魔族

 押忍!!男の中の漢。名は学。三十六歳。長所は器用な事です!!日本でも需要は無かったですがね。ハハ・・・・。


「魔族。かなり昔に魔王が死に人間との争いがなくなった。と聞いたが?」

『流石ですね。まぁその死んだ魔王の子孫が次期魔王を受け継ぐだろうとの事です』

「確定ではないのか?」

『はい。動きが活発化しているだけですね。魔族の内部もゴタゴタしているんじゃないんですかね?』

「そうか……。記憶に留めておこう」

『そうですね。今すぐどうこうって訳じゃないですしね』

「分かった」


 なにが分かったのか。俺には分からない。


 魔族いたんだな~。とか魔王!!とかは分かるが、まぁ攻めて来る訳じゃないのだろう。


『では、私はこれで失礼しますね。学くん!!良いですか?ちゃんと強くなるんですよ?じゃないとすぐに私の所に来ちゃいますよ?』

「分かっている。それに縁起でもなことを言うな!!」


 そう言い残し電話を切った神。


「あの、……スゴイ神様ですね」

「スゴイのはスゴイけど、俺の中の神様とは大分かけ離れているから神様感があまりないんだよね~」

「そうですか?でも声が小さな子供のような感じで驚きました。私は男性だと思っていましたし」

「俺もそう思ってた。あの神様の身長は俺の胸ぐらいのだったよ。見た目子供だしね」

「ガク。もう下がっていいぞ。ご苦労だった」

「はい」


 スミスさん。なんか深刻なそうな顔をしていたな。大丈夫かな?


「それじゃ、ガクさん。お店に向かいましょう!!」

「ですよね~。足手まといにならないように頑張ります」


 サラって昨日、攫われたんだよね?おかしいな?俺の気のせいだったかな?そういえばマーナもお店に向かったな。あの人かなりの重症だったと思うんだけど。


 回復薬で回復できるのは損傷まで。ダメージは残るって言ってし。頑丈過ぎる。


 サラも大丈夫だろうか。


「サラ。今日は休んだ方が良いんじゃないかな?体はともかく心の休息は必要だと思うんだけど」

「ありがとうございます。ガクさん。ですが私は大丈夫です!!」


 だから何でそんなに元気なんだ!!


 サラとお店に向かい開店準備と仕込みの手伝いをする。マーナとパッチちゃんは俺たちが来て驚いていた。やっぱり休んだ方が良いとサラに言ったが、なんだか体を動かしたいと言っていた。


 ん?俺?ぶっちゃけ体は怠いし、動きたくない。体ではなく精神的に。俺よりも精神的に追い詰められるところにいたサラが元気ハツラツしてるんだ。休みたいだなんて言えない。……言いたいけどね。


 本日もお店は大繁盛。イヤ~少しも嬉しくないのはなんでだろうな。


「ガクさん。大丈夫ですか?顔色が優れないようですが」

「大丈夫。休めば、大丈夫だと思う」

「ガクお兄ちゃん顔真っ白。コワ!!」

「だな。ガク。閉店の片づけはやるから先に帰れ」

「分かった。すまない」


 俺は、一人家に向かう。まぁこの道は良く使うから迷う事は無い。


「すいません。少しよろしいですか?」

「……はい。何ですか?」


 何だか少し変な雰囲気を持った人に話しをかけられた。この変な感じはどっかで感じた事があったはず。どこだっけ?


「私の事。覚えてますか?…………学さん」

「……ジュウソウ。やっぱりアンタか」


 やはり、この感じ。この不吉で俺には理解できないであろう雰囲気はジュウソウ。


「驚かないんですね?意外です」

「あんたの気配は嫌と言うほどこの前、感じたからな」


 カッコつけて気配と言ってみる俺。


「あなたにそんな事が出来るとは思えませんが」


 速攻でバレる。恥ずい。


「要件は何だ。俺を殺しに来たのか?」

「違いますよ?」


 だろうな。俺を殺すなら背後から一撃で倒される自信がある。相手がもてあそぶような奴じゃなければな。


「なんのようだ?」

「同郷の方から正式に仲間にならないかとの伝言を伝えに来ました」

「断る」

「まだ、伝言があります。『俺のパーティーに入り、夢を叶えよう』だそうです」

「嫌だ」

「……なぜですか?」

「ん?何となく?なんか嫌な感じがする」

「……」

「それに、俺はゲームには参加してるがクリアを目指していない」

「そうですか」

「そうだ。アンタには悪いが諦めてくれ」

「……何時から?」

「ん?」

「何時から分かってたの?」

「今、確信を得たところだ」


 教えてもらったと言ったが、教えて信じる者は少ない。これは俺が実際にやった事だ。分かる。


 多分、サラがいなければ俺は信じてもらえなかった。この女が同郷を名乗る人物とどんな間柄かは知らんが、信じてもらうためにはかなりの信用が必要になるだろう。


「そんな感じはしなかったけど?」

「そうか?」

「……あなたは優勝を目指していないのね?」

「あぁ。俺はこの世界でハーレムを作るって目的で転生したからな」

「何それ。バッカみたい」


 急に日本のノリで喋る女。


「……それが素か」

「まぁね。なん~だ。つまらない。優勝して向こうに帰る気はないのね?」

「あぁ。向こうに帰っても俺は無駄な生活をダラダラと過ごすだけだからな」

「オタクで引きこもりかよ。キモ~」

「引きこもりじゃない!!一日を部屋で過ごす人種だ!!そこは間違えるな!!」

「なに必死になってんの?キッモ!」


 そこは重要だから!!一番重要だからな!!


「まぁいいや。学さん。電話番号教えて」

「さん付けか。この世界じゃガクと呼んでくれ。さん付けはしなくてもいい」

「あっそ。ガク。電話番号。プリーズ」

「何で電話番号?」

「スマホに入れっと電話出来んだよ」

「マジか!!……起動」

「イメージ操作出来んのかよ。マジもったいね~」

「ん?」

「何でもねーよ。スマホ貸せ」

「あ!!」


 スマホ取られた。


「ほら。入れといてやったからな」

「なんで入れたんだ?」

「ハァ?連絡するためだろうが」

「そうだな。……まぁいっか」

「んだよ。気になんだろうが」

「お前はイメージ操作できないのか?」

「グッ!!そうだよ!なんか文句あっか!!」

「そう怒るなよ。え~と。イメージで変化させたい物を思い浮かべて言葉を放つ。スキルを使う要領で出来ると思うぞ?」

「…………変形。…………できた」

「それ。出来るとイラッとするよな」

「説明文が意味が分からんかった」

「アレを作成した奴は絶対に意地悪だ」

「…………よかった。出来て」

「だな。俺達の命綱だもんな」

「は?」

「ん?」


 違ったのかな?


「お前、この世界に来てどのくらいだ?」

「ん~。一ヵ月経ってないな」

「あ~やっぱり」

「なんで?」

「一か月経つとスマホの中身が増えんだよ」

「マジで!!やった!!」

「ただ、条件があんだよ」

「うわ~~。条件制か」

「あぁ。その中にスマホのイメージ操作があったんだ」

「それでか。良かったな」

「あぁ。後、気にのなったんだが参加賞はどうした?」

「ん?別の物に変えた」

「……。バカなんじゃないの?」

「俺には重要だったんだよ」

「まぁいいや。借りが一つできたわね。感謝するわ」

「どういたしまして?」

「んじゃまたね~~。後で連絡する」

「あ、最後に何で俺の名前が分かったんだ?」

「……。【ランキングアプリ】で分かるわよ。あなたは持ってないけどね」


 あのアプリにはそんな機能があるのか。初めて知った。


 女は消えるように姿を消した。転生者の人間。何があったらあそこまでの雰囲気が出るのだろうか。


 俺は、女が消えた場所を見ながらそんな事を考えていた。


「……伊藤ゆかり。ジュウソウじゃないんだな」


 俺は女の名前がゆかりだと分かったのと、日本でもなかった家族以外の連絡先をゲットし少々テンションが上がった。


「ガクさん!!先に家に戻ったのになんで私たちより遅いんですか!!」

「ご、ごめん。サラ。心配かけた」

「戻ったか。サラが俺たちの飯を放棄してお前を迎えに行くと言って大変だったんだ」

「ボス。……サラがそうなったのはボスがガクはどっかで女にナンパでもされているんだろうなって言ったからですよ?」

「そうだったかな?」

「ガクさん?女の人に話しかけられてませんよね?」

「……。……。……。ダラダラ。ダラダラ。」

「ガキ。ウソをつくのが下手過ぎるだろうが」

「マス!!俺は嘘はついていない!!」

「ガクさん!!答えてください!!女の方は誰ですか!!今から探してきます!!」

「おぉ。マーナ。面白い展開になって来たな」

「ボス。サラで遊ばないでください。夕飯が遅くなる」

「お腹減った~~~」

「パッチちゃん。もう少しかかりそうだよ?」


 皆、言いたい放題だな。少しは助けて。


「ジュウソウに合って少し話をしただけだよ」

「オイ。ガク。詳しく話せ」


 皆が一瞬で真剣な目になった。切り替え早いな~


「仲間になれと言われました。断りましたが」

「そうか。お前は何ともないか?」

「はい」

「そうか。サラ。飯を頼む」

「……分かりました」


 心配そうな目で俺を見るサラ。俺は軽く微笑みをサラに向けると、サラも微笑みを返してキッチンに向かった。


 サラの夕食は相変わらずの美味しさだ。心身に栄養が行きわたる~。


 今日は体調が悪いから早めに休もう。おやすみなさい!!

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