第5話 一日目 新庄→秋田

 新庄は奥羽本線、陸羽東線、陸羽西線の結節点である。山形新幹線の終着駅でもあるから新庄以南と以北では軌間が異なり、乗り換えなくてはならない。そのため新庄のプラットホーム配置は一番線と二番線をホームの中間でぶった切って一番ホームと二番・三番ホームを平面で繋げるという、面白い形になっている。ぶった切ったところが軌間の境だ。

 新庄に来るのは二回目で、前回は陸羽東線から陸羽西線に乗り換えた。どちらも夜間にかけてだったのでまた乗りたいが、今回は乗らない。しかし、今回の奥羽本線も17時を過ぎて陽が沈みそうである。私にとって新庄は夜と関連付けられそうだ。

 17時12分発の普通列車は新庄から秋田まで150.1㎞を二時間四八分かけて走る。これが今日最後の列車だ。時間帯的にまだ高校生がちらほらと見える。

 新庄を出てすぐ、右手に車庫と転車台が見える。鉄道の結節点を支えている現役の設備だ。陸羽線の気動車がたむろしている。左手には針葉樹林が広がる。杉だろうか。

 新庄の次の泉田で進行方向を西に変える。今まで左に見えていた夕陽が正面に来てなかなかまぶしい。山に沈む夕陽を見ると今日も終わりかと思うが、あと二時間半は列車に揺られねばならぬ。

 真室川は新庄圏の端のようで、乗っていた高校生は大体ここで降りてしまった。ここからが雄勝峠である。雄勝峠も板矢峠ほどではないものの難所で、蒸気機関車時代は補機をつけていた。

 真室川から三駅、17時39分及位着。及位と書いて「のぞき」と読む。東日本ではトップクラスの難読駅名だし、全国的にも山陰本線の特牛(こっとい)と双璧を成すとされている。ここが山形県最後の駅である。

 及位と院内の間は8.6㎞あり、19分かかる。もう陽は沈み、暗闇の中で車窓がわかるんだかわからないんだか微妙な時間である。

 この県境の区間は1968年に新線へ移行し、複線化された。当時は寝台特急あけぼのや特急つばさ、急行津軽などの優等列車が行き来し、それを念頭に置いた設備だったのだろうが、山形新幹線・秋田新幹線の開業による改軌で奥羽本線は分断され、この区間を走る優等列車も無くなった今となっては過剰なものとなっているように思える。しかし、私の乗る列車と上り列車がこの区間で交換したのは上手いダイヤ設定だと思った。本数が少ないからいかようにでも設定できるからだろうが。

 17時58分院内着。かつてこの辺りに院内銀山があり、栄えたというが、暗くてよくわからない。すでに秋田県湯沢市であるが、市街地までは18分かかって18時16分湯沢着。湯沢では七分停車で、高校生以外にもある程度乗ってきた気がする。

 線路と併走する道を行き交う自動車のヘッドライトが眩しい。車社会なのだろうと思う。次の下湯沢でも三分停車で、今度は上り列車と交換する。上り新庄行もこちら同様空いている。東京では帰宅ラッシュの時間だが、ここいらでは自動車で通勤するのだろう。乗っている人も皆湯沢で降りるだろうから、県境から先はどうなってしまうのだろうか。一人でも客がいればいいが、と思う。

 18時46分横手着。ここら一帯の中心地であり、結構人が乗ってきた。とはいえ座席に座れないほどではない。横手では14分停車である。私は駅の外のNew Daysに行って乾電池式の携帯充電器を買った。持ってきたモバイルバッテリーは切れてしまっていたのである。

 19時、横手発車。横手から先は乗ったことがあるが、陸羽線同様乗ったのが夜間だった。そして二度目も夜間である。なんだかなぁ、と思う。後三年、飯詰を通り、19時18分大曲着。大曲で田沢湖線を経由してきた秋田新幹線と合流する。

 4分停車で大曲を発車。大曲から秋田まではまた狭軌と標準軌の単線並列になる。かつては複線だったのを新幹線と在来線に分離した形だ。

 次の神宮寺から峰吉川までは狭軌側が三線軌条になっていて、新幹線が交換できるようになっているが、暗い上にロングシートで線路を見難いためよくわからない。秋田から大曲は電車でGO!で何度も運転しているが、結局のところバーチャルであるし、夜に乗るのはやはりよろしくない。

 左手に車両庫が見えてくるようになると秋田はすぐ先である。羽越本線と合流し、ごちゃごちゃとした配線の中、秋田に着く。20時10分のことであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る