第四話 入学試験結果

 それから数秒後、他の子供たちも無事ゴールしました。息が整った子供から順にすごいねぇ!どうやったのー?とか聞かれます、走っただけとしか言いようがないんですけどね。

 それから慌てて先生が走ってきて


 「君!ちょっと来て!」


 という感じで、連れていかれました。そりゃ、そうか。まぁ、この様子だと別で受けさせられんのかねぇ…はぁ…。

 終止俺をにらんでる金髪ツンツンさんがいましたが、これはスルーしときましょう。何言われるかわかったもんじゃないし。


 そうして先生に連れられて来たのは校長室的な重厚感のある部屋。適当なところで待っとくように言われたので手近にあったソファに座ることに。

 なんだこれ、ふっかふかじゃねぇか、やべぇ。なにでできてんだろ。聞いたら教えてくれんのかな。だんだん眠気が来るわ…zzz。


 そうやって待つこと5分ほど、さっきの先生と主に校長っぽい人が来た。ハゲ&ひげは威厳のあらわれだよね。かっけーよ、こっちのが好きだよ、俺。


 「この子がそうなのかね?」

 「えぇ、そうです!明らかにB級冒険者並みの動きを平然としましたよ!息も切れてなかったですし!」

 「ふむ、そんな風には見えないが…」


 二人の大人が8歳の子供の前で隠しもせずにそんな話をする。機密漏えいとかもこんな風にするんだよなぁ、聞かれてないと思ったら大間違いなんだよなぁ…。

 さすがに寝ているわけにもいかないので体を起こす。

 

 「~~~んっ、おはようございます」

 「あぁ、目が覚めたかね?」

 「えぇ、実に快眠でした。このソファふかふかですけど、何でできてるんですか?」

 「これかい?これはサーベルタイガーの皮となかにだな…」

 「そんな話はいいですから、本題を!」


 流れでソファの素材の話をしようとした俺たちを止めるパッとしない先生。なんだ、この世界での平凡ってこんな感じなのね。昔の俺並みに平凡じゃないか。


 「あぁ、そうだったね。じゃあ、えーっと…」

 「ウィルです。ウィル=エルスタ」


 おそらく試験の参加者の情報はあまり見てないのだろう、髭の校長先生に名乗る。


 「ありがとう、ウィル君。私はこの学園の長をさせてもらってるガルド=ガイアスだ。よろしく」

 「こちらこそ、よろしくお願いします」


 お互いに軽く挨拶を済ませる。パッとしない先生が「8歳でなんでこんな落ち着いてるんだ…」と言っているが、スルーしておこう。


 「で、本題に入るとだな」


 ガルドさんは、話を続ける。


 「この隣の先生、テムル君によると君は先ほどのかけっこでぶっちぎりだったんだって?」

 「えぇ、間違いありません。もちろん、ぶっちぎりというのがほかの子供たちをほとんどおいて言ってのゴールのことを指すなら、ですが」

 「ふむ…そうか」


 うなるガルドさん。まぁさっきの話から察するに8歳でそんな成績なのはおかしいのだろう。


 「よし、じゃあ、こうしようか。君の試験は別室で私が見よう。ほかの8歳と混ぜると怪我でも起こしかねないしな」

 「わかりました、ではそれでお願いします」


 丁寧にお辞儀をする。そこは自分も気になっていた。もし対人テストなんてあったら大変である。


 「テムル君は引き続きテストをよろしく頼む」

 「わかりました、では、失礼します」


 テムル、とよばれたパッとしない先生が校長室を出ていく。


 「では、私たちも行こうか。ウィル君」

 「はい」


 校長自ら試験監督とか、ある意味幸せもんだね。これは特別待遇待ったなしか!

 喜びを隠しきれないが、まぁ子供らしく素直に喜んどいてもいいかな、と思うのであった。



 それから別室に連れられ真っ白な立方体の箱のような部屋に入る。

 ガルドさんによると、普通の部屋ではないらしくある程度の衝撃や傷に耐えられるようになっているらしい。どれぐらい耐えられるのかというと、ドラゴンの本気の一撃をぎりぎり耐えられるくらいだそうだ。ドラゴンの存在がどんなものかを知らないため、想像するのは難しいが自慢げに言っていることからおそらくとんでもなくすごいのだろう。

 普段は新しい魔法の研究や実験などでつかうらしいのだが、試験日ということもあって学園は休校、ちょうどいいので使わせてもらうということになった。


 「それに君の力がどんなものかわからない以上、用心はあってしかるべきだろう」


 そう言って笑うガルドさん。笑っているようではあるが、興味と何者かわからない警戒心のようなものがうっすらと分かる。伊達にあっちの世界で上司のご機嫌伺いしながら生きてきたわけじゃない。

 …自慢にならないがな!


 「では2つ目の試験について説明するぞ?」

 「はい、お願いします」

 

 2つ目の試験では魔力の量を測るものだった。この試験では8歳の子供でもできるようにあるアイテムが用意される。一見すると、ただのガラス玉に見えるのだがこれに手を添えることで添えた人の扱える得意属性を色で、本人が持つ魔力量は中に液体がたまっているように見えるその量によってわかるという優れものだ。

 魔法を使う訓練はしていたものの、物に魔力を注ぐ訓練はしていなかった。やり方がわからないとやりようもないのでガルドさんに聞くと、説明はしにくいが、なんとなくでやればどうとでもなるらしい。

 

 案外適当だな、ファンタジー。

 

 ぼやいても仕方ないので、昔見たカンフー映画よろしく、内側にある魔力のようなものを放出する感じでガラス玉に手を添えた。

 案外、ほんとにどうにでもなったのか、無色透明だったガラス玉に色が生まれ、チャプチャプと音がするような感じでその中に液体がたまる。どこまでたまるのかわからないまま液体はたまり続け、結果的に液体はたまりきってしまった。

 肝心の色はというと、いろいろな属性が使えるということなのか、左上から時計回りに赤、青、緑、黄色の順に花が咲くような感じになった。色から考えると、火、水、風、地属性的なものだろうか。


 「ほぉ…魔力測定値で4属性を習得可能とは…これはこれは…」


 ガルドさんが後ろで楽しそうな声で言っているのが聞こえた。測定値オーバーということはすごいのだろう、それにこの4つで全てなのか、属性。まぁ、転生の時に全部使えるようにしてもらったから当たり前なんだけどさ。


 「よしよし、じゃあ、最後の試験を説明するぞ」

 「はい」


 窓がないために外の様子がわからないが、試験はもともと昼からだったため今頃は夕暮れにだいぶ近づいているのだろう。試験結果は当日発表でその日のうちにクラスが決まる。そのため試験結果をまとめる時間が少しかかり、終わるのは日暮れ後ということになる。

 朝からやりゃあいいのに、とつぶやかずにはいられないが、こればっかしは仕方ないだろう。

 

 最後の試験は得意武器に関する簡単な問いかけだった。前の二つと違って、どの武器なら使えるという話だった。元々こちらの世界の住人は何が使えるかは感覚的にわかるという話だったのでそういう意図なのだろう。

 もちろん、すべての武器が使える特典がある以上、全部使えますというしかないが。

 一応、確認も含めて剣はもちろん、槍や斧、双剣や爪のような武器なども持たされ攻撃方法を試させられた。爪などというジャンルは初めて見たのだが、スキルの効果なのか、やはり爪のように思いっきり振り下ろしたり、先がとがっているのを利用してさしたりして攻撃するのだということが自然と頭に浮かんだ。すごいなスキル、なんでもできちまう。

 攻撃方法があっていたのか、ガルドさんは満足げに首をうなずかせ試験終了を告げた。

 

 「お疲れ様、これで試験は終了だ。あとは他の子供たちと一緒に別室で待ちたまえ。別室までは私が連れて行こう」

 「はい、お疲れ様でした。ありがとうございます」

 

 手ごたえは上々。さてさて8歳の中ではトップクラスってところじゃないかね?これはワクワクを隠せませんなぁ?

 見とがめられない程度のスキップをしつつ、ガルドさんに連れられガヤガヤと騒がしいほうへと歩いていく。

 ある程度歩いたところでガルドさんが立ち止り、


 「あそこの部屋で待っていてくれ、では、失礼」

 「ありがとうございます」


 丁寧にお礼をガルドさんに言うと、笑って手を振り来た道を戻っていった。試験結果は気になるが、まぁ少し魔力を使って疲れたので一眠りぐらいさせてもらおう…子供が多くてできるかわからんが。

 そんなことを考えつつ、ドアを開け中に入ると、中で遊んでいたと思われる子供たちが一斉にこちらのほうを見た。うお、約200人の視線こわっ。

 戦々恐々としたのも一瞬で一斉に子供たちはこっちのほうに走ってきた!うわ、漫画でいうところのズドドドじゃねぇか!リアルで初めて見たわ!ひぃ!


 「君すごいねー!かけっこの時どうやったのー?」

 「どこの家の出なの?貴族?」

 「親は何してるのー?」

 「どれだけ鍛えてたらそんなはやくなるの?」

 「ドーピングか?ドーピングなのか?」


 子供たちが好奇心をこれでもかと表現するかのごとく矢継ぎ早に質問を投げてくる。言葉の銃弾ってこういうことじゃないかな?!


 「あ、ちょ、待って。落ち着いて」


 質問ラッシュ!俺は聖徳太子じゃないんだから、勘弁してくれ!つか、誰だドーピングとか言った奴!8歳児でそんな発想を持ってるとかどんな教育受けてんだよ!

 一気に囲まれてあたふたしてしまい、落ち着くまで10分。好奇心が強い分覚めるのも早いため、わたわたしてる間に元のグループに戻っていった。子供って束になるとすごいってことを思い知らされたよ…。

 そう言って胸をなでおろしていると、試験の集計が終わったのか先ほどのテムル先生がやってきた。


 「みなさーん、集計が終わりましたので結果を通達しまーす。ひとまず先生についてきてくださーい」


 そういって、テムル先生はどこかに歩き出していった。ガヤガヤとしながらも子供たちはテムル先生にしっかりついていき、もちろん自分もそれに続く。窓から中庭のようなところにボードがあったので、大学試験のような感じで発表するようだ。まぁ数が多いから仕方ないね。

 歩いていくと、予想通り中庭にたどり着き、


 「ではそれぞれの番号がクラスに割り振られているのでかけっこの時の順番の番号を見てクラスを探して覚えて帰ってくださーい。入学式は明日からですよー」


 それで説明は終わりみたいだ。さてさて…俺のクラスは…



 

あー8のクラスからじゃなくて13のトップクラスからですかー。そうですかー。




 んー、アニメの法則だとやっかみのいじめみたいなイベント来そうだけど大丈夫かな?

 入学もまだなのに心配はつのるばかりであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る