第09話:怪物は美少女の裸身に敗れ去る
「ギャハハハハ! 見たかよ、今の吹っ飛ばされっぷり! たった一発でもう虫の息じゃねえか! やっぱ虫けらは所詮虫けらだな! 雑魚は運にも恵まれやしねえのさ! ま、哀れすぎて同情してやらないこともねえよ? 雑魚野郎には生き難い現実の厳しさにはよお。アッハハハハハハハハ!」
「バルゴス……! あんたってヤツは!」
見るに堪えない嘲りの笑みに、リオは激昂した。
この男は自分が仕出かしたこと……招き寄せてしまったモノをわかっているのか?
《ディノガー》――ドラゴンとしては下位に位置するが、《ネビュラの森》で食物連鎖の最も高い頂に立つ絶対的捕食者だ。
通常ドラゴンはその圧倒的すぎる戦闘力と、大気中のマナを直に吸収できる特殊な生態から、無用な争いを避けて他のモンスターが寄り付かない山中に棲むことが多い。しかしディノガーはマナ吸収能力が然程発達していないこともあり、麓に近い洞窟などを棲み処としている。
下位といえどもドラゴン。大人の戦士がたとえ束になろうとも到底敵わぬ相手だ。
過去に若い個体をドラグ族が討伐した例もあるが、そのときも代償に大勢の犠牲を出したという。
故にディノガーの縄張りは『危険領域』とされ、決して踏み入ってはならないとダークの民の間できつく戒められてきた。下手に怒りを買えば、己のみならず他の部族にまで被害が及びかねないからだ。
なぜ、縄張りからは遠いこの場所にディノガーが現れたのか?
偶然でも不運でもなく、仕組まれた企みであることは明らか。
バルゴスと彼に従う下っ端たちが、ディノガーの巣より卵を盗み出し、フレイの下まであの母竜を引き連れてきたのだ。さらにはディノガーの怒りがフレイに向くよう、彼の前に下っ端たちが卵を放り投げて割った。
全ては試練の最中の事故に見せかけ、フレイを亡き者とするために!
「なんだあ、その目は? 俺がなにか仕組んだとでも? とんだ言いがかりだぜ。どこに証拠があるってんだ? そもそもどんなモンスターに出くわそうが、そこから生き延びて見せるのも試練のうちだろ? 生き残れない雑魚が悪いんだよ。ま、どうせ運任せでオニビグマ一匹がやっとなんだ。ここでくたばった方が幸せってモンじゃねえか」
これほど白々しい憐れみの顔もあるまい。
己の爪と牙に対する自負という点で、少しでもこの男に共感を覚えていた自分をリオは心の底から恥じた。
正当に試練を乗り越え、一族に加わる資格を勝ち取った若き戦士を、このような自らの手も汚さぬ手段で陥れるなど卑劣以外の何物でもない。リオがミクスから教わった戦士の誇りを汚す、暗黒を御する一族の風上にも置けない愚行だ。
湧き上がるリオの怒りに呼応して、《闇》が彼女の全身を包む。
両手足が防具と同化して獣のそれに変異し、マントのフード部分――赤毛の狼がゆっくりと頭を起き上がらせる。
隣の枝からも、威圧するように殺気と《闇》がバルゴスの全身から噴き出した。
「……オイ、妙な真似をするんじゃねえぞ? てめえの仕事は、あのクソガキの無様なくたばりっぷりを面白おかしく吹いて回ることだけだ」
「黙りなよ、卑怯者が。もうあんたの底は知れたんだ。邪魔をするなら容赦しない」
炎を思わせる赤い毛並みが逆立ち、瞳も琥珀から紅玉にその色彩を変える。
闘いたい。牙で喉を噛み千切り、爪で腹を引き裂き、こいつを血の海に沈めてやりたい。
獣との深い融合は、血生臭い闘争本能で少女の心をも真っ赤に染め上げようとしていた。
奮い立つ野性を理性とでギリギリの均衡を保たせながら、リオは冷静にバルゴスを出し抜きフレイを助け出す算段を、あまり出来が良いとは言えない頭からどうにか絞り出そうとする。
一方でバルゴスは己の野性を少しも抑えようとはせず、今にも爆発寸前だ。どちらも猛々しく攻撃的なオーラを発しながら、二人は心の根底的な部分では対極の構えにあった。
睨み合う視線が火花を散らし、張り詰める緊張の糸はいつ切れてもおかしくない。
しかしそのとき、突如として周囲が色濃く陰った。
「「な、あ――――っ!?」」
リオもバルゴスも我が目を疑った。
翼を持たない地竜のディノガーが、高々と宙を舞っている。
横顔は歪み、身体が捻じれ、どう見ても殴り飛ばされたとしか思えない有様。
信じ難い光景に、顎が外れんばかりに口を開いていたのも束の間、リオとバルゴスは慌てて木から飛び降りた。直後、ディノガーの巨体が二人のいた木を押し潰しながら落下する。
「ガ、ガ、ガッ」
ディノガーも、自分の身に起きたことが理解できないのか。
仰向けに倒れたまま痙攣を繰り返す姿には、そのショックと動揺の大きさが見て取れた。
一体、なにがどうなっているのか。
周囲を見回したリオは、「ソレ」を目にする。
「【グルルルル……ッ】」
そこにいたのは、不穏な唸り声を上げるフレイ。
ディノガーの一振りで瀕死の重傷だったはずだが、今はしっかりと二本の足で立っている。
しかしその姿は、人ならざる異形に変貌を遂げていた。
――実のところ、それ自体はそう驚くほどのことでもない。
獣の装備に頼らぬ変異は、先天的に獣の力を宿す《ビーストソウル》の持ち主なら珍しくない芸当なのだ。《ビーストソウル》を持たずとも、長く獣の力を使い続けることで、装備なしでの変異は戦士の誰もが可能である。
問題は、フレイが変異した姿にあった。
(体内から炎を吐く生き物なら、知ってる)
俗に火炎袋と呼ばれる器官で生成した可燃性の体液を、肺の空気と混ぜ合わせて着火し吐き出す。高位のファイアドラゴンを筆頭に、様々なバリエーションこそあれ、同じような能力を持ったモンスターは数多い。
(全身に炎を纏う生き物なら、知ってる)
肌から脂肪を元にした油を分泌し、耐火性の体毛を擦り合わせて自身に火を点ける。
これは下位のモンスターによく見られ、前者よりもさらに例の多い能力だ。
(でも……身体が炎でできている生き物なんて、見たことも聞いたこともない――!)
フレイの半身、特に右腕と左足には完全に変異の及んだ異形。
それは、「黒い鎧を被った炎」としか形容しようのないナニカだった。
焼け焦げたように濁った黒色の甲殻。その下には皮膚も筋肉も骨格もなく、かろうじて腕と思しき輪郭を保って炎が揺らめくだけ。
その炎も明らかに尋常のモノではない。
深く、生々しく、今にも血生臭い香りが漂ってきそうな赤一色。
血の色をした炎……血色の炎だ。
「【グルル。グッ。グググ。グハッ。グハハハハハハハハ!】」
笑った。
打ちのめされたディノガーの様を見て、フレイであったはずの怪物は嗤った。
右腕や左足と同様に黒い甲殻で覆われ、空っぽの眼窩から赫炎が迸る異形の面。
なのにそれが浮かべた笑みは、怖気が走るほど人間味に溢れていた。
なんとも人間らしい、残酷で醜悪な笑み。
「【どうした? 我らを食うのではなかったのか? このトカゲが】」
「ガ、ガアア……ッ」
怯えている。
森の絶対的捕食者であるはずのディノガーが、敵から遠ざかろうと前足で身体を引きずった。
一口で丸呑みにできるサイズの相手を前に、自尊心の砕け散った弱々しい鳴き声を漏らす。
懇願すら窺える竜の眼差しに、怪物は躊躇うどころか一層口の両端が吊り上がった。
「【ハハハハ! 一発殴られたくらいでなにを怖気づいている!?】」
怪物が深く身を屈めると、完全変異した左足が火を噴いた。
炎の噴射による反動を利用し、怪物の身体は凄まじい勢いで空へ昇る。それは「跳躍」というより「飛翔」に限りなく近いモノだった。
空中で再度左足がブレスじみた炎を吐き、急降下した怪物は身体を起こしかけていたディノガーの腹に着地。並の金属に勝る鱗で守られたそこへ、左足に生えた三本の鉤爪を突き立てた。
ジュアアアアアアアア!
熱した鉄を水に浸したときのような音が響き、焦げ臭い煙が漂う。
鱗が溶け、肉が焼けるのを通り越して炭化する激痛に、ディノガーは苦悶の叫びを上げた。
「ガガ、グオオオオ!?」
「【どうしたどうした? 森の頂点が情けない声を出しおって! 所詮はお山の大将か! ん? この場合は森の大将か? どちらでも良いがな! さあ、せいぜい哭いて足掻いて抗って、我らを楽しませよ!】」
ディノガーの首に乗り、怪物は身の丈を超えるその顔を右に左に殴打し始めた。
変異が及んでいない左腕も、なにか規格外の力を発揮しているらしい。一発ごとに城壁と攻城兵器が衝突するかのような金属音が轟く。その度にディノガーは左右に顔を揺さぶられ、唾液と血と牙の破片を吐き散らし、甲殻にはどんどん亀裂が広がった。
続いて怪物は首から降りると、今度はボールのようにディノガーを蹴り飛ばす。竜の巨躯が、まるで子犬のように地面を跳ねて転がった。
木々を何本も薙ぎ倒し、岩にぶつかって停止すれば、さらに怪物が尻尾を掴む。
「【ハハハハ! ハハハハハハハハ!】」
右腕一本でまた軽々と宙に上がり、手当たり次第に地面や木に叩きつけられる。
土に塗れたディノガーに最早、捕食者の威容など見る影もない。ただ振り回されるだけの、雑に扱われてズタボロになる子供の玩具だった。
現実離れを通り越して悪夢めいた光景に、リオの全身は瞬き一つも動かない。
(ヤバイ。こいつ、なにからなにまでヤバイ……!)
仮にもドラゴンを棒切れのように振り回す、そのデタラメな力だけの話ではない。
これほどの力なら、一撃でディノガーを屠ることも容易いはず。
そうしない理由は明白――愉しんでいるのだ。
いたぶり、嬲って、少しでも長く苦しませるために手を抜いている。
(なんなのさ、この邪悪なソウルは!?)
《ダークの民》はその性質上、悪意や負の感情に酷く敏感だ。
特にリオは狼の鼻で、根幹に至るまでの細部を嗅ぎ分ける自信がある。
そんな自慢の嗅覚が目の前の怪物から感じ取ったのは、怒り。
尊大で傲慢な口ぶりや、愉悦に浸った嘲笑は表層に過ぎない。
根本にあるのは、そうやって徹底的なまでに相手の全てを破壊しなければ治まらないという、世を焼き尽くさんばかりの圧倒的憤怒だった。
「んな、馬鹿な。嘘だろオイ……」
この自信過剰な男にも、ドラゴンを玩具にする怪物の異常性は理解できたらしい。
バルゴスは普段の威勢を取り繕うこともできず、怯懦の表情を露わにしていた。変異でより本物に近づいた半人半熊の巨体も、腰を抜かして震え上がる様では酷くちっぽけに見える。
「ひっ!?」
無意識かジリジリ後退りを始めていたバルゴスが悲鳴を漏らす。
ディノガーを振り回して遊ぶ怪物が突然、グルンと急に首をこちらへ向けたからだ。
「【貴様だろう? 我らにこのトカゲを差し向けたのは?】」
ニィィィィ、と怪物の口が裂けんばかりに笑みを深める。
言い訳や抵抗、ましてや逃げ出す間も与えられなかった。
振り下ろされたディノガーの巨体が、バルゴスをプチリと潰した。
否、正確にはまだ潰れていない。変異してオニビグマの頑強さを得たおかげか、ひとまず肉塊にならず原形を留めている。しかし白目を剥いて地面に埋まっており、一撃で失神したようだ。棍棒代わりにドラゴンを叩きつけられたのだから当然だが。
しかし事の元凶に対し、怪物の怒りがその程度で治まるはずもない。
「【グハハハハ! 愚考! 愚行! こんなトカゲごときで我らを殺せるとでも!? その度し難い愚かしさの無礼、貴様の呻きと悲鳴で贖うがいい!】」
振り上げ、叩きつける。振り回し、叩きつける。振りかぶって、叩きつける。
例えるなら、幼子を革袋で鞭打つかのごとき行い。
しかし現実はそんな言葉では足りなかった。怪物がディノガーを振り回す度に地面が揺れ、バルゴスの身体が沈み埋もれていく。
とても狩りとは呼べず、まして戦いでさえない。
子供じみた幼稚で、それ故に残忍な暴虐の発露だった。
「【グハハ! ググッ。グ、ガアアアアアアアア!】」
急に、嘲笑が怒号に変わった。
癇癪を起こしたかのような身悶えから、怪物はディノガーを横殴りに振るう。
地面が深々と抉られ、大量の土砂と共にかっ飛ばされたバルゴスは、あっという間に豆粒より小さくなって見えなくなる。
続いてディノガーもまるで変わらない速度で投げ飛ばされ、それを追うように怪物も跳ぶ。
震動と爆発は遠のいていくが、その向かう方角にリオの表情が青ざめた。
「ちょっ、ヤバイ!?」
両足に《闇》を集中し、大地を蹴る。
変異によって狼の半獣半人――赤毛の人狼と化した身体。
リオは両手も使った四足で森を駆け抜ける。踏みしめる爪が風を裂き、横切る木々がビュンビュンと視界から後方へ流されていった。
破壊の跡を辿って疾走するが、なかなか追いつけない。
怪物はディノガーを叩きのめしながら、村の方角に進んでいる。あのまま遠慮なしに暴れ回ろうものなら、被害はどれほどになることか。村どころか、森が丸ごと壊滅すると言ってもまるで洒落に聞こえない。
どんどん村へ近づき、本格的に嫌な汗が流れたとき、リオは見覚えのある場所に出た。
そこは、村の女たちが水浴びに使う泉。畑まで水を引くにはやや遠く、既により近い川からの用水路が存在することもあって、男子禁制の水浴び場となっている場所だ。
ディノガーが泉を囲う木々の一角を下敷きに倒れており、幸い泉は荒らされていなかった。
怪物の姿は見当たらない。ディノガーに一応息はまだあるようで、まさかトドメも刺さず村へ向かったのか。あの激怒を思えば考え難いが、そもそも怒りの矛先はバルゴスに向いているのだ。バルゴスが村へ逃げようとしたとすれば、万が一もある。
しかし、怪物の行方を確かめている場合ではなくなっていた。
不運なことに、この場に居合わせてしまった者が一人。
それも、よりにもよってという人物だった。
「ミクス!?」
そう、ミクスが水浴びをしていたのだ。
瀕死で口から泡を吹くディノガーの有様は、彼女にとっても非常識に過ぎたのだろう。目を真ん丸に見開いて固まっている。当然と言えば当然だが一糸纏わぬ姿で、服や武器は水辺の離れた位置にあった。
そして、急激に膨れ上がるディノガーの気配。
「グギャアアアアアアアア!」
肺から空気を吐き尽くさんばかりの叫びは恐怖か、あるいは意地か。
牙は折れ、爪は剥がれ落ち、身体のいたるところが真っ黒に焼け焦げている。
両眼まで焼き潰された惨い仕打ちに、ディノガーは死に物狂いで暴れ回った。
手探りで敵を求める突撃は見当違いの――ミクスの方へと向かって進む。
「ミクス!」
間に合わない。
本能が告げる残酷な予測を振り切るように、リオは全膂力を振り絞って駆けた。
しかし、届かない。五秒とかからぬはずの距離があまりにも遠い。
ディノガーが泉に踏み入り、右腕を振りかざす。爪が失われても、人間一人を潰れた肉塊に変えて余りある力は健在だ。
冷たい絶望が心臓を凍てつかせようとしたそのとき、リオは見た。
竜の巨腕とミクスの間に寸前、黒い影が出現したのを。
泉を底まで露わにする一撃が振るわれ、しかしそれがミクスに届くことはなかった。
黒殻の内に赫炎を燃やす、怪物の右腕が受け止めたから。
残像すら目に映らない、突然そこに現れたとしか思えないような登場だった。
確かにミクスを守ったその佇まいは、どういうわけか邪悪な気配が鎮まっている。
「フレ、イ?」
「…………嬲るような真似して、悪かったな」
そして炎が迸っていた眼窩には今、静かな意志を湛えた瞳が収まっていた。
「ガアアアア!」
「今、楽にしてやる」
一瞬の決着だった。
心臓があったであろうディノガーの胸部に、綺麗な球状の風穴が穿たれる。
貫かれたというより、まるで空間ごと削り取られたかのような爪痕。
ディノガーは、おそらく自分がやられたことも気づかなかっただろう。フワリと浮いた身体が水辺に押し戻され、仰向けに倒れて今度は永遠に沈黙する。
空中の羽虫を捉えるリオの目でも、全く見えなかった。
突き出された怪物の右腕を見て、ようやく彼がなにかやったのだと理解できたくらいだ。その「なにか」の内容も不明。ただ殴ったとか炎を発したにしては、ディノガーの傷痕に説明がつかなかった。
ミクスの無事に安堵のあまり座り込みそうになったが、それも束の間。
突然、怪物が苦しげな声を上げながら膝をつく。
「ぎ、【ぎ】、ぐっ、【があ】あああ……!」
「フレイ!?」
怪物の眼球に亀裂が走り、そこから火が噴き出る。
理屈はわからないが、どうやら瞳の存在がフレイの正気を繋ぎ止めているようだ。
亀裂はどんどん広がっていき、怪物からはまた邪悪なオーラが立ち昇る。
「駄目だっ。ミクス、離れ……え」
「え? ――きゃ!?」
しかし、唐突に邪悪なオーラの膨張がピタリと止まった。
怪物の目が自分の裸身を凝視しているのに気づき、ミクスは顔を真っ赤にして蹲った。
泉に浸かってもわかる、出るところの出た肉付きの良さ。赤みを帯びた白い肌は水を弾くほど張りがあり、濡れた紫髪が頬に張り付いているのもまた色っぽい。恨めし気に睨む潤んだ瞳も、同じ女のリオでもかえってそそるものがあった。
怪物も、思い切り至近距離で目にしたミクスの色香にやられたらしく。
鼻があると思しき個所から、ツツーと鼻血が垂れる。
「あ、ば、あば、あばばー!?」
太い血管が切れたのか、景気よく鼻血を飛ばしながら右往左往する怪物。
なんというかもう、ただただ台無しだった。
「あばばばば! あばば、あばばばば!!」
「はい、どーん!」
「あばっ!?」
隙だらけの背後からリオが手刀を落とし、脳天に浴びた怪物は白目を剥いて倒れる。
すると炎が消え、元々なくなってなどいなかったかのように生身の右腕と左足が現れた。黒い甲殻もボロ炭のように崩れて風に溶けていく。
後には、鼻血を垂れ流して失神するスケベ少年がいるだけ。
全て白昼夢だったのではと思えるが、ディノガーの巨大な亡骸がそれを否定していた。
「えっと……これ、なにがどうなっているのですか?」
「こっちが訊きたいくらいだよ。ミクスってば、一体ナニを拾ってきたのさ」
「あば、あばばばば」
情けない面でプカプカ浮かぶフレイに、二人は揃って頭を抱えた。
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