お調子者

おしゃべりマシーン

 B型のBは、バカのBである。

 そんなことはない。他の血液型にだって、バカはいっぱいいるはずだ。

 

 B型の性格として、『お調子者で、お祭り好き』というものが挙げられる。

 果たして本当にそうなのだろうか。

 

 共働きの両親のもとに生まれた私。家族に話を聞いてもらえる機会は、夕食の前後の限られた時間だけだった。

 私はその日あった出来事を語りつくした。

 親からは、『口から生まれたおしゃべりマシーン』と呼ばれた。

 少しでも興味を向けてくれるように、オチもない日常の話を盛りに盛りまくった。時には実際には起きなかったことまで嘘をついて話していた。必要があれば友達も悪役になる。会話の中で私はヒーローだ。


 父や母が好きな歌を覚え、披露した。

 親族が集まる場で一番小さかった私は、大人の群れの中で一丁前に会話に参加して、褒めてもらったり喜んでもらえるよう何でもやった。


 しかし、小学校での私の立場は、一般的に言われるお調子者ではない。

 家と学校では勝手が違う。バカなことをやって笑われるのは、男の子ばかり。女の私がやっても、はしたないと軽蔑されるだけだ。

 私は考えた。誰よりも注目を集め、人気を取る方法を。

 そうだ。いつも両親に話している私はヒーローなんだ。だったら実際にヒーローになってしまえばいい。

 思春期の男女というものは、衝突が絶えない。

 男の子がちょっかいを出し、女の子はイヤがる。

 そこで間に入るのが私。

 クラスに一人はいたであろう、『男勝りの女の子』だ。

 女の子たちは私に助けを求め、私は男の子に果敢に立ち向かう。ある時は暴言を、ある時は飛び蹴りを食らわせて撃退してやった。

 こうして私は男の子に一目置かれる強い女であり、女の子には頼れる友達の座を手に入れた。

 

 と、思っていた。

 この頃の男女というものは、お互いを意識しまくっている。

 素直になれない男の子は、どうやって気を引こうかとちょっかいを出す。女の子は嫌がるフリをしながら、自分が女であることを最大限にアピールするのだ。

 てっきりそれを本気のやりとりだと勘違いして、ヒーロー気取りで割って入ってくる。なんと空気の読めないヤツだろう。


 こうして私は間違った地位を手に入れるハメになった。

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