断章その1

――おい、バマルよ。ここまでの進捗を報告せい!

「ははっ!東部オストベヌア亜大陸の南部にかけての地域を徐々に制圧しつつあります。その他中央部の地域にも、わが部隊が進出を始めており、来年の春には南部から中部にかけての大半を魔王様の軍門に下らせることができます!」

――でかした!そなたには当面の間、東方に専念してもらう。世界征服の暁には、そなたにはオストベヌア総督の地位と魔大公の爵位を与えようぞ。

「はい!このバマル、魔王様に永遠の忠誠を誓います!」


――次っ!ヴェスラー!

「はい。私が担当しておりますヴェラレノですが……その……」

――言い澱んでおるということは、思う様にいっておらぬな。この無能者めが!せっかく奪ったリティ公国も抵抗にあい、収拾がついておらぬではないか。もう半年かかっておる。わしはこれ以上待てぬぞ!

「ははっ!面目次第もございません」

――来春までにヴェラレノの西部にあるダマロン王国、ホスタリア国、オルデンセン共和国を制圧できぬようなら、そなた、分かっておろうな?」

「ひっ!わ、わかりました!」


――全く……あいつも焼きが回ったか。次!ボルサラー!

「はい。スラタリカは至って順調です。中央部の暗黒地帯などは、ほとんど抵抗らしい抵抗もなく……」

――馬鹿者!そのようなところ捨ておけ!鉱物資源が豊富なセシリスタンへ直行せんか!そなた小手先の戦術タクチーキはうまいが、戦略ストラトギーがなっておらん!もっと勉強せい!何のためにそなたを南方に回したか考えんか!

「ははっ!」


――次!ダブドーラ!北部地域の進行はどうじゃ?

「ははっ!北部のウタレシア大陸はパルタマなど精強な国々が多く、なかなか進出は思うに任せませぬ」

――確かに。初手で大国パルタマを怒らせたは我が失策じゃ。あの国はもっと後になってから相手にするべきであったな。

「そこで、ウタレシアの比較的手薄な地域から始めることにいたしました」

――あぁ、あの何とかいう国か。

「フェルザンは小国ではございますが、あの国から山伝いにして隣接するスホール王国、トゥヴィッツラント民主共和国などへ進めば、パルタマの喉元にナイフを突きつけたも同然にございます」

――相分かった。それでは皆の者!急ぎ持ち場へ戻り、各々奮励努力せよ!

「ははっ!」



――バグディ。ここまでの我らの戦い、いかに見る?

「そうですな。人間暦換算でここまで15年。それなりの成果とはお見受けいたします」

――そなたまるで他人事ではないか。

「いえ、決してそのようなことは……。いずれにせよ早くウタレシア以外の大陸を制圧して外堀を埋めねば、大国パルタマが本気で反転攻勢をかけてまいります」

――そなた、ヴェスラーをどう見る?

「もうヴェラレノ大陸は別の者にお任せになるべきです。あの者にはもはや死相が見えております故、もはや役には立ちますまい」

――ハハハ……。相変わらずそなたは手厳しいな。

「いえ、魔王さまほどでは……」

――いや何、わしらなどまだまだ手ぬるい。我ら魔族をこれまで幾年にも虐げ、嘲ってきた人間どもに比べれば、わしやそなたなど大したものではないわ。わしの代で、人間と魔族の地位は、逆転するのだ!

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