第二十三話 状況確認

 前回の(主にルーテシアの)激戦から現在。

 自分の家から出て周りを見渡してみると、特にこれと言った騒ぎにはなっていなかった。あの謎の襲撃者がこの家に出入りするときに、あまりに早すぎて見えなかったってところなのかな?家の中の物音も、すぐにルーテシアが空間を飛ばしたから大きな音は出なかった、というのがおそらく正しいのだろう。

 外に影響がないならひとまず安心、としておくとして問題は今の時間はいつなんだ。予想外の展開すぎて、正直エルルには申し訳ないが若干遅れてもゆるしていただきたい…。


 『ルーテシア、今の時間わかるか?』


 『……』


 『ルーテシア?』


 『………はっ!…失礼しました。何か?』


 …本気で調べてるからって没頭しすぎだと思うんだが、一体どこまで調べてるんですかね。できれば程々にしておけよ、と釘を差しつつもう一度時間を聞き直す。


 『そうですね…マスターが気絶していたのもほんの5分ほどですが、なにせ奴の抵抗も激しかったので思ったより時間がかかりましたので、2時40分程かと。』


 『…マジか…ありがとう、急ぐわ』


 『ええ、エルル様の予定していた時間まで少しですので、それまでにすることがあるのでしたらお急ぎにならないと厳しいですね』


 冷静に言ってる場合でもないじゃないような気もするが、実際そうなんだけどさ。

 再び家に入って、玄関から家の中全体を見る。日本で生きてた時、自分の部屋とも小さい頃に住んでた家とも違った第3の生家。一部の大きな家財を残してしばらく去る予定ではあるが、次に来るときは花でも持ってくることにしよう。

 軽く手を合わせて拝むと、学園の方へと急ぐことにした。




 学園前まではすぐのため、待ち合わせには間に合うのだが問題は先程の件だ。ルーテシアのことはできることならまだ隠しておきたい。彼女の存在は俺の特異性を象徴するものであり、その能力値も高いため何がどうなるかわからない。ガルド先生のことは信用しているとはいえ、あの人にも立場がある。最初の頃にはしゃぎすぎたから、なにかしら変なふうに思われてそうだが、そのあたりも含めて隠しておくのが良いだろう。

 今向かっているのは学園のその中、ガルド先生のところだ。先ほどの件を念の為報告しておきたいのだ。もちろん、ルーテシアの部分をうまく改変して、ってなるが。不意打ちされたところからどうやって報告しようか悩むが、いざという時はルーテシアに頼もう。他力本願バンザイすぎて涙が出てくるな、ほんと。


 『なんとなく言いたいことはわかりますが、今はマスターのチェックで忙しいので承服しかねます。自分でどうにかすることをおすすめします』


 いつものごとく先読みするのはいいんだが、珍しく頼もうと思ったことを先回りして断られたか。その理由が体調チェックなわけだが。


 『そのチェックを止めるというのは…』


 『自分でどうにかすることをおすすめします』


 『あ、ハイ』


 これはやめる気無い奴だなぁ…仕方ない、若干ローブの相手が弱いみたいな印象になるかも知れないが、自分で戦ったことにして報告しよう。

 

 しばらくすると、学園の前まで来た。学園の前には待ち合わせまで約10分ほど前ではあるが、エルルが着替えて待っていた。ラフではあるが薄めのピンクのTシャツに白の短パンと簡素な姿だ。ラフ故に上半身の一部分がよく盛り上がってるが、そこは割愛しよう。

 エルルがどれくらい前に来ていたかはわからないが、こちらを見つけると軽く手を降ってきたので、こちらも手を振り返す。


 「ウィルくーん!こっちだよ〜。早かったね?」


 「エルルこそ、だいぶ早かったね。結構待ってた感じ?」


 「ううん、ゆっくり来て今きたところだよ。ウィル君はだいぶ急いでたように見えたけど、待ち合わせまでは時間あるよね?どうしたの?」


 「あぁ、いや、ちょっとガルド先生に用事があってね。それ次第だとちょっと遅れるかも知れないけど、大丈夫かな?」


 少しだけ乱れた息を整えつつ、エルルにそう伝える。用件が用件だけにちょっとで済むかはわからないが、ちょっとということにしておく。


 「あ、そうなの?いいよいいよ。じゃあ、魔書館で調べものしながら待ってるね。」


 「ごめんね、すぐ行くから」


 エルルに軽く頭を下げ、学園の本校舎へと走っていった。できることなら概要だけではやめに切り上げたいが、詳細に問いつめられるとボロが漏れるのもあるし、適当に切り上げさせないとなぁ…。


 ガルド先生の場所について通りがかった先生に聞いたりしたが、やはりいつもの通り校長室にいるとの話なのですぐについた。

 扉を軽くノックする。


 「ガルド先生、よろしいですか」


 「ん、いいぞ」


 出入りするのもこれで何回目かわからないな、と少しずれたことを思いながら。

 ここからの嘘と本当を交えた報告について、必死に考えながら。

 

 校長室のドアを開き、ガルド先生と対面するのだった。





―――――――――――――

余談


今週から若干忙しくなるので、文章量が若干減りますが、投稿ペースはちゃんと守るようにしますので、気長にご愛読いただけると幸いです。


 

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