第6話 解放

 響夜は唖然としたものの良く考えてみればわかる話だ。魔法は実際にある、魔法適正が高いのも事実。ここから考えればこの場所があるのも有り得なくないとはわかるだろう。

 それを見た少女は少し不思議そうな顔をした後、何故驚いているのか気づいたようで声を掛けた。


「ここはあなたが夢で見た場所そのものです」

「嘘だろ!?」

「本当です。魔獣化が起こり始めていたあなたを救った神様が君臨していらっしゃる場所です。ここは正統なる神から祝福を受け取った魔術師の始まりの場所であり、聖地ですね」

「魔獣化?正統なる神?祝福?始まる?意味がわからねぇ......」


 彼はただでさえ驚いている状態だというのに更に意味不明な単語を並べられ頭がぐちゃぐちゃになる。それが判っているので丁寧に少女は答えた。


「魔獣化とは魔力が高い人が魔力を暴走させ獣になる現象です。正統なる神とは神の血を継いでいる神。祝福というのは神の力の極一部です。魔法が使えるようになります。なので、神から直接貰ってココで魔法を習い始めるので、始まりの場所です」

「逆に神の血を継いでいない神というのは存在するのか??」


 粗方理解した響夜きょうやだったがそこに関しては意味がわからなかった。


「いますよ。今の天皇とかですね。元は神様だったのかも知れませんが今は遺伝子的には完全な人間です。神格という神の力の元のみを体に宿している状態です。もっとも神格を全て宿せる時点で超人ですが....」

「天皇って神だったのかよ」

「まあ、それはいいのです。早く、神様から魔法を授かりましょう」

「お、おう」


 あの時とは違い近くに立っても勝手に扉が開くことはない。なので当然、自分で開き中に入っていく。すると、なぜか消し去られたはずの教会にありそうな女性の像が飾られていた。

 やはり夢だったのだろうか。そんなことを思っていた時、像に後光が差した。そしてあの神様の声が響き渡る。


「遂に、来ましたね。あなたに祝福を授けます」

「ありがとうございます」


 それを言うと同時に響夜きょうやは躓き、こうべを垂れる。それは全く違和感を感じない自然な動作であった。響夜きょうやも魔法適正の高いただの人間如きである。

 神という圧倒的な力の持ち主の御前では躓かされてしまうのだ。


「祝福を譲渡」


 そうおっしゃられると体をすり抜けて外に、あの光の粒子の奔流が外に出る。魔力が中から外に響夜は出せるようになったのである。


そして、その魔力が集まっていく。

神から僅かに滲み出た魔力が響夜きょうやの魔力に混ざった。

すると一層輝きだし、彼の元へとゆっくり戻っていく。

 心臓に入った刹那ー

彼の体は一瞬眩く輝き、髪が驚くほど白く輝きだした。少女が驚くほど彼の存在強くなっていく。既に一種の神性を感じられるような位階まで引きあがる。

 もう少年にはとても見えない。まるでその立ち姿は王者のようだった。

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