第2章 借りとツケ

第1節 一人きり

 一人きり。


 暗闇の中。


 俺はただひたすらに思考する。


 ふとそのとき、耳元に声が届く。


「よう、兄弟。進捗はどう?」


「まったくだな。お前はどうなんだ?」


「全然駄目。尻尾さえつかめない。分かってたことだけどね。時間が経つのを待つしかないよ。ぼくらは時間は気にしないってのに、向こうの出方を待つしかないなんて滑稽だとおもわないかい?」


「分かりきっているならば、わざわざ俺に訊いてくるな」


「まぁそう怖いこと言いなさんなって。俺とお前の仲じゃあないか。いつもの自己嫌悪かい?」


 そう。


 時間は全ての人に平等である、とそう人間たちは言っている。


 だが、それは人にとって。


 あるいは大半の神にとって平等であるだけだ。


 例外はいつもある。


 はっきり言っておくが時間は有限じゃない、無限だ。


 他の人には全く理解されないことも分かっている。


 だが俺が証言し、また俺が賛同することでそれは真実になる。


「自己嫌悪……そうかもしれないな」


「珍しいなぁ。きみがあっさりと認めるなんて」


「俺はいつでも寛大だ。それに、俺は『俺』の言うことには耳を傾ける必要がある」


「ははは、きみらしいなぁ」


 その声の主は笑う。


「なんでそんなに他人行儀なんだ。」


「それはきみが嫌いだからさ。しょうがないじゃん。でもきみの言う通り、ぼくはきみのことを無視することはできない。だからこうやってきみの意見を訊きに来たんじゃないか」


 一人きり。


 暗闇の中。


 俺はただひたすらに思考を続ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る