テレレレッテレ~~

 押忍!!男の中の漢。名は学。36歳です。いろいろありましたがサラが無事で本当によかったと思っています。


「ガク。ほら」

「ウオゥ!!」


 いきなり物を投げないでよ!!ビックリするじゃないか!!


「何ですか?これ」

「あぁ。お前は見るのは初めてか」

「ん?」

「それが身分証だ。良かったな」

「おぉこれが身分証!!カッコイイ!!」


 鉄の小さな板だが。なんも書いてない?


「まだ何も刻印していないからまっさらな状態だ。その状態で闇市で売れば三十万はくだらないな」

「売らないですよ!!」

「まさか、お前がこの街に住みたいだなんてな?」

「え?俺、この街に住まないですよ?」

「……。身分証ってのは知ってるか?」


 どうしたんだろうか。


 今、朝の朝食中。皆が食事を止め俺を見ている。え?お前何言ってんの?みたいな目だな。


「身分証って街に入る為に必要なんですよね?」

「……身分証と証の違いは?」

「え?証って何ですか?」

「「「「……」」」」

「あ!!……お前に証と身分証の話をし忘れた!!」

「「「「…………ボス、スミスさん」」」」


 皆が呆れている。ん?俺の所為か?


「ガクさん。身分証と言うのはこの街の住人の証を保証する物です」

「え……そうなの?……証って?」

「はい。……証と言うのはこの街には住みはしませんが、門をスムーズに通る為に渡される物です」

「……俺の欲しかったのはそっちだな」

「身分証は取得がとても難しいです。証はお金があれば即日発行されます」

「……スミスさん?」

「すまん」

「「「……」」」

「……。ま、いっか」

「良いんですか?!」


 ん~~。いろいろ考えたけど。サラや皆に出会えたし、間違いではなかったな。


「うん。まぁスミスさんも謝ってくれたし、皆には世話になったしね」

「間違いがあれば奴隷になっていましたよ?」

「あ。……スミスさん?」

「三週間は労働としてカウントする。証の発行にかかる金はこっちで出そう」

「……ボス」

「分かっている。謝罪を込めて餞別をやろう」


 なんかいろいろと付いて来た。


「何も分かっていないな。ガキ」

「マス?どういう事?」

「ボスは説明をしっかりしていなかった」

「それが?」

「少し間違えればお前は奴隷になり終わっていた」

「そうだね」

「身分証を取得する際、それを説明する義務はないが、身分証と証の違いを確認する義務はある」

「なんで?」

「……間違って覚えてる場合が多いかららしい」

「……あぁ。なるほど」

「で、その義務をやらないと」

「やらないと?」

「罰金と刑罰がある。最悪は奴隷落ちか斬首だ」

「何それコワ!!」

「それだけ責任が伴うって事だ」

「スミスさん」

「もちろん。それなりの報酬はもらっているがな」

「あれ?俺ってまだ三週間働いていないんじゃ?」


 後、数日はあったように思ったが。数え間違ったか?


「お前が寝てた日もカウントしてあるぞ」

「なるほど」


 この身分証どうしよう。


「その身分証はまだ刻印していない。他の街で刻印してもらえればその街の住人になれる。それまで持ってろ。売っても良いしな」

「持ってます」


 売らないでしょう。お金に困ったら売っちゃうけど。


「ガクさんはこれからどこかに向かうんですか?」

「そうだな~。強くなるためにダンジョンのある所には向かおうとは思っているけど」

「ん?強くなりたいのか?」

「そうですよ?」


 スミスさんが意外そうな顔をしている。失礼だな。俺だって強くなりたいと思っているんだぞ!!


「だったら帝都はどうだ?」

「帝都?」

「7つのダンジョンがある巨大な街だ。もはや一つの国だな」

「7つもあるんですか?!」

「あぁ。強くなるためにはあそこが一番だ」

「それじゃ、帝都にしようかな~?」


 向かう宛てもないしね~。


「ガクさん。大丈夫ですか?」

「何が?」

「その、この世界の常識とか知らないと思ったので」

「……どうしよう。マス!!」

「何で俺に聞く。……そうだな。誰かお前と行きたい奴でも連れてけば良いんじゃねぇか?」

「おぉ。そうだね。…………知り合いがいない」

「ガキ。お前はやっぱりバカだな」


 バカとはなんだ!!どうしよう。誰か一緒に帝都に向かう人いないかな?


「シャス。仕事行くか」

「はい。サラクさん。ご飯美味しかったです!!」

「はい!!」


 う~ん。シャスくんがサラに色目を使っているように最近思うが、気のせいだろうか。


「私たちも行くか」

「は~い」


 マーナとパッチちゃんも仕事場に向かった。


 身分証。邪魔だな。……あぁ。【アイテム収納アプリ】に入れておこう。忘れてたな。


(パンパカパ~ン)

「ウォ!!」

「ん?どうした。ガク」

「今の音は……」

「音?私には聞こえませんでしたよ?」

「俺もだ」

「……でも。確かに聞こえた」


 なんだ?ファンファーレが聞こえたんだが。一体。……スマホかな?


「……起動。……これか」


 スマホの画面に最新情報を更新しました。とある。多分これだな


「どうした。……それがどうかしたのか?」

「身分証を入れた事で何かが起こりました。多分」


 スマホの画面を立ち上げ、中身を確認する。


 俺の中のアプリ三つにNEWのマークが浮かんでいる。それと新しく【メモ一】が増えている。これを先に読んだ方が良いのだろうか。まぁ後でも先でも一緒だろうがな。


【メモ一】

・裏の条件をクリア。

・アプリケーションがレベルアップ。

・メモ一。


 裏の条件とは身分証を取得する事。俺の物なら【アイテム収納アプリ】に入れられるからな。それが条件らしい。意味が分からんがそう書いてある。


 アプリケーションのレベルアップは後で確認するとしてメモ一を確認するか。


「ガク。どうした?」

「なんか特殊な条件をクリアしました。俺も良く分かっていませんが」

「俺も知りたい」

「私も!!」

「分かった。声に出しながら内容を教えます。その後に分からない事があったら聞いてください」

「分かった」

「はい!!」


 俺は【メモ一】のメモ一を読む。ややこしいな。


「おめでとうございます!!特殊条件をクリアしました。(裏)第00五番、身分証の取得をクリアした方は、クリア報酬としてアプリケーションのレベルアップとクリア金が支払われます。後ほど確認してください。今回、身分証ですが初回に限り、消費はされませんでしたが、次回以降、条件クリアをした際はアイテムが消費されます。設定の変更は任意でお願いします。今回、選択報酬がございます。三つの中から選んで決めてください。【ガチャガチャアプリ】。<魔法スキル>。ランダム称号」

「「……」」

「……」


 二人は固まっている。当り前だよな。


「大丈夫ですか?」

「……。あぁ、この前の神以上に驚いた」

「言葉もありません」


 二人は虚ろな目をしている。俺もこんな目をしていたのか。


「すいません。今回の事は俺も分からない事ばかりで、多分答えられない事が多いです」

「そうか。まずは、レベルアップとクリア金を確認したらどうだ?」

「そうですね」


 【アイテム収納アプリ】を起動。


「うっわ……。コワ……」

「どうした?」

「別種のアイテムが三十種、同種のアイテムが六十種になりました。後クリア金が……五十万でした」

「……。金は多いに越したことはないな。別種、同種ってのはなんだ?」

「え~と。俺の物ならこの中に入れて持ち運べる便利なアプリがあって、今まではさっき言った半分でした」

「ガクさんが荷物が少ないのはそれのアプリ?のおかげだったんですか?」

「それはただ単に俺の荷物が少なかったから。」

「他人の物はダメなのか?」

「試したことが無いので分からないですが、どうなんでしょうね」

「……これはどうだ?」


 スミスさんが渡したのはコップだった。俺のじゃない。スミスさん専用のコップ。


「……あ。出来ましたね」

「……消えた。…………なるほどこうなるのか」

「スゴイ……」


 確かにそうだよな。目の前からなくなるんだもんな。そりゃ驚くわ。


「ちょと待ってろ。…………。次はこれだ」


 持ってきたのはカチコミに行った時に持ってた剣だった。


「わ、分かりました。……おぉ。出来ました」


 出来るもんだな。まぁすぐに出して返す。持ってるの怖いし。


「これも大丈夫か。……そうだ。これはどうだ?」


 今度、渡してきたのはただの本だった。


「……。ん?入りません。拒まれてる感じがしますね」

「そうか。……だとすると。ウ~ム」

「スミスさん?」

「お前のそのアプリ?はお前の物じゃなくても入るな」

「そうでしたね」

「だが、この本は入らなかった」

「ですね」

「……この本は、私の日記だ。私の中で誰にも見せたくないと思っている物だ」

「……つまり?」

「その人が許可した物は入る。ただし心の中で強く拒んでいる物は入らんらしい」

「なるほど。荷物持ちにならないと思ったけど実は荷物持ちになってしまうのか」

「それ以上だな。金になるぞ。それは」

「なんと!」

「まだ、どのくらいの大きさの物が入るのか分からんが、別種三十、同種六十だろう?これは流れの商売をするなら少々足らないが、馬車を使えば足りる」

「おぉ。お酒なんか売れそう!!」

「お酒は無理だろうな。遠くに運ぶ前にダメになる」

「このアプリの中に入っていると時間は止まっているので新鮮なままですよ?」

「……。サラク」

「……。ガクさんも一度、言って下さい」

「うん?お酒なんか売れそう?」

「その次だ。時間の所だ」

「あぁ。このアプリの中に入ってると時間は止まるので新鮮なままってやつですか?本当ですよ?」

「……本当です」


 スミスさんもサラの目を使うほど信用できないのか?


「これの中に生き物は入れられるのか?」

「無理だと書いてありました」

「……流石にそこまでは無理か」

「どうしたんですか?」

「そのアプリは魔具のアイテムバックに匹敵するだろうな」

「……??」

「ガクさん。アイテムバックの価値は一個で巨万の富に匹敵します」

「え?でもこれ俺しか起動できないよ?」

「だが、それを知らん奴はそれを奪うだろうな」

「何それコワい!!」

「……レベルアップしたアプリはそれだけか?」

「後……二つあります」

「「「ハァ~~~」」」


 全く、先が思いやられますな~~~。

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