就職活動と教育実習ー4
教育実習も終わり、ついにあの企業の最終面接がやってきます。人事部の方はきちんと待っていて下さったらしく、教育実習の件を告げると快く最終面接の日時を教えて下さり、最終面接へと臨みました。最終面接は本社で行われ、社内のガラス張りになっている会議室の一室を使い行われたのを覚えています。その時の質問内容などはさすがに覚えていませんが、とにかく緊張していたのを覚えています。何百社と受けた就職試験でようやく最終試験まで辿り着いた企業ですからもう後はありません。しかもこの時確か6月。他の企業ももう募集を終えようとしているところがほとんどでした。最終面接を受けてしばらくしたからでしょうか。僕は初めてお祈りメール以外のメールを受け取りました。
「内定」
ついに僕は一つの内定を勝ち取ったのです。あれだけの苦しく辛い道のりを乗り越えてようやく目にした内定の文字。一気に気が緩んでしまいました。
しかしこれが当時の就職活動の落とし穴。「内定」を貰ってしまえば気が緩んで安心してしまうのはもちろん。就職活動では「内定」を蹴るという行為は当たり前なのでしょうが、当時の就職活動性はこれだけ必死になって勝ち取ったようやく1つの内定です。万が一この他に内定を貰えそうになったとしてもこれを蹴るという行為はあってはならない行為だと自然に刷り込まれていたのです。もちろん企業側も「内定」を蹴らないという条件の元内定を出すというのを言われているわけですからその内定を蹴ってしまえばまたあの辛く苦しい日々を送らなければならないと思い、初めに貰った内定先に就職してしまうパターンがほとんどでした。僕ももうこの内定は断れないなと思っていたので、エントリー中の企業はその時いくつかあったのですがそれなりに受けて「お祈りメール」を受け取り、僕は就職活動を終えました。もちろんこの時「教師」という夢はもう捨てていました。せっかく教育実習まで行ったのにと思うかもしれませんが、当時高校の、しかも現代社会の教師など募集はほとんどかかっておらず、万が一求人を見つけても何万倍という競争率の中難しい採用試験に臨まなければなりません。もしかしたらと淡い夢を抱いていましたが、内定を貰った以上それにすがるしか僕には無かったのです。
しかし就職活動を終えてからは一気に吹っ切れました。僕は3年生まで真面目に単位を取っていた為4年生では卒業式以外ほぼ大学へ行かなくてもよかったのです。何度か足を運ぶ程度でした。なので僕はアルバイトに演劇に遊びにととにかく残りの猶予期間を余すことなく楽しもうと色々なことをやっていました。その間にも内定先の会社では「内定者懇親会」や入社前の研修などが行われました。そうこうしているうちにあっという間に時は過ぎ、いよいよ卒業間近。劇団でも僕にとっての引退公演を行っていました。
丁度この時です。劇場に入ってうちの団長が新聞の取材を受けている時でした。記者の方に電話が入り、席を立ってしばらくして戻って来ると、
「なんだか東北の方で大きな地震があったみたいですね。」
「ほんとですか。おっかないですね。大丈夫なんですか。」
「まあ大丈夫でしょう。お話の続きを聞かせて下さい。」
なんて会話を横で聞いていました。これがあの大災害のことだったというのは家に帰ってテレビを付けた瞬間に理解しました。僕達の劇団も何かの縁だと引退公演の他にチャリティーイベントを行い、この時は周りのたくさんの仲間がチャリティー活動を行っていました。
こうして2011年3月、僕は無事大学を卒業し、いよいよこの
「ゆとり第一世代」
が本格的に社会へ飛び出していくことになるのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます