最強無敵

 押忍!!男の中の漢。名は学。子供の頃の将来の夢は偉い人になる事でした。現在はと言うとエライ事になってます。


「何だ。随分早かったな。お前は、そ」

「違います!!サラの前でそれ以上は言わせません!!」

「え?何ですか?そ?って何ですか?」

「サラにはまだ早いから」

「そうですか?なら、いいですが……?」


 スミスさんの部屋に来て早々何を言うのかこの人は!早いって。まだ十六歳の女の子に聞かせるワードじゃないでしょ!実際は……。


 やっとのことでサラを泣き止ませた。間違った。泣き止むまで待ったの間違いだった。何であんなに泣いていたのか疑問だ。何でだ?やっぱり目線でバレてしまってのか?それともサラを泣かせるような事を言ってしまったのか?


「話の続きをしよう。ガク。サラク。そこに座れ」

「はい」

「失礼します」

「お前は転生者だったか?」

「そうです」

「転生者ってのは死んだ奴がまた生き返るってやつだよな?」

「まぁ、そうですね」

「つまりお前は……」

「死にました」

「お前は死んだのか。で、今は生きてるのか?死んでるのか?」

「生きてますよ?」

「そうか。アンデットの類ではなんだな?」

「……そう言われると俺自身も不安になってきますが、違いますね」

「お前はなんで死んだんだ?」

「……。……。お……。オナ……。…………心臓マヒです」

「……嘘です」

「すいません。スミスさん。サラに聞こえないようにスミスさんの耳元で死因を喋っていいですか?」

「あぁ。……。それは何だ?……あぁ。そういう事か。プフフフ。クックックック。アッハッハッハ。本当に器用な奴だ」


 クソ!!死因は心臓マヒで合っているのに!!俺が嘘だと分かっていると駄目なのか。


 スミスさんもこんなに笑わなくても良いのに!!だから言いたくなかったのに!!


「スミスさん。詳しく俺の事を話すと突拍子もない事が多々ありますが大丈夫ですか?」

「プックックック。大丈夫だ」

「ガクさん。スミスさんに何を言ったのですか?」

「ごめん。言えない。出来れば俺はこの事を墓場まで持っていきたい」

「そうですか。……すいませんでした」

「あ。そのうち!!そのうち話すから!!ね?」

「……グスン。……はい!!」


 サラが泣き虫になってしまった。可愛いから問題ないが。と言うより、涙目が加わったのだ。もはや最強だ。無敵だ。もちろん俺は負けるしか道はない。


「では……。俺が死んだのはこの世界とは別の世界です」

「待て。この世界じゃないとは何だ?」

「え~~っと。俺は別の世界の住人でスミスさんたちはこの世界の住人です。俺のいた世界は文明や歴史がまるっきり違うこの場所とは全くの違う世界の人間という事です」

「なら何でお前はここにいる」

「神様にこっちに転生するか昇天するか聞かれてこっちに来ました」

「今度は神か」

「……嘘はついていません」

「あの女が言っていた同郷ってのは俺と同じ転生者で多分、転生者同士のゲームに参加しています」

「何だそれは」

「神様がこっちに転生する場合、転生者同士のゲームに参加することが出来ると言っていました。参加賞ももらえますし、優勝者には願いが叶い、死ぬ直前からやり直しが出来ると言われています」

「お前は参加しているのか?」

「一応参加していますが優勝は目指していません。俺はこの世界で生きて行こうと決めています」

「なぜか聞いて良いか?」

「向こうの世界で俺は生き返る資格がありません。ただそれだけです」

「資格が必要なのか?」

「違います。これは俺の中で思っていることです。それに参加賞も無い状態ですしね」

「参加賞。そういえば言っていたな。なんだそれは」

「え~っとこの世界で生きて行く上であったら便利なスキルと道具がもらえます」

「……道具と言う部分が嘘ですね」

「すごいな。サラ。そこまで分かるのか」

「すごいだなんて。そんな事はありません」

「道具じゃないならなんだ?なぜ、嘘を付いた?」

「隠すつもりで嘘を付いた訳じゃないですよ?道具と言った方が通じると思ったのでそう言ったまでで。本当の言葉で言うならスマホアプリが三つほどもらえます」

「それは何だ?」

「これですね」


 俺は服の中に隠していたペンダントを見せる。スミスさんもサラも頭に?マークが浮かんでいるのが分かる。写メりたいな。


「起動。……これは見たことがありますよね?」

「これは……どうやって。以前、俺が預かってた物だな」

「これがスマホと言います。俺がいた世界であった便利な物です。え~と。携帯型の通信機器でこれを持っている人同士で会話が出来たり、中にアプリと言う物を入れる事で遊んだり便利な機能が増えます。意味は分からないと思いますが」

「全く分からんな」

「ですが嘘はついていませんね」

「そうか……」

「他に聞きたいことはありますか?」

「なぜ、お前はその参加賞ってのが無い?」

「俺は、参加賞を他の物に変えてもらいました。転生者同士のゲームに参加したのも参加賞目当てです」

「何に変えたんだ?」

「手紙です。家族に宛てた」

「そうか。本当に突拍子もない話だった」

「だと思います。神様にも信じてもらえないだろうと言われました」

「……何時言われたんだ?」

「え?昨日の夜ですが?」

「お前独り言を喋っていただろう」

「聞いてたんですか?!」

「お前の声が大きかったんだ。聞く気は無かった。で?」

「このスマホから電話がかかって来て話していたんです」

「今、電話が出来るか?」

「……どうでしょう?やってみますか?多分無理だと思いますが」

「……頼む」

「分かりました。……神様。電話出来るか?」

「それだけか?」

「え?……はい。これでスマホが鳴るまで待機ですね。いつもはなりますが、今回は分かりません」

「神と喋れるのか?」

「え~と。どうでしょう。俺から神様に掛けられませんからね。神様から俺に掛ける事は出来ますから電話をする気があれば鳴りますし、鳴らなければ電話が出来ないってことですね」

「そうか。……鳴らんな」

「そうで『プルプルプル。プルプルプル。プルプルプル』…………掛かって来ましたね」


 電話が掛かってきたことに俺もびっくりしている。基本こういうのって掛かってこないし、黙秘が神様がする事のように思うが、まぁあの神様だしな。


 俺は、ステレオで電話を取った。皆に聞こえた方が良いと思ってな。


「もしもし。まさか本当に掛けてくるとは思わなかった」

『アハハハ。分かっていたんですが、学くんの驚く顔が見たくてついつい』


 なんて軽い神様だ。


「か、神……なのか?」


 ごもっとも!!


『そうですよ?私は親愛の神様です。偉いんですよ!エッヘン!!』

「私の能力が弾かれました!!何ですか!!あなたは!!」

『え?神様ですよ?ちなみに神様に能力は通じません。と言うより神に干渉が出来ません』

「本当に神様なのか?」

「本当です。実はサラの情報をくれたのはこの神様です」

「!!なんと……神よ。感謝する」

「神様。私を助けてくれてありがとうございます!!」

『感謝される事はしていませんよ?学くんにお願いされたので答えたまでです。それに私はサラクさんを助けてもいませんしね。助けたのは学くん達ですよ?』

「神様?感謝を返すことはないんじゃないか?神様のおかげでサラが助かったのは事実だし。俺は余り役に立ってないし」

『……そうですね。失礼な事をしてしまいました。感謝を受けいれます。どういたしまして』

「あ、あぁ」

「え、えぇ」

『学くんがお世話になっています。私もあなた達に感謝しているんです』

「お前は俺の母親か!!」

『学くん。体調に気を付けてと言ったのにすぐに体調崩すし、心配なんですよ。私は』

「まぁ、心配をかけてるのは申し訳ないけど、本気で母親みたいだな」

『まぁ、面白半分で見てるんで、それほど心配はしていませんけどね』

「台無しだよ!!」

「お、おい。ガク。神相手にそんな感じに話して大丈夫なのか?」

「そうです。祟りや天罰が落ちますよ!!」

「神ちゃん。どうなんだ?」

『学くんに天誅を下すと私まで被害が出るのでやりたくないですね』

「だ、そうです」

「お前はおかしな奴だな」

『アハハハハ。学くん。やっぱりおかしな人って思われてますね~。ざま~です!!』

「笑うな!!結構気にしてるんだ!!傷つくだろうが!!俺のガラスのハートに消えない傷が付いたらどうする!!」

『心の中で地味に私をディスっているのは知っています。そのお返しです。フッフッフッフ』

「地味な嫌がらせだ!!」


 全く、この神様は。


『それで、スミスさん。私に何か質問はありますか?』

「あぁ。俺はこれでも自分は他の奴より物事を知っているつもりだ。俺の知ってる知識の中で神が使者を使わせた時、世に災いが起こると言われている。この世界をあなたは混乱させたいのか?」

『……』

「神様?どうした?」

『イヤ~~。どうも……これはマズいですね』

「否定しないんだな?」

『しませんね』

「お前たち神は何がしたいんだ?」

『それは、各神様の役割がありその中で行動しています。それぞれが考え行動している。私はそうしか答えられませんね』

「……。この世界がどうなろうが知った事ではないって事か」

『そう思っている神もいますし、思っていない神もいる。そう言う事ですね』

「……」

『転生者を送らなかった場合の話をしましょう。今回の場合、学くんがこの世界に来なかったらサラクさんは死んでいました。』

「初耳だぞ!!」

『来なかった場合です」

「だが……」

『もちろん。代わりに死んだ者もいます』

「あの豚か。神よ。お前はガクで何をしている」

『私はガクさんに何もできませんよ?もちろん洗脳もしていなければ誘導もしていません。これは事実です』

「答えを言っているようで答えないな」

『神様にもいろいろあるんですよ。このくらいで許してもらえませんか?』

「分かった。最後に転生者が来なければ災いは無いのか?」

『来なかった場合。かなりの昔に人は滅んでいます』

「……なぜだ」

『あなたの使うスキルなどは転生者がこの世界の人に教えたからです。あなたの虹色抜刀術もそうですし、看破の真眼もそうです』

「私の剣術はともかく、サラクの目の事も分かるのか」

『神様ですから』

「分かった。答えてくれて礼を言う」

『私の感謝の気持ちと受け取ってもらえたら嬉しいです』

「受け取っておこう」


 俺とサラは二人、よくわからない話をする二人を見ているだけ。ちんぷんかんぷんだぜ!!


『お節介に一つ。魔族が動き出します』


 神様はとんでもない事を口走る。もちろん俺は良く分かっていない!!


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