
家もお店も畑も、蝶も。
そこには始めから何も無かった。と思える程綺麗に消されていた。
心の中心が大きく抉り盗られる感覚と吐き出し様のないドロドロとしたモノがワタシの胸を焼いた。
涙も出ない中で見つけたのは蝶が生息していた痕跡。
白黒の蝶ではなく、その姿を見る事が出来たら幸せになれる。と言われていたアゲハ蝶...マカオン。
綺麗な水色の蝶。
幸運幸福を運ぶ水色の蝶が今力なく地面へ落ち、その命を終わらせた。
見た者は幸せになれる蝶。
そのハズだったのに。
この日、仮設村にいた村人達が消えた。
残されたのは村を抜け出していたワタシ達数十人。
騎士団が生き残った村人達を素材に、人工的に 魔結晶を作り出しその力を使ってデザリアとの戦争に勝利した。
勝利を喜ぶドメイライト。
ワタシ達もドメイライト領土の人間なのに。
ワタシ達も同じ人間なのに。
キミの姿を見た人は幸せになれるんじゃないの?
キミはどうしてもう翔ばないの?
ごめんね。ワタシ達はキミみたいに眩しくはなれないみたい。
3年後にワタシはドメイライト騎士団へ入隊した。
幸せを運ぶ蝶、名前は...、
ワタシ達は幸せを壊す蝶。
ワタシは
この日から自分が2つに、2色に別れた。
ドメイライト騎士団 ヒロ。
ギルド ペレイデスモルフォ マスター マカオン。
白のワタシはドメイライトを守る為。
黒のワタシはドメイライトを壊す為。
この街に降りそそいだ甘美な鱗粉を消し飛ばす為にワタシは翔ぶ。
与えられたモノじゃなく、自分達で得たモノ。
それがきっと 本当の 幸せだから。
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