第17話 エピローグ 長万部→東京

 次に乗る列車はスーパー北斗8号函館行だ。長万部の発車時刻は12時35分、あと一時間以上ある。駅にいても仕方が無いのでセイコーマートに行って北海道限定品を買って帰ることにした。

 特急が止まる程の駅だし、東京を名乗る大学もあるし、駅前を適当に歩けばセイコーマートの一つくらいあるだろう、と思って駅を出て左手に向かって歩き始める。駅前の通りは商店街になっているが、ひさしなどは無く空がよく見える。本屋を覗いたりしつつ歩いて行くも、セイコーマートどころかコンビニの一つも見当たらない。当てずっぽうでセイコーマートを探すのは諦めてスマホで調べると、駅の裏側、大学寄りの場所にあるようだ。線路を跨ぐには駅の南西、つまり駅から見て右手の方にある陸橋を渡らなくてはならない。海沿いの国道を歩いて行くことにする。長万部は内浦湾の奥にあり、北の方を見ると伊達や洞爺方面の山並みが見える。しばらく歩いてセイコーマートに着く。とりあえず買おうと思ったのはちくわパンとようかんパン、そして焼きそば弁当の三つである。ちくわパンの本場は札幌の方にあるパン屋らしいが……。それはともかくとして、それらを探す。ちくわパンと焼きそば弁当はすぐに見つかったが、ようかんパンは見当たらない。店員さんに訊くと在庫が無いそうである。長万部を出ると道内で駅から出る時間はもうないが、在庫が無いのでは買いようがない。諦めて残りの二つだけ買った。

 駅に戻って今度は駅前のかにめし本舗かなやに行く。ここは長万部の駅弁であるかにめしを製造、販売している。今日の昼食はかにめしだ。北海道にまで来てあまり海産物を食べてこなかったが、その補填的な気持ちもある。

 駅に戻ると列車の到着まであと十分という、丁度良いと捉えるか危ういと捉えるか難しい時間であった。改札が開いていたのでホームに入る。それなりに待っている客がいる。私の指定席の号車の列にも、女子中学生だか女子高校生だかのグループが並んでいた。確か五人組だったと思う。函館にも行くのだろうか。

 スーパー北斗8号に乗る。私は窓際の席で、隣は空いている。前述のグループが私の前の辺りに座り、あぶれた一人が私の隣に座った。

 列車は三日前に北上した線路を今度は南下していく。普通列車とは比べものにならない位速い。あっという間に駒ヶ岳が見えてきた。往路と違い大沼温泉経由で駒ヶ岳の裾野を越え、函館には13時54分に着いた。長万部から一時間二十分。

 スーパー白鳥28号に乗り換える。14時03分発なので乗換時間があまりない。自由席なので座れるか心配だったが、なんとか座れた。大半が埋まっていて、空いている場所を探すのに少し探さねばならなかった。

 函館を定刻で出た列車は津軽海峡沿いを一路南下する。海沿いに座ったのだが、日が当たって暑い。14時42分着の木古内から同好の士とおぼしき人々が仰山乗り込んできた。彼らはスピーカーにマイクを当てて放送を録ったりしている。スーパー白鳥も残り三日な訳で気持ちはわかるが、一般の乗客がどう思っているのかは気になるところだ。

 15時14分に青函トンネルを抜けた。本州に帰ってきたのである。蟹田を過ぎて津軽線に入ると沿線に撮影者の姿が目立つようになる。昨夜のはまなすで本州に渡り、津軽海峡線の特急を撮影すれば良かったかなと少し思う。

 16時08分、新青森着。東北新幹線に乗り換えだが、三十分の乗換時間がある。新青森には何度か来ているのでもう見るところも無い。さっさと新幹線ホームに上がる。しばらくしてはやぶさ28号が入線してきた。16時38分発車。新青森発車時点ではそこまでの乗車率ではない。盛岡までは260km/h、盛岡からは320km/hで疾走する。線路に少し勾配があると浮くような心地がして気持ちが落ち着かない。盛岡の次は仙台、仙台の次は大宮と間をすっ飛ばし、大宮には19時38分に着いた。新青森から丁度三時間である。往路では一日以上かけた区間を三時間で走破する新幹線はやっぱり速い。何故か切符を大宮までしか取らなかったので、ここで在来線に乗り換える。大宮から横浜まで上野東京ライン経由で一時間程度。新青森から大宮までの三分の一の時間がかかるとは……。帰ってきた横浜は一昨日の稚内よりも温かい気がした。

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最北の地へ 19 @Karium

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