第15話 四日目 旭川→札幌
旭川市は上川盆地に位置する中核市であり、札幌市、函館市と共に北海道の中では上位に位置する都市である。郊外の旭山動物園は有名であり、私も一度は降りてみたいと思っている街なのだが、今回は無視する。これから乗る16時10分の岩見沢行の後の普通列車は17時40分、20時48分となっていて、一時間半では満足に観光出来ないし、20時48分では札幌に着くのが23時14分と石狩当別にリュックサックを回収しに行けなくなる。
昨日の滝川から深川に移動する際にも思ったが、普通列車が極端に少ないせいで普通列車縛りの旅行者としては困難極まる区間である。それだけ輸送需要が少ないということだろう。都市間輸送は特急スーパーカムイが三十分毎に出て、更に石北本線直通のオホーツクや宗谷本線直通のサロベツ、スーパー宗谷が加わる特急網が担っている。昨日の滝川から深川でも特急を使わざるを得なかった。
岩見沢行普通列車は16時10分、定刻通りに出発した。かなり空いている。車両は札沼線でも乗った721系である。
石狩川に沿って行く。一駅目の近文を出ると、車窓は市街地から山林に姿を変えた。上川盆地の端にあたる山々だ。高頻度で普通列車を走らせても乗客が乗らなそうな景色であった。次の伊納からはトンネルの連続となる。トンネルの合間からは廃線後が見える。1969年の電化、複線化と共にトンネルへ付け替えられてた名残である。現在はサイクリングロードとして使われているらしい。
名勝カムイコタンをトンネルで通り過ぎ、石狩平野へと出る。広大な雪原であるが、今日通ってきたところと比べると流石に人家が多い。16時53分、滝川に着いた。この列車は滝川で十九分停車する。後続の特急スーパーカムイ34号の退避があるのだが、それにしても長すぎると思う。当の特急は定刻では16時57分、実際には三分遅延の17時に発車していった。根室本線との接続かとも思ったが、接続列車はこの列車と同時刻の16時53分に一番線に到着している。17時05分に滝川止の下り列車が入線したが、函館本線は複線なので関係ないだろう。よくわからぬまま時間は過ぎ、17時12分に発車した。しかし函館本線、低頻度の鈍行といい長時間停車といい、国鉄の運行体系の様である。
空知川を渡り、四分で砂川に着く。砂川からはかつて歌志内線と上砂川支線が分岐していた。当時は貨物側線があったのだろうが、今となってはその面影もない。
日没に近いようで、太陽が西の山に沈みかけている。地球の自転は案外速いもので、あっという間に山陰に隠れてしまうが、列車が移動するとともに見える山並みが変わり太陽も姿を現す。そのようなことが繰り返されたが、岩見沢に着くころにはすっかり暗くなっていた。
岩見沢からは毎時二本くらいの普通列車が運行されていて、それなりに需要があるようだ。私の乗る18時05分発の区間快速「いしかりライナー」手稲行も座席は全部埋まっていて、立たなくてはならなかった。
岩見沢は函館本線の他に室蘭本線が乗り入れ、かつては幌内線や万字線も乗り入れていた。道央の石炭の集積地となり、現在でも大規模な側線群が残っている。駅も、駅舎こそ建て替えられ、グッドデザイン賞に選ばれるようなものになっているが、ホームからの風景にはかつて蒸気機関車が行き交っていた時代の雰囲気が残されているように思えた。
函館本線の南小樽から岩見沢までは、明治時代に官営幌内鉄道が開業させた北海道最古の路線の一部である。国内でも京浜、阪神に次ぐ鉄道である。石炭輸送の為に敷設されたのも今は昔、通勤路線となった線路を電車は暗闇を切り裂きながら南下する。
十八分で江別に着く。江別発着の列車も多数あり、ここから更に通勤路線の感を呈してくる。ここから快速運転で、野幌、大麻と停まる。大麻の次の森林公園からは札幌市で、厚別を通過すると千歳線と合流する。暗くてあまりよく認識できなかったが。札幌には18時43分に着いた。二番線であった。
すでに宿に入りたい気分だが、そういうわけにもいかない。昨日札沼線に忘れたリュックサックを回収しに石狩当別まで行かねばならぬ。次の札沼線は18時45分で、あまり時間がない。しかも九番線発なので、札幌駅を横断せねばならぬ。乗れるか危ういがこれを逃すと三十分後まで石狩当別に行く列車は無い。駅構内が込んでいないことを祈ったが、幸いにも空いており乗り換えることが出来た。
昨日乗った区間を今度は帰宅時間帯に行く。札幌時点ではかなり乗っていた乗客も、石狩当別に着く頃には大半がいなくなっていた。窓口でリュックサックと再会を果たすと札幌行を待つほか無くなる。自分以外には高校生が多いように見受けられる。遅い時間までご苦労なことだ。
19時43分発の札幌行はほぼ空席で、空気輸送と言いたくなるほどであった。夜の車窓と空いている車内は侘しくなる光景である。20時22分、札幌に戻ってきた。
駅ビルのラーメン店が集まった一角で札幌ラーメンを食べた後、地下鉄ですすき野まで行った。今晩の宿はすすき野の端にあるビジネスホテルだ。あまりよく考えずに部屋を取ったら札幌駅から案外遠くて少し後悔したが、その分値段の割りに部屋は豪華であった。
部屋に荷物を置いてまた外出する。別にすすき野で遊ぶわけではない。目的は札幌市電だ。札幌市電には前回渡道した際に乗り全線完乗したのだが、その後西4丁目とすすき野の間の都心線が開業し、また未乗区間が出来た。その区間に乗ろうと思う。夜だがすすき野は明るいから問題ないだろう。
宿の最寄はすすき野停留所ではなく、資生館小学校前停留所である。昼間は頻繁に走っている市電でも、二十二時を越えた今では流石に本数が少ない。目の前で発車するのを見送ってしまったため十五分くらい待たされた。来た電車は満員とは言わないまでも結構混んでいる。乗車率70%くらいだろうか。
資生館小学校前停留所を出た電車は、そこまで明るくない道路の中央を行く。次第に明るくなってきて、すすき野停留所に着いた。すすき野で降りる人も多かったが、それ以上に乗ってくる人が多い。乗車率は変わらなかった。
すすき野からの新線はこれまでとは違い、内回りと外回りがそれぞれ車道の外側を走るようになる。サイドリザベーション方式と言うらしい。辺りには店も人も多い。流石は百万都市と言ったところか。あまり東京と変わらない気もする。すすき野の次は狸小路で、乗り場が歩道から直結している。これは西4丁目の内回り線も同じようになっていた。私のように降りた足で逆方向に乗ろうとする奇特な客以外には安全で使いやすい配置だと思う。
西4丁目停留所は外回りが元々の乗り場で、内回りと少し離れていた。普通に使う分には特に問題が無いのだろうが、私はどこに外回りの乗り場があるかわからず少し混乱した。とはいえすぐに見つけ、外回りに乗る。終電を逃す可能性も考えていたので、電車があって助かった。
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