第2話

 この部屋の鉄扉にはノブがない。そとから鍵で開錠される。

 畳4畳ほどの長方形のその空間の外からは、幾多の足音と大きな掛け声や号令が聞こえる。

 「おいっちねい!おいっちねい!」

 声を張り上げるで何を言っているかわからないような行進の号令が毎朝聞こえる。

 窓には格子があって、外の景色を眺めるには風情がない。

 この少年院がどこにあるのかはわからなかったが、ただただ風も冷たく、寒かった。まだ来たばかりで、ここから出るのは概ね一年ほど先のことになるそうだ。

 とても静かで、部屋の外の長い廊下を通じて、百足のように連なった部屋の中にいる、他人の息遣いを感じることができるほどだった。

 部屋は畳が二畳、座卓が一脚、便所が端に申し訳程度に設置されている。合板の3段木箱には、私のものではない私用の服が置いてある。歌舞伎柄の布団一式と茶色の毛布は、折りたたみ方、重ねる向きまで決まっていた。些細な決まりごとであれ、この施設の中ではそれを守ることが叩き込まれる。

 外の行進が通り過ぎると、広場で朝礼がなされているようだった。

 未だ個室生活の私はその中で終日を過ごす。あるのは座卓上の自省用ノートとボールペン、あとは自省のために与えられた課題のようなもの。楽しみといえば3度の食事。白米は大盛りでそれで腹を満たせと言わんばかりの量だった。

 そこは「長期少年院送致」をされる施設だった。

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