霊関係の話④ 周囲もたいがいな話
霊能者の近くには霊能者が集まりやすいのかも知れません。そして、私自身がまったく怖がっておりませんので、たぶん、私にホラー小説は書けませんね。
ここまで何例か書いてきたものの、どうやって怖がれというのか、読んでる読者も戸惑ってしまうに違いありません。これをホラージャンルに入れたらお笑い種もいいトコでしょう。
けど、書いてる時は尋常でなく肩が重いのです。いや、痛い。乗っかるな、という感じです。書き終えて公開ボタンをポチするとスーッと消えます。自分の噂話をキャッチして飛んでくるんでしょうかね、霊だけに。
おまけに何故か、忘れていたアレやコレやのエピソードが次々と浮かんできます。おそらく「これも書いてくれ、」「これも、」「こんなのもあったよ、」という具合にお節介を焼いてくれてるのでしょう。忘れっぽい私の為に。
こういうのもあって、霊に関するアハ体験はあんまり書きたくないんですが。
周囲で聞かれたのも、どちらかと言えば笑い話の類です。霊能者の先輩にしても、友人たちにしても、旦那にしても、親族の体験談にしても、どこかコミカルでとても怖がれたもんじゃないんです。
さして怖い目に遭った事がないというべきか……死神は例外として。
旦那は某拘置所勤務ですが、そこの庁舎は「出る」んですよね。だけど、表向きは出ないことになっているそうです。人権団体に知れると面倒くさい事になるからだそうです。
夜中になると、職員が見回りで歩くそうなんですが、その時に一つ足音が多いんだそうで。職員たちは慣れたものなので気にしないそうですが、収監されている方のうちには、聞こえてしまう人も居るらしいんですね。
で、その人はもちろん騒ぎ出します。
「あれ、見えてますやろ、幽霊ですやん!」
「(じっと目で追ってから)……いや、何も見えない。」
「嘘ですやん! 今、目で追ってはったやん! 見えてますやん!」
「いいや、何も見えない。お前の見間違い。何も見えないし聞こえないよ。」
「聞こえてるんですやん! わし、何も言うてへんで、足音するとか!」
「足音なんて聞こえない。何も見えない。」
で、押し通すそうです。
秘守義務あるんで本当は書いたらヤバい物件なんです、これ。別の意味で。内緒でお願い致します。
次は、高校時代の友人の話。
友人は当時、団地住まいでしたが、そこも出ましたそうな。ただ、友人はポルターガイストだとか霊現象といった言葉は知っていても、どんな状態を指すのかはあまり解かっていなかったそうな。
で、自分の家のトイレに入ると必ずガタガタドンドンと騒音がし始めるのも、なんかそういうものだと思っていて別段気にしていなかったそうです。
毎度のガタガタドンドンにも、ちゃんと対処法があって、
「うるさい!」
と、怒鳴りつけるとピタリと止むんだそうです。
「それ、ポルターガイストじゃないの?」
「あっ、そうなんだ。あれがポルターガイストか~。なんかイメージしてたのと違うなぁ。」
なんて暢気な事を言っていました。だいたい命の危険なんてのは無かったんです。だから余計に怖がれない。
もう一人の友人のケースも似たものです。友人の家に遊びに行った時ですが、なんとも言えない心地の悪さを感じました。何か篭っているような感じです。
浮かんできたイメージは、三面鏡でした。それと赤いカバー。
「この家に三面鏡あるでしょ? カバー掛かってないやつ。」
「うん、あるよ。奥の間に。死んだお母さんが使ってた奴だけど。それがなに?」
「カバーしといた方がいいよ。気になるんだって。」
「ふーん、解かった。そうしとくよ、ありがとう。」
こんだけ。お互いに今日のお天気みたいな口調で淡々と話してましたね。
さほど夏向けの怖い話もないんですよねぇ。後は、坂本竜馬とお竜さんとのエピソードで有名なお宿、寺田屋さんですかね。
その日は、ちょうど客もなく閑散として、宿の二階には私と旦那しか居ないという状況でした。なんせ竜馬ツアーの聖地みたいな場所なんでそんな日は珍しい。
で、私は竜馬が書いたという書簡を見上げていました。達筆なのか何なのか解かりませんが、へー、これが竜馬の字かぁ、なんて思っていました。斜め後ろには同じように旦那が見上げていて、なぜか懐かしそうにしています。
「これ、巧いのか下手なのか解かんなくね?」
そう言って私が旦那の方へ振り向くと、そこには誰も居ないんです。旦那は隣の部屋の、例の血飛沫の屏風を熱心に見ております。
「おーい、」
「なに?」
「いつの間にそっちに行った?」
「いや、ずっとこっちに居る。」
じゃあ、さっきの大男は誰だ。
旦那は180センチ越えてるんですけど、当時はまぁそんなに見かけない大男ですよ。今でこそ180なんて普通だけど。試しに聞いた竜馬の身長も180あったんじゃないか、という話ですが、もちろんアレが竜馬だったなどとは申しません。
竜馬ファンが死んですぐに竜馬ツアーを断行してたのかも知れませんし、お宿ゆかりの御家族の誰かかも知れませんから。
視えないってそういう曖昧さが付きまとうんですよねぇ。
最後に、もっとも印象深かった二つのエピソードで霊関係の思い出は終わりたいと思います。
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