第9話 転勤族

それじゃぁここらで転勤とか引っ越しの話をしようか。


私が引っ越しをしたのは全部で8回。

いや待てよ、どんな短い滞在も含めていいなら(2週間以上の)、多分、10回?ぐらい?


そうすると馴れてくる。

なににかって言うと、荷造り。というか、荷造りとか公共料金とか公的書類の手続きを淡々とこなすことに。

一切感情が湧かない。センチメンタルにもならない。ただサクサクこなす。無表情だ。実際の顔はともかく、心の中では無表情だ。とにかく、目の前のブツを片付けるだけだ。箱に入れたり、名前と住所を何回も書いたり、「少々お待ちください」の言葉の後の保留音楽を待ったり。


それでもまぁ大変だったのは関西へ行くときだった。

なんせ全然文化が違う。

どれくらいちがうかって言うと、着任して2週間目にお客さんから電話で


「オレは関東弁の奴とは話せへんねん。電話かわれや」


と開口一番いわれたぐらいだな。

あと、同じ社内の人から


「関ヶ原は越えられへんのです!」


と言われたのと同じぐらいだな。

あと、飲み会の最後は必ず阪神タイガースの歌をうたって〆るのと同じぐらいだな。

それくらい、あそこは、異文化だった。し、合わなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る